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異世界みたいなとこに行って帰ってきたおじさんが異世界転生の現実を教えてやろうじゃないか

生まれたら日本から1万キロ離れたケニアだった。
この気持ち、なかなかわかってもらえなかったが、最近になってこれを説明するのに大変便利なものがあらわれた。
異世界転生モノのマンガや小説である。そう、おれは異世界に転生したようなモンなのだ。残念ながらチートな能力は一切なかったけれど。

異世界転生というジャンルはわりかしおれのようなおっさん向けで、現実に疲れた人々が読むことで溜飲をさげるジャンルらしい。
そんな人々に何の恨みもないけど、おれは異世界転生みたいな経験をしたので現実をつきつけてやろうという余計なお世話が今回の記事である。

①転生して得たスキルはその世界でしか役に立たないぞ!


まずケニアでは日本語は通じない。なので必然的に多言語を使わざるを得なくなる。
おれも5歳になる頃には日本語、英語、スワヒリ語、キクユ語(部族語)の四ヵ国語を操るスキル「マルチリンガル」をゲットしていた。
だがしかし、ある日突然、おれは異世界から日本へと戻された。

5歳児にとって、英語、スワヒリ語、キクユ語を日本で使う場面が果たしてあるだろうか? 

ない!皆無である。

他の5歳児たちにとっては雑音同然である。Vの発音なんか誰も気にしてねぇぞ。はぁ~~~~~~~~~~、つっっっっっっっっっかえねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ(クソデカため息)ということで、おれは爆速で日本語以外の言語を忘却したのであった。1・2の・・・ポカン。

②生きたければ引きこもれ!


だがおれの異世界転生?はまだまだはじまったばかりだ。次に気がつくと今度はスリランカだった。
言語も違うし、文化も違うし、状況も違う。今まで使えたスキルは全部使用不能だ。
よく異世界転生ものの主人公が神によって理不尽な状況に陥って嘆く場面があるが、おれにもクソわかる。神の野郎、人の人生をもてあそびやがってぇ。

スリランカは当時は絶賛民族紛争中であり、自爆テロのパイオニア「黒い虎」と呼ばれる組織が暴れ回っていた。
漫画やアニメやゲームならもちろん平和の為に戦うわけだが、現実はただひたすら安全策の一手である。つまり引きこもるのだ。
引きこもって、本を読んだりゲームをして暮らすのだ。空手や柔道の稽古を受ける機会もあったが当時のおれからすると「え? それ自爆テロに対してなんか意味あるんですか?」状態だった。

本当に生き延びたいなら戦闘力なんかいらねぇのだ。必要なのはひきこもり力なのだ!死にたくなかったら黙って家でゴロゴロしてろ。

③お前のステータス、環境依存だぞ


さて、三回目になってくるとさすがのおれも慣れたもんだ。
今度タンザニア。余談だがタンザニアにはアフリカ大陸で一番高い山であるキリマンジェロがそびえたっている。
普通の山というのは見上げれば全体が見えるが、キリマンジェロを見るときはさらに角度をつけて見上げねばならない。でけぇ。この山だけで異世界感がめっちゃある。

異世界転生した主人公が以前に持っていた能力で大活躍するのはお決まりのパターンである。おれもタンザニアから帰ってきた時、中学生だったのだが体育祭の直前であり、そこで徒競走のリハーサルがあった。
圧勝した。身体が羽のように軽く、他のやつらは鈍重だった。これが異世界帰りの無双というやつか? だてにアフリカ系の黒人たちとバスケなどして遊んでいたわけではなかったのだ。

だが数週間後、いざ本番になって走ると、あっという間に息が切れて走れなくなっていた。身体は鉛のように重い。どうしたことだ? 赤組による魔法攻撃か??
実はタンザニアのような普段から標高の高い場所で生活していると勝手に心配機能が高められるのだ。マラソンランナーが本番前にそうした場所にいって高地トレーニングなどを行うこともあるそうだ。
おれの身体にも同じようなことが起こっていたのだが、日本に戻った数週間で元に戻ってしまっていたのだった。全然使えねぇぇぇぇぇぇ。

④現実の方が異世界になってる


こうして転生を繰り返すと、もう日本の方が異世界になっている。浦島太郎みたいな感じだろうか。
昔流行ったドラマの話とか、テレビ番組の話はマジでわからんぞ。
大学生になって一人暮らしをはじめてみると、わからないことだらけだった。
ゴミの分別とは? え、生ゴミって燃えるの?? 電気代ってどうやって支払うんだ? 敬……語……?
もはや日本の常識はおれの常識ではなくなっていたのだった。

そんなわけで、皆さんも異世界に転生する際はあまり希望を持たないように。現実は甘くねーぞ。まかり間違って異世界に行ってしまったのなら二度と帰ってこないことをお勧めする。
おれのようにはなるなよ。


わたしからは以上です。




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