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バーを愉しむために、知っておきたいこと。


先日、嶋津さんが開催されている「オンラインCafeBarDonna」にお邪魔してきました。今回のテーマは「カクテルを学ぼう」。リアルのCafeBarDonnaの店長である伊藤さんのカクテルのお話とハイボールのおいしいつくり方の実演(お疲れさまでした!)と、そのあとの交流の時間。参加して毎度思うけれど、90分ってなんでこんなに短いんでしょう。今回も楽しませて頂きました。
お話をさせて頂いているときに、同業としてぼくもこんな質問を頂きました。

バーを愉しむ秘訣は何ですか。

ひととおりのことはお答えさせて頂いたのですが、これはとても大切な質問だったと思います。それを踏まえて、「バーってどんなところ?」ということもあわせて、バーに行ってみたいけど勇気が出ない、愉しみ方がわからない、まだ初心者です、そんな方に向けて、頂いた質問にたいする答えを改めて書こうと思いました。
バーってなんだか特殊で、何となく敷居が高いと思っている方も多いと思います。実際はそのようなことはないのですが、たしかにはじめて行くバーはすこし緊張するかもしれません。今回はその緊張を解くお手伝いを、させて頂きますね。

バーはバーテンダーや経営者の主義や思想や好きが詰まった場所であり、それを表現することが許されている場所です。接客のスタンスや価格、カクテルのレシピなど、ほんとうに様々です。ですので、ここに書くことは、お店やバーテンダーさんによってはちがう考えの方がいらっしゃるかもしれません。あくまでぼく個人の考えとして、お付き合い頂ければと思います。
また、文中に数か所ある「※」については終わりのほうで解説しています。



バーは、「空間を売っている」。

そもそもバーっていったいどんなところでしょう。お酒を飲むところ。それは間違っていませんが、それは正解のなかの半分くらいです。ぼくが思う正解は、バーは「空間を愉しむところ」であるということ。たしかにお酒は商品だし、それを売っていかなければお店としては売上にならないわけですが、あくまでお店とお客さんをつなぐのは「空間」だと思っています。だから、バーは「空間を売っている」。

「空間」の定義をしましょう。ここで言う「空間」とは、お店の立地、インテリアやその素材、流れるBGMが醸す空気感、お酒と、そして「人」がつくり上げる場所のことを指します。
また、「人」というのはバースタッフのみならず、お客さんのことも含みます。お客さんも、「空間」をつくり上げる大切な要素のひとつです。

そう言うと敷居が上がってしまうかもしれませんが、安心してください。そしてこれは、服装の話でもありません。もちろん中にはドレスコードのあるバーもありますが、よほどの格好でない限りは入店を断られることはありません(※1)。


「空間を愉しむ」とは?

「空間を愉しむ」ためには何が必要か。あくまであなたはお客さんです。だから頑張らなくていいけれど、愉しむためのコツとして、ふたつのこころがけをお伝えしたいと思います。

ひとつめは、「観察すること」
たとえば、あなたはじめてのバーに入ったとします。席についたら、まず店内の空気を観察してください。店内の設え、BGM。どれくらい混んでいるのか。先客たちの、スタッフさんの雰囲気は、声のトーンは。店の空気に従え、ということではなくて、雰囲気を見るということです。ここはリラックスできそうかどうか、あなたのこころが休まる場所かどうか。それを観察することができれば、あなたにとっての「いいバー」に出会える可能性がグッと高まると思います。

ふたつめは、「委ねてみること」
カウンターに座って、おしぼりとメニューを出されました(※2)。メニューを見ても、何な何やらサッパリわからない。不安になるかもしれません。わからないからとりあえずビール、ジントニック。悪くはありません。でも、もしできるならバーテンダーさんに訊いてみるといい。「1杯目なので、すっきりしたものを飲みたいんですけど...」「スコッチのおすすめありますか?」など。これはバーテンダー(というかおそらくサービスマン)の性なのですが、求められたら何としても応えたい。カウンターの向こうの彼、彼女はきっと、あなたの好みを引き出してくれる。もしくはおすすめをちゃんと伝えてくれる。だから、わからないことはわからない、教えてほしいことは教えてほしいと伝えること。恥ずかしくも何ともないんです。だって、愉しむために勇気を出して来たわけだから。「委ねてみること」、それがあなたの「好き」にたどり着くための近道です。

もうひとつありました。
みっつめ。「腹八分目」
これにはふたつの意味があります。ひとつは、酔いすぎない程度にね、ということ。もうひとつは、バーはお付き合いの場所であるということ。毎度限界まで飲んで高い支払いをつづけるよりも(支払いを気にしないなら別ですが)、好きなバーには回数を通った方がいい。バーテンダーさんもあなたの顔をすぐに覚えてくれるはず。いいお付き合いをしたいなら、腹八分目。これも覚えておいて、損はありません。


バーでのマナー、気になる人も多いと思います。

バーに行くのが不安な理由でよく聞かれるのが、マナーについてのお話。NG事項を箇条書きでお答えします。

・大声を出さない
・むやみに周りのお客さんに話しかけない
・スタッフさんと話したくてもほかのお客さんの接客中や作業中(※3)は遠慮する
・泥酔しない
(・飲み終わったら長居しない)

バーはリラックスしに行く場所ですが、あくまでパブリックであることを忘れたくありません。愉しみたいのはみんな同じ。でも、それはあくまで常識の上でのお話です。ここに挙げたこと、べつにバー特有のマナーではありませんよね。どこでも同じ。だからこのコーナーをひと言でまとめるとすればそれは、「一般常識」です。
「飲み終わったら長居しない」は、混んでいるときにはお気遣い頂けるとありがたいなと思います。好きなバーならなおさら。すこしでもたくさんの人にその素晴らしさを味わってほしいし、売上につながる方がいい。あなたが譲ってくれた席で、またひとつの感動が生まれることになります。


お酒を飲まなきゃいけないの?

オンラインで、もうひとつこのような質問を頂いていました。バーを愉しむ秘訣のひとつとして、その答えはここに書いておきます。

結論から言うと、まったく問題ありません。基本的にはお酒を飲むところではありますが、先ほど書いたように、バーは空間を愉しむところです。上で書いたマナー(≒一般常識)を守ってくだされば、どなたでもウェルカム。お酒が飲めない、それにはいろんな理由があります。体質や体調もあれば、そのあと大切な用事が控えているかもしれない。お連れ様が飲めても自分は無理、という場合もあります。
「委ねること」が大事、と先ほど書きました。こちらも同様です。「お酒が飲めないので、ノンアルコールはありますか?」など、バーテンダーさんに訊いてみてください。ノンアルコールのカクテルをお願いしてもいいと思います。お酒と変わらず、具体的な提案をしてくれるはずですよ。


以上のことからわかることは...。

ここまで読んでくださった方、バーに興味のある方が多いと思います。ありがとうございます。ここまでぼくは、まったく変わったことも難しいことも書いていないつもりです。
だから結局大切なのは、

常識と節度をもって、空間を愉しむ。

これだけなんです。

お気に入りのバーを見つけました。バーに入って、観察してみて、いい空気だなと思いました。スマートに、でも飾らず、常識と節度をもって飲んでいます。お店の空気がとっても好きなので、もう何度か通っています。
...そう思えたなら、お分かり頂けると思います。先ほど、こう書きました。

お客さんも、「空間」をつくり上げる大切な要素のひとつです。

あなたももう、そんな「空間」に溶けている。素敵な「空間」づくりの一部を、あなたも担っているんです。

もちろんバーは様々ですから、残念ながら合わないこともあります。せっかく勇気を出したのに、と思うこともあるかもしれません。お気に入りを見つけるための道のりだと思って、あきらめずに探して頂ければと思います。あなたにとってのお気に入り、きっとどこかにあるはずです。

以上、頂いた質問「バーを愉しむ秘訣は何ですか」。ここまでその答えを書いてきました。どなたかのご参考になればと思います。


※1 NG事項として多いと思われるのは男性のサンダル履き(ビーチサンダルなど)、膝上のショートパンツ、タンクトップ。女性はあまり聞いたことはありませんが、デザインと思えないほど激しすぎるダメージジーンズや露出の多すぎる服は避けたほうがいいかもしれません。
※2 お店によってはメニューに価格が記載されていない、メニューがそもそもないことがあります。なので、不安なときは価格を訊いてください。マナー違反でも何でもありません。1杯数万円の高いお酒もありますし、お互いが不幸にならないためにも不明な点はクリアにしておきましょう。はじめに予算と伝えておくのも悪くないと思います。
※3 とくにほかのお客さんのお酒をつくっているときは、遠慮したほうがいいと思います。バーテンダーは「商品」をつくっている。衛生面からも、ご理解頂けると思います。


おわりに

バーを愉しむ秘訣は何ですか。
この質問に端的に答えるのはとても難しいんですよね。バーにもいろんなバーがある。音楽を売りにしているバー。特定のお酒に強いバー、銀座や六本木の高級バー、地元のカジュアルなバー。ほんとうに様々。
でも、ここまで書いてきたことはそんなに難しいことではありませんので、どんなバーにも言えることだと思います。最初は勇気が要りますが、通いはじめたら、バーは愉しい。
その先はもう、お客さんとお店との相性と、利用する目的。ひとりの時間を愉しみたい、バーテンダーさんと話したい。仲間内で語りたい、デートでつかいたい。好みと予算と目的に応じて、つかい分けて頂いたらいいんです。

さいごまでお付き合いありがとうございました。
緊急事態宣言のさなか、バーはどこも奮闘しています。ほとんどのお店はできる限りの対策を施して、お客さんに安心を提供する努力をしています。さあ、バーに行こう。そんな時間に閉店せざるを得ない現状です。
ぜひ足を運んでくださいと、言ってはいけないのかもしれません。それでも知ってほしいんです、バーって愉しい場所なんだっていうことを。

これを読んで、バーをすこしでも身近に感じて頂けたら嬉しく思います。4,000字超、お付き合いありがとうございました。
また、嶋津さん伊藤さんはじめ、オンラインでお目にかかった皆さま、これを書くきっかけを頂いたこと、感謝しています。ありがとうございました。
それでは金曜日、お疲れさまでした。
カンパイ!














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