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【Clubhouseも使ったマーケティング手法】この世に存在しないアプリ👁️👄👁️.fm が証明。「エクスクルーシビティ」と「ミームマーケティング(Meme)」の力を約110万円の寄付と2万人のアドレスに変えたチームの話。

今週米国のテック界隈で起きた出来事です。

👁️👄👁️.fmとは?

「It is what it is 」として知られ今週、米国のテック界隈でバズった「👁️👄👁️.fm」ですが、一体何だったのか?と聞かれると下記のようになるかと思います。

自分たちを多国籍チームと自称する👁️👄👁️.fmのプロジェクトチームが、「ローンチ前のアプリへのアクセス権を紹介制で与えるシステム」や「👁️👄👁️のMeme」を使った数日間のマーケティングで、で2万人を超える登録者を獲得し、BLM(Black Lives Matter)の活動の寄付金約110万円を集めたというムーブメントです。

この文章と見出しの画像だけでは何が起きているのかが全く分からないと思うので、何が起きたのかを追って説明します。その前に、絵文字の意味を紹介します。

👁️👄👁️はどういう意味?

2020年2月に登録されたUrban Dictionaryによると下記のようになっていました。

A collection of emojis commonly used to express surprise, shock, anger or disgust.

以下は日本語。

驚き、ショック、怒り、嫌悪を表す為に使われる絵文字

更に調べてみると、2019年に外見を侮辱された女性がユーチューブで動画をアップし、その動画を見た視聴者が👁️👄👁️が彼女に似ていると言い始め、この絵文字を使い始め、TikTokに派生して👁️👄👁️のハッシュタグをつけて動画をアップすることが流行っていたことに由来するそうです。

It is what it isが登場する以前から、👁️👄👁️はMeme(ミーム)として流行っていました。

Meme(ミーム)って何?

ウィキペディアより

インターネット・ミームとはインターネットを通じて人から人へと、拡がっていく行動・コンセプト・メディアのことである。またこれらのインターネットユーザーによる拡散行動を商業的に利用する手法の一例としてバズマーケティングへの利用などがある。

日本でMemeはあまり聞きませんが、ここではインターネット上で流行っている行動やコンセプトとして考えてください。Memeは流行っているギャグとは違い、笑ってしまうような面白い必要はなく、ただ単に流行っているものと捉えていただければと思います。

It is what it is.fm(👁️👄👁️.fm)のマーケティング

TikTokのMemeをを見て面白いと考えたチームが👁️👄👁️をドメインに使ってアプリのティーザーサイトを作成し、マーケティングを始めます。(サイト名をIt is what it is.fmとしました。)

6/25(木)に👁️👄👁️.fmのツイッターアカウントの最初のツイートが投稿されました。最初からツイートは謎に包まれてました。

その後、チームは👁️👄👁️のMemeを使いツイッター上で、謎のツイートを繰り返します。

彼らのサイトにアクセスすると👁️👄👁️ミームを全面に押し出した画面にアプリのティーザーサイトを思わせる「give me your info」という文字と、eメールアドレスを入力する為の窓があるのみでした。(現在は変わってしまってますが、下記のツイートイメージです。)

これらのツイートやランディングページを見て面白がったVCやテック関連を始めとする人々がツイートします。

開発途中のアプリをチラ見せして更にバズらせる

更にチームは、未公開のアプリがボイス機能やマップ機能を持ったSNSであること想像させるツイートを繰り返しました。

著名VCも釣られてツイート

バイラルは広がり続けアンドリーセン・ホロウィッツのGPであるAndrew Chenもツイートします。(既に消されたようですが)下記のツイートに内容が残ってます。また彼はこのMemeにのっかりアカウント名を👁️👄👁️にしていました。(キャッシュが残ってたので載せます)

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それらの著名なVCのツイートを集めてMeme感たっぷりのツイートを繰り返し、更にバズを拡散するという手法を使い、ランディングページのアドレス登録者数を増やしていきました。

寄付をしたら先行でアプリダウンロード

ここでチームはBlack Lives Matterのサポートをしている団体に寄付をし、そのレシートをツイートすると、アプリへのアクセス権の付与を早めてくれるとツイートをし始めました。

途中で大阪なおみさんのアカウントを巻き込んでツイート。

更にバイラルは拡散

チームのツイート、ランディングページを見た人々が紹介制のアプリのダウンロードを早く受ける為に、ドネーションをして、レシートをアップロードしはじめました。

また、バイラルを発見したブログのライター達が👁️👄👁️.fmのことを記事にします。フォーブスのライターも謎のアプリとして記事にしました。

金曜の7PMに何かが起きるツイート

そして、チームは金曜の夜7時に更にアプリの情報を公開をすると一斉にツイートし始めました。また、その時間までにドネーションをして、レシートを送るように呼びかけました。

チームからのステートメント

実際に時間になりサイトにアクセスすると、チームからのステートメントが公開されてました。

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ステートメントを読み進めると、実はアプリは存在せずアプリへのインビテーションは「釣り」であること、どうやってこのプロジェクトが始まったのかが書かれていました。メンバーは👁️👄👁️をグループ内でミームとして使っていたところ、思ったよりもムーブメントが大きくなったと説明してます。

また、今回のムーブメントで2万以上のメールアドレスと$110,000(約110万円)以上(マッチ分含める)の寄付を集めることが出来たと記載がありました。

最初のツイートが25日の木曜の夜、このステートメントを確認したのが、26日の金曜の夜7時なので、ツイートを開始してからたったの24時間程度のマーケティング期間で、チームはこの結果を残したということになるかと思います。

また、ステートメントの内容はシリコンバレーを始めとするテック業界が白人至上主義によってリードされてきたこと、いかに排他的なマーケティングを好むかということに対しての疑問が含まれていました。

In a strange way, this sort of became an anti-statement against what we’d all seen on tech Twitter. We’re a diverse, ragtag group of young technologists tired of the status quo tech industry, and thought that we could make the industry think a bit more about its actions. Despite calls-to-action like that “It’s Time to Build” essay we’ve all read, most of the industry (from product teams to VC) still stays obsessed with exclusive social apps that regularly ignore — or even silence — real needs faced by marginalized people all over the world, and exclude these folks from the building process. As an industry, we need to do better.

個人的なコメント

実は、私もアプリへのアクセス権欲しさにまんまと釣られ、寄付をしてそのレシートを送っていました。いち早く人気のアプリの全貌を明らかに出来ると考えたからです。

私が個人的に思う事は、「限定された人だけがアクセスできる」という排他的なマーケティング手法は昔から使われており、最近になってまた注目され始め、今回の出来事が起きたことによってその力の強さを思い知ることになったなということです。

Facebookは当初、ハーバードの学生のみがアクセスできるSNSとして短期間で瞬間的に拡散させ、他の大学の登録希望者が増えたところで、範囲を拡大してマーケティングを成功させて来ました。その後、誰もが使えるSNSとして爆発的に普及したのはご存知のとおりかと思います。

最近では、Clubhouseというアプリが紹介制でダウンロード出来る手法でマーケティングを成功させ、公式なサイトをローンチする前に既に$100mmのバリュエーションがつくという異常な事態になっていました。

このように昔から排他的な手法は使われてきて、今回のケースではプロダクトが存在しなくとも短期間で2万人のアドレスを獲得できる事を証明しています。

テック業界のBLM

更に今回このムーブメントの話題性が高いと思うのは、シリコンバレーが白人至上主義をやめて、多様性を尊重すべきであるということを結論つけているところです。元々👁️👄👁️のMemeの由来が人種差別に対する反対の意見だったことから、最初からBLMが社会問題になっていることにのっかる意図があったと思いますが、VCを始めとする米国の金融業界で活躍するアフリカ系アメリカ人は少なく、ウォール・ストリートでは特にアフリカ系アメリカ人で重役につくケースはかなりほぼないのではないかと思います。また、VCでは昔から白人の男性が活躍しやすく、多様性がないことが問題視されていました。また、私もアフリカ系アメリカ人のファウンダーからFunds for balck funders are limitedであると直接話を聞いたことがあります。

今起きているBLMの運動が原因となっているのは、みなさんがご存知の通りアメリカ全体の問題でもあり、テック業界の問題でもあります。ただ、NYではHarlem CapitalBlack Girls Ventureなどのアフリカ系アメリカ人のVCが出来るなど様子が多少変わってきていると思いますが、米国に住んでいる一アジア系マイノリティの一人としてこのような風潮はなくすべきであると考えているが基本的な個人的な意見です。

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