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人新世の資本論

新書大賞2021で、本屋さんで山積みになっていて気になったので読んでみました〜

マルクスは、資本主義の辛い現実が引き起こす苦悩を和らげる宗教を大衆のアヘンだと批判した。SDGsは、まさに現代版の大衆のアヘン。

ノーベル化学賞受賞者のバウル・クルッツェンは、地質学的に見て、地球は新たな年代に突入したと言い、それを人新世(ひとしんせい)と名付けた。人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代という意味。

ポイント・オブ・ノーリターン
気候危機は、2050年あたりからおもむろに始まるものではない。危機はすでに始まっている。以前の状態に戻れなくなる地点(ポイント・オブ・ノーリターン)は、すぐそこに迫っている。

資本の力では克服できない限界が存在する。資本は無限の価値増殖を目指すが、地球は有限である。外部を使いつくすと、今までのやり方はうまくいかなくなる。危機が始まる。これが、人新世の危機の本質。

マルクスは、資本主義は自ら矛盾を別のところへ転嫁し、不可視化する。だが、その転嫁によって、さらに矛盾が深まっていく泥沼化の惨状が必然的に起きる。

グリーン・ニューディールは、再生可能エネルギーや電気自動車を普及させるための大型財政出動や公共投資を行う。安定した高賃金の雇用を作り出し、有効需要を増やし、景気を刺激することを目指す。好景気が、さらなる投資を生み、持続可能な緑の経済活動への移行を加速させると期待する。

臨界点(ティッピング・ポイント)
地球システムには、自然本来の回復力(レジリエンス)が備わっている。だが、一定以上の負荷がかかると、その回復力は失われ、極地の氷床の融解や野生動物の大量絶滅など急激かつ不可逆的な、破壊的変化を引き起こす可能性がある。

経済成長によって環境負荷は増大する。今まで連動して増大してきたものを、新しい技術によって切り離そうとするのが、デカップリング。経済が成長しても、環境負荷が大きくならない方法を探す。

経済成長と幸福度に相関関係は存在するか。経済成長と人々の生活の向上に明確な相関関係が見られなくなる。経済成長だけが社会の繁栄をもたらすという前提は、一定の経済水準を超えると、それほどはっきりとしない。

資本主義とは、価値増殖と資本蓄積のために、さらなる市場を絶えず開拓していくシステム。環境への負荷を外部へ転嫁しながら、自然と人間からの収奪を行なってきた。

団塊世代の脱成長論へのアンチテーゼとして、リフレ派やMMT(現代貨幣理論)が世界で最先端の反緊縮思想として紹介され、就職氷河期世代の支持を集めるようになっている。

経済競争、成長競争のなかで、無理に成長を加速させようとして各国の通貨当局が過剰に流動性を供給すれば、ますます金融市場は不安定化し、バブルとその崩壊をもたらす。脱成長こそが、ほとんど唯一、この資本主義を長期的に安定的に持続させる方法である。

マルクス再解釈の鍵となる概念のひとつがコモン、あるいはと呼ばれる考え。コモンは、社会的に人々に共有され、管理されるべき富のこと。

生産力至上主義とは、資本主義のもとで生産力をどんどん高めていくことで、貧困問題も環境問題も解決でき、最終的には、人類の解釈がもたらされるという近代化賛美の考え方。

加速主義は、持続可能な成長を追い求める。資本主義の技術革新の先にあるコミュニズムにおいて、完全に持続可能な経済成長が可能になると主張する。

エコ近代主義は、原子力発電やNETなどを徹底的に使って、地球を管理運用しようという思想。

私富の増大は、貨幣で測れる国富を増やすが、真の意味での国民にとっての富である公富 = コモンズの減少をもたらす。本当の豊かさは公富の増大にかかっている。

コモンズとは、万人にとっての使用価値。万人にとって有用で、必要だからこそ、共同体はコモンズの独占的所有を禁止し、協同的な富を管理してきた。コモンズは、人々にとって無償で潤沢だった。

商品価格に占めるパッケージングの費用は、10〜40%。化粧品の場合は、商品そのものより3倍の費用をかけている場合もある。

緊縮は成長を生み出すために希少性を求める一方で、脱成長は成長を不要にするために潤沢さを求める。

ピケティは言う、現在の資本主義システムを超克できるし、21世紀の新しい参加型社会主義の輪郭を描くこともできる。新しい社会的所有、教育、知と権力の共有に依存した新しい普遍主義的で、平等主義的な未来像を描くことはできる。

資本論によれば、自然と人間の物質代謝に走った亀裂を修復する唯一の方法は、自然の循環に合わせた生産が可能になる。労働を抜本的に変革していく。

3.5%の人々が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると、社会が大きく変わる。

資本主義の考え方をもう一度考えさせられる内容でした。大量生産・大量消費から脱却する時代が来ていて、成長の方向性も考えなければならないと改めて知る1冊でした。とてもオススメです。




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