保護者から見た「チーム学校」に思うこと(学校事務 2017年4月号)
●はじめに
私は愛知県小牧市在住の三人の子どもの保護者です。小牧市立小牧中学校で、平成二十六年度に開校以来初の女性PTA会長を務めさせていただきました。PTA活動に長く関わったおかげで、学校に出入りする機会も多く、先生方とも直接言葉を交わせるようになり、学校の実情に触れることができました。そのような経験から、保護者として「チーム学校」に対して思うことをお伝えしたいと思います。
●「チーム学校」の二つの側面
私は、「チーム学校」には二つの意味合いがあると考えています。
一つ目は、学校の中の「チーム学校」。これは、教職員の仕事や役割分担を見直し、業務をスリム化して教職員の負担を減らすことや、学年団や学年間、さらには学校全体が協力して、「チームとして」教育活動を行っていくことを目指していくことだと考えています。これを、「学校の教職員やスタッフの『チーム学校』」と捉えています。
もう一つは、学校と地域がつくる「チーム学校」。こちらは、保護者も含めた学校のまわりの地域の人々の力を借りて、学校だけでなく「地域とともに子どもを育てる」教育活動を行っていくことを目指していくことだと考えています。こちらは、「学校と家庭や地域をつなぐ『チーム学校』」と捉えています。
これら二つの側面について、私の思いを述べていきます。
●学校の中の「チーム学校」
まずは、「学校の中の『チーム学校』」についてです。
「学校の中」というのは、いわゆる職員室におられる先生方や事務職員の方、用務員の方など、毎日学校でさまざまな業務に携わっている方々のことですね。
しかし、現在、学校にはもっと多くの専門的な役割を持つ人々も関わっています。
例えば、子どもたちの心の相談を受けてくれるスクールカウンセラーや、学校によっては、子どもの福祉的な相談に乗ってくれるスクールソーシャルワーカーがいる場合もあります。他にも、学校の図書室の整備をしてくれる学校司書もいますし、部活動や特別活動の支援をしてくれる外部講師の方々もいます。こうしたさまざまな職種の皆さんが集まって、学校が運営されているのです。ですから、「学校の中の『チーム学校』」というのは、これらの人々が協働して「チーム」となることを意味しています。
私たち保護者や、地域の人のように、外から学校を見ていると、「学校の中でチームとなって仕事をする」というのは当たり前のことのように考えていましたし、当然そうなっているのだろうと思っていました。
しかし、いろいろな学校の様子をお聞きすると、残念ながら、どうやらそうでもなさそうだということがわかってきました。もちろん、学校長が先頭に立って、チームを意識した学校経営が行われている学校もたくさんあることでしょう。でも、多くの学校では、先生同士、また先生と専門家とのつながりが意識されておらず、連携がうまく機能していないように見えます。
先生の多忙化が問題となっている今、これからの教育を考えていく上で、この「学校の中の協働」は、とても大事なことだと感じています。
私は、「学校の中の『チーム学校』」を実現するために必要なのは「学校のチーム力を上げる」ことだと考えています。
子どもが先生を選べない以上、先生の存在は絶対です。しかし、クラスにはいろいろなタイプの子どもがいますし、学力差もあります。先生から見ても、なんとなく相性の合わない子もいるでしょう。ですから、一人の担任がすべての子どもに対応することには限界があります。
そこで発揮していただきたいのが、学校の「チーム力」です。
あの先生の教科は大嫌いだったけど、こちらの先生に担当してもらったらちょっと好きになった、ということを増やしていただけるといいなと思います。また、先生と子どもの相性に合わせて、この先生には相談しづらいけど、あの先生なら話を聞いてくれそう、というような子どもの居場所を作ってあげてほしいのです。
最近では、児童生徒の家庭環境が一様ではなく複雑なこともあり、保護者が学校に望むことも多様化しています。これまでのようなやり方では対応が難しいことは、多くの先生方が感じていることでしょう。ですから、学校が「チーム力」を上げて一丸となる体制が必要だと感じています。
学校全体で子どもたちを見守ってくれていると感じられる環境は、保護者にはとても安心できるものです。学校の中でしっかりとした「チーム」を作って、学校にいる大人たちが連携できる環境になるといいなと願っています。
●学校と地域がつくる「チーム学校」
次に、学校と地域がつくる「チーム学校」です。
「地域連携」という言葉は、ずいぶん前から言われており、実際に多くの学校で地域と連携した活動が行われています。私がPTAとして地域の人々と関わって感じたことは、「地域にとっての学校の存在感」でした。
地域では、さまざまな団体がボランティア活動をしています。それぞれに、とても有意義な活動をされているのですがあまり知られていないことも多く、もったいないなと感じています。とくに子育て世代は、地域に対する関心が薄いようです。
しかし、学校で活動があれば、学校HPでその様子が紹介されたり、子どもから話を聞いたりして、保護者もその活動を知ることができます。中には、活動に興味を持って、参加してみようと思う人も出てくるかもしれません。
そう考えると、地域にとっても学校は大切な存在であり、地域の人をつなぐ場にもなります。ですから、学校はもっと地域に対してオープンになったらいいなと思います。地域のニーズに学校が応えていけば、学校のニーズにも地域が応えてくれるようになるでしょう。
私がPTA役員のときに感じたのは、「実は先生たちって、PTAのことや地域のことをほとんど知らないな」ということでした。
学校には、業者も含めて、いろいろな人が出入りしますから、どこの誰だということをいちいち気にしていないのが普通なのかもしれません。
しかし、「学校へ行く」ということは、保護者や地域の人にとっては、ちょっと勇気がいることなのです。
そんな緊張する場面でも、そこで出会った人(先生)が、たとえ直接関わりがなくても、少し関心を持って接してくださり、顔を見たら一声かけてくださるだけで、外から来た者がどれほど心強い思いになるか、ということは、ぜひ知っておいていただきたいと思います。「いつもありがとうございます」「ご苦労様です」、こんな一言二言の会話が、学校との距離をぐっと縮めてくれるのです。
お互いを知らなければ、関心は生まれません。学校が地域にも関心を持てるようになれば、学校と地域が「チーム」に一歩近づくでしょう。
●「チーム学校」における学校事務職員の役割
ここまで、保護者視点で考える「チーム学校」の二つの側面について述べてきました。私は、それぞれの「チーム学校」で、学校事務職員がキーパーソンとして関わることができると思っています。
学校の中の「チーム学校」では、前述したようにそれぞれが連携しながら機能的に活動しつつ、全体でも有機的にまとまって、学校という大きなチームになるのが理想なのだろうと思います。
小さなチームと大きなチームが混在して活動していくとき、個々の状況を把握し、全体のバランスを広角で見ることが大切です。これは、管理職の役割ではありますが、学校事務職員もその一端を担えるのではないかと思うのです。
学校事務職員にはさまざまな情報が集まります。その情報を活かしながら、管理職や同僚の教員とはまた違う立場で、職員室の皆さんとかかわりを持つことができるのではないでしょうか。
そうした立場を活かして、広く情報収集し、管理職とともに分析すれば、学校経営でも十二分に活躍していただけると思うのです。
また、「学校と地域でつくる『チーム学校』」でも、学校と地域をつなぐ役割が必要になりますが、ここでも学校事務職員が活躍できるでしょう。
学校事務職員には、児童生徒の情報もたくさん集まります。お金のことだけでなく、施設や備品などの情報も集まります。そこに地域のニーズなどの情報も加われば、双方をうまくつないでいくことができるのではないでしょうか。
私の経験では、これまで学校事務職員がクローズアップされることは、残念ながらほとんどありませんでした。それは保護者の中でも、特定の人としか接点がなかったからだろうと思います。
幸いなことに、私は自校だけでなく、他の地域の学校事務職員の方々と接する機会を得て、皆さんが学校を思う気持ちや保護者や地域を思う気持ちに触れることができました。それを活用しないなんて、本当にもったいないことです。
学校事務職員の皆さんにお伝えしたいのは、自分で職域に限界を作らず、つなぐ役割を意識して可能性を広げてほしいということです。きっとたくさんできることがあります。学校事務職員が潤滑油となり、「チーム学校」がうまく機能する学校がたくさん誕生することを願っています。
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「学校事務 2017年4月号」(学事出版)に寄稿した原稿です。
学校事務職員の方々がおもな読者層ということもあり、保護者から見た学校のことや学校事務職員さんに望むことなどを書かせていただきました。
時は「チーム学校」というキーワードがクローズアップされ、教育界ではさかんに話題にのぼっていたころのことです。その後、コミュニティスクールの設置が努力義務となり、全国各地で設置の動きが見られるようになりました。
そして現在・・・上から言われて仕方なく、とにかく「カタチだけ整える」という現状を見聞するにつれ、コミュニティスクールは、真に「学校と保護者や地域の協働する」ことの土台になってほしいという思いを深くしています。
ご覧いただきありがとうございます。よろしければ、ついでにブログにもお立ち寄りくださいませ(^o^)→https://mattaribetty.hatenablog.com/