機械に勝った母親

 料理に興味を持ったのが幼稚園児の頃で、包丁を持つのを危ないと止められたけど、駄々をこねた私に渡されたのは「きゅうり」でした。小学校などの夏休み期間中はきゅうりの漬物を切るのが任務になっていたました。
 その後、臨海学校などで料理をする機会があると話して、ジャガイモ、素のあるチャーハン、インスタントラーメンなどを作らせて貰っていたけれど、手の込んだ物を作った経験はありません。

さて、小学校の頃に一度だけ授業参観(だったような記憶)で家族が学校に来て料理を作る行事がありました。
確かケーキを作ろうというものでした。
ポンジから作るのでは大変なので、スポンジは買ってきたものを利用、飾りつけも缶詰や生の果物。
スポンジが既製品ならば、生クリームも出来上がったホイップクリームで良いと今更ながらに思いますが、生クリームを買ってくるようにとの、学校の指示。
道具も各自持ち寄りだったような記憶があります(学校でやるならば、ある程度用意してくれてもいいのではないか…?)普段お菓子作りをしない家だったので、百均で道具を購入。

甘い物は子供の頃から大好きだったので「ケーキを手作りできる!!」はとても魅力的でした。
とても楽しみで迎えた当日、果物を切ったりするのは、危ないからでやらせてもらえなかったですが、飾りつけをどんなものにするかワクワクしていた矢先、「班の中で誰も電動ミキサーを持ってきていない」という事実が判明。
他の班では文明の力を利用して作業を効率よく進めていました。子供だった私も自分で生クリームからホイップクリームを作るのにチャレンジしたくて頑張りましたが、中々できません。班の親御さんもチャレンジしますが、仕上がらないので、半ば諦めた雰囲気になりました。「他の班の人の電動ミキサー、順番待ちをして借りようか」という雰囲気になった時に私の母親が立ち上がります。
「貸して」その一言に何かを決意した眼差しを幼心に感じました。
 ボウルと泡だて器を構えた母親は一心不乱に掻き混ぜ始めます。其れも一定のスピードで「ぐぉぉぉぉぉ」とバトル漫画だったら効果音が付く様に、見えるような速度。
 班の親御さん達も母の行動を見守っていると、他の電動ミキサーを使って作っている所よりも早く、綺麗に泡立ったホイップクリームが出来上がりました。
母は機械に勝ったのです。
他の班の人が電動ミキサーも無しで綺麗に作り上げた物を見て驚いていました。
私は「これでケーキが食べられる」くらいで喜んで、飾りつけをしました。

大人になってから思うと、人力で作るのはとても大変なものをよく作り上げたな、となっています

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