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高倉さん家の雑談(6) 読書について

これは劇作家の高倉麻耶とその夫Y.G(わいじー)の他愛もない雑談をメモしたものです。少々勝手な決めつけや独断偏見の類は笑い飛ばしてください。


・読書とは

妻:「読書離れ」が叫ばれて久しいが、本当に日本人は「読書離れ」しているのだろうか?
夫:「読書」をどういう行為とするか。例として、ざっくり言えば「本を読む」こと。本を読みながら勉強するとか、美術書を眺める、それは「読書」と言うの?
妻:雑誌は「読書」に含めていいのかどうか。漫画は「読書」と言わないもんね。
夫:どうだろう、言うんじゃない?
妻:漫画も「読書」のうち?
夫:入れないというのも選択肢ではある。
妻:私の基準では、文章が書かれている書籍を読むことであれば、「読書」と呼んで差支えないのではないかと。
夫:そうしちゃうと、小説以外も入るの?
妻:小説以外ももちろん入る。
夫:勉強の本は抜くんだよね?
妻:抜かないよ。勉強の本も入る。
夫:目的で分けたほうがいいかも。教科書も入れてしまうとあまりにとりとめがない。物語を読む行為、小説を読むこと、ルポルタージュ、ドキュメンタリーとか。実用書ではない。
妻:実用書を読むことは「読書」ではないのかな?
夫:どこかっていう線引きはしたい。小説・ラノベ・物語・ルポルタージュ・ドキュメンタリーなどの読み物を仮に第1分類として、雑誌を第2分類とする。ちょっと悩ましいのは、専門書と実用書の区別。専門書・実用書で第3分類として括るか。第4分類はコミック。テスト対策的なもの、学習書、辞典は省こう。児童書は第1分類でいいかな。1、2、4は娯楽だと思う。ルポ・ドキュメント系から現在の社会を知るのも、娯楽にするべきか、知識の取得とすべきか。
妻:雑誌も知識の取得という面はあるかもしれない。
夫:難しいのは、新書や雑誌は実用書・専門書と同じレベルかどうか。
妻:雑誌って、ある集団にニッチに作られるから、レベル高いのは高い。
夫:雑誌はいろんな記事が混じってる。そういう意味で実用書と同等と見做すか。
妻:雑誌は知識の面でいうとコンビニエンスストアみたいなものだね。
夫:娯楽目的か知識・技術の習得目的か。例として、小説を読むのでも2時間楽しい思いをするために読むのか、小説の書き方を習得するために読むのか。何を目的に読書してるか。
妻:「何を目的とした読書について話をしたいか」だね。

・読書の目的
夫:本屋さんで、小説とか新書が平積みになってたりとか、棚の量が多い。次、雑誌も多い。私は、多くの人にとっては「読書」は娯楽だと思ってる。娯楽だとしたら、楽しければ本である必要はない。他の楽しい時間があったらそっち取るよね。本当にその娯楽は本である必要はあるのか? 娯楽で読書をする人のうち、「本を読む」っていう娯楽の人と、「娯楽の時間のツールとして本を読む」人に分かれると思う。前者は本じゃなきゃいけない。後者は本である必要はない。ただ、今たとえばオシャレだからとか、他のツールが見つかってないっていうネガティブな理由で本を選んでるだけ。
妻:今思いついたんだけど、読書というテーマで話をするなら、「人はなぜ本を読むか」というのもひとつのテーマになるんじゃないかと。
夫:娯楽の人と、習得する人の縦軸、横軸に本でという人と、とりあえず他がないから本でという人のマトリクス。
妻:これは図をさしこんだほうがいいね。

夫:CとDはいつ本から手を引くかわからない。最近でいうとユーチューブでなんでも教えてもらえるという人、なんでも作れるようになるとか、GWに鬼滅全部みた人。
妻:自分はどこにあてはまるか。
夫:私はまずB。それにAとCが両方。ラノベが好きだから、ダラーって読むときに基本、本で読むんだけどスマホでも見る。あとYouTubeで意味のない動画(海外の人がタコ焼き初体験とか)、アニメみたりするし、スマホゲーするし。
妻:私はこの中でいうとAとBしかない。
夫:本をまったく読まない人もいるし、「本ではない」という項目が要るかも。

妻:EとFが加わった。
夫:結局、24時間のうち仕事と食事と睡眠以外で何で時間を削るのかという。「読書」は削る項目なんだけど、実際には目的があって方法が「読書」。人によっちゃ知識習得目的で、読書じゃないものでやる場合もある。さて今回のテーマの「読書について話す」というのは、どこに進めてく?
妻:なぜ本を読むのか……
夫:今マトリクスでできてきてるよね。次に考えなきゃいけないのは、私たちの読書傾向に絞るか、それ以外にABの人がなぜ本を選ぶのかという話。あとは、AB以外に本を展開可能かどうか。本そのものとか、出版の未来。
妻:私たちの読書傾向でいいんじゃない?
夫:じゃあ、そうしましょう。
妻:私だと確実にBが多い。今はね。20代はじめぐらいの頃まではAが多かった。そのうち、娯楽より知識習得のほうに興味が移った。
夫:今話聞いて、もしかしたらマトリクスもう1項目増えるかもしれないと思った。知識ってあなた言ったじゃん。その「知識」って、いわゆる「仕事で使う」とかの実利的なものと、我々みたいな、道楽としての知識習得、能とか茶道とか……別な気がする。実利は、新しいほう、新しいほうってなっていく気がする。社会とか今に合わせて上書きしていく。だけど道楽って昔のことは昔で、知っててもいい。下手したらアルファがベータに変わっていく過程も知っていたい、みたいな。落語協会の分裂の前後全部とか……
妻:プチ歴史だね。
夫:蓄積なんだよね。上書きではない。ためこむ一方。またマトリクス図を変えよう。

妻:これは、この雑談を読む人にとって、マトリクス図の成長をみるという……
夫:これを踏まえてあなたは何かってなると、ABGなんだよね?
妻:いや、Gに関しては、GとIがあるなあ……でも、BとGの区別と、FとIの区別は、あるいは、AとBの区別と、EとFの区別は、難しいかも。
夫:一回ちょっと線引きをちゃんとしましょうか。まず、タテが列、ヨコが行として、でいいですよね?
妻:はい。
夫:実利列は、収入のためとか、社会的地位向上とか、利益のためにやること。たとえばエロ小説読んで悶々となるのは実利じゃない。小説を売って出版社内での成果を出すために現在のエロ小説などの傾向を分析するために読むのは実利。
妻:違うけど、目的が、はじめは会社からこの資格取ってって言われて勉強しているうちに、楽しくなっちゃって、その分野が好きになって、でその分野の他の本をどんどん読むようになっちゃうみたいなこともある。それだと実利から道楽に行くのかなと。
夫:今の話でいくと、最初は勉強だから読書じゃない。次に、利益につなげるために本を読んでいるなら実利になるし、単に知りたくなってたら道楽だわ。いわゆるマニアです。
妻:その場合、曖昧ではなくなるけど、実利も道楽もある。
夫:それはあると思うよ。それどころか3つ兼ねてる場合もある。たとえば魚の研究書を、同じ本278回読んでますっていう人は、仕事が研究者だからで読むのもあるけど、趣味兼ねてたら好きで読む、道楽で読むもあると思う。もう暗記してるんだけどでも好きだから読むみたいな(笑)。私はそんなラノベとか辞典がある。実際はグラデーションなのかもしれないのだけど、前提として横断はなしにしよう。
妻:私の傾向はABGだけど……
夫:比率は?
妻:感覚では1:8:1ぐらい。ほぼ道楽かな。
夫:DとかFはないの?
妻:Fはもしかしたらこれからあるかもしれない。知識習得にネットを使い始めたのが最近のこと。ウェビナー(ウェブセミナー)とかを受け始めたところ。
夫:Iではないの?
妻:当初の目的はIだったかもしれないけど、すぐFになるよね。あなたは?
夫:Aはある。Bもある。Eがある。Fはあんまりないなぁ。実利はゼロ。やる気なし(笑)
実際のとこの話になると、ラノベ・漫画はAでしょう。落語、陶芸、書店論はBだなと。スマホではラノベを読む、ゲームする、あとは道楽のために何かを買うときに商品を探すくらい。EにSNSがあるかな。ツイッターとかフェイスブック。
妻:レシピはどこになるのかな?
夫:やらなくてもいいことだからBじゃない? 別段、ハーブを使った料理をおぼえる必要はない(笑)
妻:Bかぁ。あきらかに和菓子の本とかは道楽やね。
夫:私らの傾向は、一般的なのか? ってこのあとは話を展開したくなってくる。


・何を読むか
妻:私の過去の話だけど、以前、大学で総務の仕事をしていたときに、学長と話していて、学長から「あなたはもっと本を読んだほうがいいよ」って言われてびっくりしたことがある。そのときまで、自分は一般的には本を読んでるほうだと思ってたから。どこに基準を置くか難しい。
夫:あなたに話をしてきた学長さんの「本読め」ってやつは、業界とか、ビジネスの本に記載されている常識を、日常の業務の中であなたができてなくて、だから言ってきたんだと思う。で、会社とかで上役が言う「本読め」は、Gのカテゴリーのもの読んで、アウトプットしろみたいな意味だよね。量じゃないんだよ。極端な話、読んでなくても、上司にとってネガティブな面で目につかなかったら、たぶん言わない。「何読んだらいいですか?」って聞き返すと、別段ビジョンは持ってないから提示できないか、新聞のその時の特集本、流行りの本かを言うと思う。根性論と一緒なんじゃない? 気にする必要ないと思うな。
妻:話変わるけど、面白い本があって、「私の読書道」っていう、作家とかにこれまでどんな本を読んできたか、どんな本が好きかインタビューする、インタビュー集みたいな本。有名でよく挙がる本もあれば、全然知らない本もあって面白い。読書のための読書みたいな本もあるよね。
夫:それらはガイドブックなんだよね。今まで読書してなかったけど、してみよっかなという人にとって、本屋に並んでいる本って選択肢はめちゃくちゃあるわけです。そのときに自分が好みの芸能人とか、歴史的に有名な人が読んでた本、さらにそれの厳選されたものってなると、レビューも書いてあるし、手に取りやすくなる。「きっと私も楽しめるはず」と。そういうための本かなと。そのジャンルは、売れるジャンルだと思う。権威主義だよね(笑)。あの成功した人が読んで気に入ってる本ってことで。なんであれ、きっかけになるから意味はあると思う。私と奥さんは人に道をつくってもらうよりも山切り開いて道つくるタイプだから、読まないんじゃない? 探すの楽しいってタイプだし。もっと言うと、探す時間は時間の無駄使いと捉えてないから、他人から口出されて「うるさい黙れ」っていうタイプだから(笑)
妻:どうやって本を選ぶかという話にシフトしていいですかね。
夫:どうぞ。
妻:私は本を選ぶプロセスが決まっていて、それで本屋に行って本を選ぶのがメチャクチャ楽しい。あなたはどうですか?
夫:それは強いて言うと「本屋の楽しみ方」の話であって、読書の話ではないね。いや待てよ、マトリクスのABGの人は、本屋で買うからなのかもしれない。その時間を加味してABGなのか。要するにトレンドの本とか探してそれを読むわけだよね。別にしなくてもいい時間な気はする。読書というものに対して、読む本を探す時間を楽しむということも含まれてるのかなと。
妻:本を選んで、買って、まあ積読になるのかもしれないのだけど、買った本を喫茶店とかで読んで、読みながらコーヒー飲んだりする時間が楽しいということのすべてが、読書の楽しみの中に含まれている気はする。
夫:「読書」っていう言葉には、実際には本の入手から読み終わるまで道楽ならば、その蓄積、実利ならば更新、アウトプットまでが含まれているんだろうね。量と質はあんまり考えなくていい気がする。人それぞれだし。
妻:私はなぜ本を読むか……まとめて言うと、本を読んでいる時間が好きだから、かなあ。
夫:ちょっと整理できてないけどそのまましゃべるね。読み終わったときに、過ごした時間や得た知識を質量でわかる。で、あとその蓄積も目でわかる。振り返るとか探すときに手に取ることでだいたいどのあたりだったか、記憶以外で探り出すこともできる。検索性がある。あとは偶然違うものが出てくる良さ。これは、道楽を主体としてるから良いと言えるのだと思う。
妻:私は夢中になって本を読んでいるときの気持ちよさみたいなものかな。
夫:それはAとかBだけじゃないの? Gもなの?
妻:Gもその傾向はある。
夫;読んでるときの気持ちよさってどういうこと?
妻:絵を描いてるときの楽しさと似てる。夢中になってるときは気持ちいい。
夫:それは読書の定義でいうと、本を選ぶから始まって、蓄積なり上書きするところをひっくるめてだよね。
妻:そうなんじゃない?
夫:ABGの人は、読書に夢中になる人だから本を選んでいるわけで、CDHとかEFIは本を読んでも楽しくないんだよね。すごく感覚的な話なんだよね。一言めにあったんだけど、「読書離れ」って結局ABGの人が他に夢中になれるツールをみつけて移動しているか、あとはABGに夢中になる可能性のある人が、夢中になるってことへの転入がないか少ないか。楽な答えの見つけ方からすると、世間に選択肢が増えたから。根拠ないけどなんとなくは、いつものパターンで、住んでる環境、収入によって選択肢が狭められるか、触れる機会がない、存在を知らないっていうパターン。いつも通りの暗い未来だ(笑)
妻:俯瞰して歴史を語りたいけどどうしよう(笑)。すっごく端折ると、グーテンベルクが活版印刷を発明して文字文化がバーッと広がったあと、読書習慣はコロナが終息するみたいに収まっていくが、文字文化はネットの世界に残り続けるという……
夫:知識が一部特権階級だったものから、一般に降りてきた。で、それが活版印刷の偉大なところだと思う。知識自体は本でなくても広がる世の中にはなった。そこから先の話で、著者によって意見が違うんだけど、本でなきゃいけない人もいる。逆に、本であることは貧富の差による知識差を生むから、ネットによりその状況を打破するという人もいるでしょう。前のほうでも言ったけど、夢中になるっていう気持ちの問題が入ってくるから、読書に夢中になる人が「本は貧富の差による知識の差を生む邪悪! 天誅を下すべし!」とは言わないでしょう。
妻:ネットで読まれているものは、紙に印刷されていないだけで、文字ではあるんだよね。音で聞く人も多いだろうし、動画、映像でという人も多いだろうけど……
夫:文字とは限らないと思うよ。いい面は、識字率に影響されなくなる。グーテンベルクの越えられなかった壁を越えてる。当時は保存する術が本しかなかっただけ。戻るけど、評価する人が夢中になってたら、評価になってない。
妻:本が好きか、好きじゃないか。読書したいか、したくないかという宗教戦争になってしまうのか……
夫:さらに言うと出自も絡むしね。環境とか。要は平行線ですよ。だんだん本を買う人は減るだろうし、読書好きも減るし、1冊あたりの単価は増えて、出版部数は減る。本を買うことが道楽になるだろうね。「図書館戦争」(*1)みたいな感じ。
妻:万年筆みたいに高級化するのか。
夫:窃盗防止しないかん。本棚に飾るなど、もっての他です。
妻:もう終ろうか(笑)


※1 図書館戦争:有川浩作の小説シリーズ。実写化もされている人気作。

(2021年10月23日)

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