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ドキュメンタリー「ジェニファーがしたこと」のあらすじ紹介 微ネタバレあり

移民夫妻銃撃事件

2010年にカナダの閑静な住宅街で起こった事件。
妻は死亡。夫は意識不明の重体。娘だけは無傷で生還した。
タイトルと無傷からわかる通り、この事件の首謀者は娘のジェニファー・パンだ。
「誰がこの事件を起こしたか?」と言う目線で観ると面白くないけどこの事件にはいろんな要素が盛り込まれていていやわる「闇が深い」話。

ベトナム難民

被害者夫妻は1979年に難民としてカナダに移住し、そこで二人の子供を産み夫婦で勤勉に働き貧困から脱する。
彼らはアジア系の移民が多く住むエリアに落ち着き教育に熱を入れる。
これが最初の問題。

毒親

一口そう言っても色んな種類がある。
この夫婦は子供に成功してほしいあまりに過干渉になり、習い事や友人や恋愛関係にまで指示を出す。
ジェニファーはアジア系の子供が多い進学校に入学する。
進学校なので優秀であることを求められ彼女の重荷はますます増える。
デートやパーティ、お泊り会も厳しく制限されていたそうだ。
この手のタイプをヘリコプターペアレントと言い、この厳しさをタイガーペアレンティングという。
成績が上がらず失望されるのを恐れてか彼女は成績表を偽造し始める。
なぜここまで教育熱が高いのか?

マイ・エレメント

僕がこのドキュメンタリーを見ながら思い出したのはピクサーの「マイ・エレメント」だ。監督は韓国系アメリカ人で移民の二世だ。
両親は共に韓国人で働くためにアメリカに移民してきた、青果店を開業し様々な仕事をしながら子育てをしていく。監督がアニメーターになろうとするのを反対していたそうだ。
ジェニファーも自分の将来を否定されている。
マイ・エレメントの監督は両親を説得しアニメーターになり、監督にまでなるそういう自伝がマイ・エレメントには盛り込まれてる。
ようはジェニファーの家族とマイ・エレメントはよく似てる。
移民1世はかなり過酷な生活を送ってきた。
差別や長時間労働に苦しみせめて子供だけは同じ目に合ってほしくないと家業を継がせたり、高給取りの仕事に憑かせようと必死になる。
社会から見下れて生きてきた反動ともいえる。
このドキュメンタリーを見るとその根の深さを再確認できる。

嘘の涙に嘘の証言

事件当初、ジェニファーは悲劇のヒロインで涙ながらに事件を語る。
現状話が聞けるのは彼女だけだから何とでも言える。
彼女は犯人はジャマイカ系の黒人だと嘘をつく。
差別から救おうと育てた子供が差別を使って罪を逃れようとするのにぞっとしてしまう。
「黒人の犯罪率は高いからそう言っておけば信用されるだろう」という判断。
金メダリスト北島康介が感動のあまり「なんもいえねー」とつぶやいたけど僕はこの事件に「なんもいえない」
ジェニファーの残酷さはドキュメンタリー内で語られるけどそれでも彼女を強く攻めることができない。
視聴後の後味の悪さはマイ・エレメントを観て帳消しにしてほしい。


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