第2章:デマに反応せずに自分のペースでのんびり過ごそう
今回は、世界46カ国で1200万部も売れたという大ベストセラーの著書『サピエンス全史』をもとに、われわれの生きる現代社会を考えたいと思います。
この本を読んで気づけたことは、
①のんびりな性格の自分を肯定して生きていい
②世の中は虚構(=フィクション)であふれている
という気づきでした。
それでは、本書で学んだことを題材に、現代に生きるわたしの考えを結びつけながらまとめていきたいと思います。
第1章 わたしたちの祖先は怠け者?
まず、われわれ人間の祖先は「ホモ・サピエンス」と呼ばれるホモ属の一種類でした。
われわれの祖先以外にも、屈強で脳が大きな「ホモ・ネアンデルタール」や小柄で剛毛な「ホモ・エレクトス」など、様々なホモ属がたくさん存在していました。
では、「ホモ・サピエンス」はどんな特徴だったかというと、
<ホモ・サピエンスの特徴>
①脳の大きさは普通
②腕力の強さも普通
③他のホモ属と同じく言語を使う
という特に飛び抜けた能力が見当たらない存在だったと考えられています。
そんな多種多様に存在していたホモ属は約250万年前から存在していたのですが、そこからおよそ220万年もの間、以下のような生活をしていました。
<1日の生活リズム(ホモ属共通)>
①ご飯を食べ終わるのに約5時間
②食べたものを消化するのに約5時間
③あとは寝るだけ
という非常にゆっくりとした生活リズムを持っていました。
第2章 火の発見でしゃきしゃき行動するようになった?
そんな怠け者のようなわれわれの祖先が、およそ30万年前に「火」を発見しました。これは生活や行動に大きな影響を与えました。
まずは、食事に費やす時間が劇的に減りました。
理由は、それまでは基本的に穀物や果実を「生」で食べていたため、よく噛んで食べる必要があったことと、生の食物は消化するまでにかなりの時間が必要でした。
しかし、火を使えるようになったことで、焼いたり茹でたりという加熱調理ができ、食べ物が柔らかくなり、噛むのに必要な時間も消化にかかる時間も極端に短くなった、ということです。
したがって、食べて寝るだけの生活だった祖先は、食事時間が減ったことで、その他の作業や行動に費やせる時間が増えました。
その余った時間で、様々な道具を作ったり、遠くへ出かけたりと行動範囲が非常に大きく拡大しました。
そのことで祖先は活動的になり、しゃきしゃきと行動するようになりました。
これは、ホモ・サピエンスだけではなく、ホモ属の全てに起きた現象でした。なので、火が使えるようになったこと、道具が使えるようになったことが、われわれの祖先であるホモ・サピエンスが生き残れた理由ではありません。
では、他のホモ属とホモ・サピエンスの運命を決定的に分けたものはなんだったのでしょうか。次の第3章で説明していきます。
第3章 わたしたちはフィクションで団結できている?
第1章でも書きましたが、われわれの祖先の脳は普通の大きさで、他のホモ属と比べると力の弱かったというごく普通の存在でした。
しかし、現代に生き残っているホモ属は「ホモ・サピエンス」であるわれわれ人間のみです。
では、一体なぜそんなにも普通の特徴しか持っていなかったわれわれの祖先は、他のホモ属が滅んでいく中で、唯一生き残ってこれたのでしょうか。
それは、著者のハラリ氏によると、
「ホモ・サピエンスは、フィクション(=仮定の物事)を使うことができ、また、それを信じることができた唯一の存在だったから」
だと説明しています。
ホモ・サピエンス以外のホモ属もそれぞれの言語は持っていたものの、実際に目の前にある「事実」を描写することしかできなかったのです。
フィクションの例として以下のようなものが挙げられます。
<フィクションの具体例>
・噂話・・・自分は実際には見たこともない仮定の物事
・家族・・・夫婦という仮定の絆を中心に作る小集団
・社会・・・同属の者たちが一致団結できる仮定の大集団
・宗教・・・神という仮定の存在を信じ、統一思想を持つ集団
・貨幣・・・「この紙で100円のモノと交換できる」と仮定の価値をみなすもの
本来、動物が意思統一ができる集団の限界数は約150匹(=ダンバー数)と言われていますが、われわれは祖先ホモ・サピエンスのみが、これらのフィクションをうまく使いこなすことで、ダンバー数を超える大人数でも意思統一をすることが可能となりました。
これにより、数の力によって他のホモ属の生息する地域に戦いを挑み、自分たちの生活環境を広げていきました。屈強なホモ・ネアンダールも、ホモ・サピエンスの数の力に負けてしまいました。
これにより、ホモ・サピエンス以外のホモ属はおよそ1万3000年前には全滅したとされています。
このように、7万年前から1万3000年前のおよそ6万年という短い間で、ホモ・サピエンスは他のホモ属を全滅させて、食物連鎖の頂点に立ち、唯一無二の文明を築いていきました。
ここまでのできごとを簡単にまとめたいと思います。
<できごと年表>
250万年前 ホモ属誕生
30万年前 火を発見=食事の時間が短くなる
20万年前 ホモ・サピエンスの登場(=人間の祖先)
7万年前 認知革命=フィクション登場
1.3万年前 ホモ・サピエンス以外のホモ属が全滅
最後に、わたしなりの気づきをまとめて締めくくりたいと思います。
第3章 まとめ
われわれは、友達や家族などの「絆」というフィクションで一致団結できたり、「お金」というフィクションを使うことで自分の欲しいモノやサービスと交換できたりと、フィクションはあらゆる面で、何かと便利に現代でもごく当然のように通用しています。
このように、われわれに団結心や結束力、はたまた経済の効率化という大きな力を与えてくれるフィクションですが、一方で、悪い影響を与えてしまう側面もあります。
最近でいうと、秋田県の製麺販売会社の社長が、新型コロナウイルスに感染しているというデマをSNS上で流され、結果として「感染者がいるような会社の製品は怖いから買えない」という理由から、契約していた業者が次々と解約していまったということがありました。
これは、「噂話(デマ)」というフィクションがもたらした悪い側面だと言えると思います。
現代に生きるわれわれは、「社会」という仮定の枠組みの中で、「お金」という仮定の価値基準を軸に、これまた仮定の集団である「会社」というものに急かされながら生きています。
現代のせかせかした社会は、さらに科学技術によって急速に変化する中で、特にビジネスシーンにおいては、「しゃきしゃきと行動すること」を要求されたり、スピードを求められてしまいます。
そんなせかせかした世の中に着いていけず、自分のこころを擦り減らしてしまい、最終的には自分自身を見失ってしまう人々が多くいるように感じます。
ここで、本書で気づかされた大切なこととしてわたしが挙げたいのは、
「われわれの祖先は220万年間もゆっくりと怠け者のようなのんびり生活を営んでいた」
ということです。
われわれが怠けてしまったり、せかせかすることに適応できないのは、長年培われた本能に組み込まれている当然の生理現象です。
もしも、「なんで自分はしゃきしゃきとがんばれないんだろう」とか「なぜ休憩ばかりして物事を先に進めることが苦手なんだろう」と自己嫌悪を感じる場合は、「それは祖先が長年の生活で身についたのんびり本能だからしょうがないな」と思い出してみてください。
第2章でも書いた通り、われわれがしゃきしゃき活動するようになったのは、火を使えるようになって以降のせいぜい20万年ほどしか経っていません。それ以前の220万年間は食べて寝るだけのまったりのんびり生活を過ごしていたのです。
なので、まずは、自分には怠け癖があるが、それは本能に組み込まれたものだからしょうがないことだと割り切って、自分の本質をうまく見つめながら、自分の生きている社会はたくさんの仮定の物事(=フィクション)で溢れているという視点で世の中を注意深く観察し、自分にとって一番大切なものは何かという軸をしっかり持って、噂や周囲の声に流されず、自分のできることから自分のペースで頑張りすぎずに生きていくことが、本当の自分のしあわせに繋がっていくことなのではないかと思います。
というふわっとした結論となってしまいましたが、わたしはこの本から様々な気づきをもらい、自分の嫌いだった怠け癖を肯定できるようになりました。
わたしと同じように、「怠けてしまう自分」や「先延ばしにしてしまう自分」を責めてしまっている方々にとって、この記事を通して少しでもその自己嫌悪から解放される力になればと思い、今回このテーマでまとめてみました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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