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詩 無責任で永い物語

足裏の皮を擦り減らし
肉は削られ骨はひび割れた
赤黒いものが地面に浸みこんでいく

もはや痛みと喜びの区別を見失った頭を支えて
歩き続けることに意味はあるのだろうか

ある程度まで行くと靴が用意された
こんな頭だから何足も履いてしまう
靴の上から靴を履き重ねるたびに
安心する感じがしてやめられないのだ

地面の感触が分からなくなってくる
しまいには、足が在ることも忘れてしまった
余計に喪ってしまった

しばらくの間は、痛みはないはず
物語のつづきは考えたくない
歩けなくなってしまうだろうから


言い知れぬ淋しさ
そんなときは きみのことを想う

墨汁を垂らしたような夜
淫靡(いんび)な月がちらり

物語なんか無視して
僕にまだ残されているありったけの声を集めて
力の限り言葉を飛ばす

海に照らされた地上から空にむけて
言葉を飛ばす
なんども、なんども
きみの胸に飛びこむかわりに
言葉を飛ばす

木陰でひと休みするふりをしながら
背中の
木の幹のその向こうに感じるきみ

感覚を一束にして
背中の
木の幹のその向こうをめがけて


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