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「ママ、もう寝るからね。」


…とうちの母は毎日言う。

お母さんあるあるだろうか?
勝手に寝てもらって構わないのである。

なんでお母さんは寝るタイミングを報告したがるんだろう。
不思議でたまらない。

そして、お母さんは家族の所有物の位置を把握している。

「ねぇ、わたしの黒いスカート知らない?」
「ああ、それなら昨日洗濯して今干してるじゃない。」

弟が、
「ねえ、俺のスマホ知らない?」
「あぁ、それならソファーの上に。」


女性には子どもが生まれると記憶力が急上昇するオプションでも付いているんだろうか。
わたしなら知るわけないだろ、と思うようなものでも、大体分かっている。

そんなうちの母は、周りの友達から聞く「母親像」とはちょっと違う気がする。

お母さんと友達みたいな関係の子もいる。日常的にLINEをして、休みの日は一緒に買い物に行って、一緒に飲みに行き、あれやこれやと語り合うらしい。

わたしは、母と2人で外食をした記憶も、買い物をした記憶もないし、LINEは業務連絡だけ、一緒にお酒を飲んだことはもちろん、深い話をしたこともない。
よく考えてみたら、母がわたしを産む前、どんな人生を歩んできたのかもあまり知らない。

でも、わたしが何かに悩んでいる時、悩んでいること自体は毎回バレている気がする。
ただ、わたしが人に相談をするのが苦手だから、気になっているはずだけど黙っていてくれる。
それで、1人でうーんうーんと考えている間に、気付いたら解決していることが多い。

一度だけ、高校生の時、部活が本当に辛くて辞めようかと思っていた時、ポロポロと色々話したことがある。

わたしが自分のことをあまり話したくないタイプだし、真面目な話をしていてもすぐチョケちゃうので、
かるーい感じで話して、
かるーい感じで答えをくれた。

今振り返ると、母は珍しくわたしが相談をしてきて、

どんな気持ちなの?
今はつらいの?
やめたらどうするの?
他の友達はなんと言っているの?

とか、色々聞きたかったはずだが、何も聞かずに、

まぁ、辞めたいならやめたらいいジャーン

とか、その程度のことしか言ってくれなかったけど、
わたしにとってはその言葉が1番温かくて、1番欲しい言葉だった。

今日、5月14日。
母の日くらいは、と思ってプレゼントを買った。
ちょっと良いサロンのトリートメント。

「はい。」
「おっ、サンキュー。」
「それ、わたしも使うから。よろしく。」
「なんだよwwww」

こうやって書き起こしてみると男友達みたいな距離感である。


わたしはこれからも、母に雑談のLINEをすることはないだろうし、サシで飲みに行くことも、一緒に映画に行くことも恐らくないだろう。
母も、これからもわたしに誕生日プレゼントはくれないだろうし、人生について説くこともないだろうし、孫にもすぐにサンタさんの正体をバラしてしまいそう。



だけど、わたしはあなたの娘で良かった。

そんな母は、わたしが人生最大の片想いをしていたとも知らずに、「山田君と結婚してよ〜、山田くんと結婚してくれたらママ、最高だわ。」と言ってくる。
いや、知ってて言ってるのか?真実は分からないけど、恐るべし、母親…

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