【読書感想】 2024年76冊目 「失われたものたちの本」 ジョン・コナリー
pp.2--22 すべての見つかりしものと、すべての失われしもののこと
「想像できるものは、何もかも現実のものである」
(パブロ・ピカソ)
「物語は伝わることで命を持つことができる」
「本の中の物語は、新聞に書かれるような物語が大嫌い・・・
新鮮なうちは人目を惹きつけるものだけれど、
あっという間に意味を失ってしまう」
宮崎駿がこれを読んでいると安心するという本を手に取ってみた。
冒頭から、映画「君たちはどう生きるか」に出てくるシーンに
非常に似ていることに驚かされる。
pp.23--68
「それぞれの歴史の別の舞台に立って、
同じ空間を生きている・・・」
僕もしばしばこんな感覚にいる。
例えば、父親が生きていた時代と同じこの府中という場所で、
別の人生を歩いている。
時代は別なのだけど、
どこかにまだ父は生きていて、
時々僕に話しかけてくるような気がする。
同じ空間というのは、とても不思議だと思う。
時代が異なっていても、
そこに過去生きていた人と、対話することができる。
pp.69--119
「赤ずきんちゃん」の話?!が出てくる。
でも、ずっと怖い話になってる。
赤ずきんちゃんが、狼に恋をして、交尾して、
人間に似た恐ろしい「人狼」の種別を生み出していく話。
人間の世界からどんどん女を引き込んで、
狼との子供を産ませた上で、彼女たちは食べられてしまう。
怖い!
pp.120–142
次に木こりが語った物語も、ちょっと怖い。
最初に見つけた家は、チョコレートでできた家。
子供達が美味しそうにそれを食べていると、老婆が現れて、子供を捕まえて食べようとする。
次の家でも、美味しいフルーツに誘われて中に入ると、
そこには、大きな肉切り台に、よく研いだ包丁が・・・。
懐かしい過去にとらわれて、
自分をみうしなった結果、恐ろしい老婆に食べられるという「おとぎ話」。
pp.143—212
白雪姫も、無茶苦茶太ってて、傲慢。
小人たちが可哀想。
その後、狩りをする女が現れる。
これもグロテスク(^^;
動物と子供の合成生物を作って、
そいつを逃して狩りを楽しむ女。残酷極まりない。
欲望が膨らんで、自分自身もケンタウロスのような
体になりたいと嘆願するが、
「合体」する前に、現れた自分が作った「失敗作」たちに
八つ裂きにされてしまう。
pp.213--350
恐ろしい結末の物語が続く。
継母に女性と獣の入り混じった顔にされた女の話。
彼女はいつもヴェールをかぶっていて、
本当の姿を、見せなかった。
ついに、彼女を好きになった戦士がいて、
愛しているから、
顔を見せて欲しいと言う。
彼女がその獣の混じった顔を見せた途端、
戦士は、あとずさりをしてしまった。
彼女は「この嘘つきめ!」と彼を食べてしまった。
pp.351--382
この物語の言わんとするところが、
やっと見えてきた。
誰かがいなくなればいいと考えた少年の思いが、
現実となって、
その人を生贄にする代わりに、
空想の世界の王様になるということが、
繰り返されてきていた。
だから、この世界は、
おどろおどろしい物語で満ちていた。
『誰かを裏切ってしまった苦しみに付き纏われながら生きる、
権力なき支配者になること』
しかし、主人公は、
恐怖や憎悪、嫉妬を克服しようとしている。
pp.383--424
『人間とは 生まれつき邪なものを内に秘めて
この世に正を受けるもので、
問題はそれが子供の頃に見つかるかどうか』
『鍵は、恐怖。ほとんどの人間は
死を眼前に突きつけられると、
命を繋ぐためになんでもしてみせる・・・
人を殺し、人を裏切る』
でも、主人公は、とうとう恐怖に打ち勝った。
なんか、最後は勇気が湧いてくるような終わり方だった。
pp.415-- シンデレラ(Aバージョン)
自分の欲望にまみれてしまったシンデレラが、
自分の本当の姿を偽って、王子様と結婚したけれど、
あまりのだらしなさに、
王子様から突き返されてしまったという話。
仕方なく、ガラスの靴を売る店を開いたけれど、
それも破産してしまったという結末。
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