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妄想のカケラ 【おばあちゃんのファンタジー】

#54 おばあちゃんのファンタジー

施設に暮らすおばあちゃんに会いに行った。

施設といってもとても豪華なホテルのような雰囲気の所で、一緒に暮らしているお年寄りたちもとてもおしゃれで品が良く、みんなそれぞれ趣味を楽しんで生活している。

おばあちゃんは、数年前までは自宅で暮らしていたけれど、だんだん日常のことを忘れてしまうようになりここでお世話になることになった。

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施設に入ってからのおばあちゃんは若いころのことをよく話してくれるようになったのだが
あまりにも突拍子もなくて、
周囲の人たちは認知能力の衰えた
おばあちゃんのファンタジーだと思っている。

そのおばあちゃんのファンタジーによると…

諜報機関の職員だったおばあちゃん
(簡単に言うと「スパイ」ということらしい)

そのころのミッションは
当時の隣国に紛れ込んで軍事計画を偵察することや
ミサイル発射を寸での所で止めて戦争が始まるのを防いだこと
国王の暗殺計画を国民に気づかれないよう阻止したりしたこともあったそうだ。

そして_
隣国の大使館員との許されない秘密の恋。

でも、ママが言っていた
「おばあちゃんはほんとはとってもスゴイ人だから
この施設に入れるのよ」

確かにパパやママの収入では、こんな豪華な所におばあちゃんを預ける事は難しいだろう…

そして、
おばあちゃんの瞳は真っ黒なのに
ママと私の瞳は少し青みかかったグレーで
戦争時代のかつての隣国の人達にどこか似ている_


今、おばあちゃんは陽だまりいっぱいのテラスで椅子に腰かけ、ふと思いだす「過ぎ去った日々」を私に語りながら平和な時を過ごしている。

そして、私はいつか
おばあちゃんの恋を小説にしたいと
こっそり考えている。

書く習慣アプリのお題「過ぎ去った日々」から #ショートショート

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