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小説のようなものたち

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昔書いていた寓話のような小説のようなもの。
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記事一覧

ギリギリスとアリ ギリギリスの苦悩

2013年8月6日に書いた小説

 改変アリとキリギリス

 夏真っ盛りのある昼下がりに花達が冬の訪れの話をしている。植えられた花達は冬のつらく厳しい事をキリギリスに聴かせた。
 殆どのキリギリスは今がよければいいとご機嫌だったが、とあるキリギリスは来年もこうして生きていたいと思うのだった。
 でも自分は冬に死ぬのだとキリギリスは悲しく思う。
 そんな時にキリギリスはアリに出会うのだった。アリは冬

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夜蜜(よるみつ)

夜蜜(よるみつ)

とろとろ、きらきら、

真夜中、星が満ちると、夜蜜が上から流れてきて、人々は眠くなる。
バクは夢の他に、この夜蜜を食べて生きていた。
人々の夜が明るくなると、夜蜜は流れてこられなくなってしまった。
明るい星空から、暗い地上を目指していたから、向かう先をなくしたのだ。
だから人々は眠れなくなったという。

流星の予報とともに、おおきなおおきな、バクが夜の街の上にきた。
街の、明かりだけが全て消えて

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世界で一番醜い薔薇の様に

2006年に書いたもの

「世界で一番醜い薔薇のように」

苦しかろうが辛かろうが、結局ここは籠の中で、つまらなかろうがだるかろうが、耳にしなくては、目にしなくてはいけないことばかりで、それが結局何の役に立つのかと言われればだれも答えるものはなく、ただただ、夢とか希望とか、霧の中の森みたいな場所に向かって歩いているのに、それが霧だなんて誰も気づかないで、方向を諭されれば怒り、後ろから支えてもらえば

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深淵と鍵

07/07/26

集まった人々は皆一様にその淵を覗いた。
それは細く長く、そして底無しだった。
彼らはみなその淵の正体についてあれこれを話し始めた。
  あれはきっと雷の跡に違いない。
一人がそう言ったが、昨晩雨の降った形跡どころか、誰もが空一面に広がる、隠されたところ一つのない、星々を知っていた。
  いいやあれは大地の異変だ。大陸の移動だ。
そう言った者もいたが、地上の揺れを観測したものは誰

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