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働き方・働く場所を(社会学的に)研究するための参考文献・資料(随時更新)

働き方・働く場所(ワークスタイル・ワークプレイス)は面白い研究テーマ!

働き方・働く場所を分析したいのですが何を読めばよいのか?と質問されることが結構あります。当然?経営学や建築などの領域では蓄積されていますがメディア論や都市論など社会学的な視点から書かれた日本語・書籍・読みやすいものはそれほど多くない印象です(英語論文では結構あります)。

働き方(ワークスタイル)、働く場所(ワークプレイス)はメディア論や都市論など社会学やその関連領域にとって非常に興味深いテーマです。学部学生にとっても多くの学生は就職して働くのでそれについて卒論などで研究することは意義深いですし、(社会人)院生にとってもまだ未開拓という意味で面白い領域です。

そこでこの記事では比較的手に入りやすい・読みやすいものを随時更新で紹介していきたいと思います。

まず拙著で恐縮ですが...

ここで挙げているメディア論や場所論、都市論などの領域、オフィスやコワーキングスペース、ワーケーションなどをギュッと詰めて分析しました。参考文献もいろいろ挙げたのでそちらも参考にいただければ幸いです。

・松下慶太(2019)『モバイルメディア時代の働き方』勁草書房

もう少し分かりやすく、またコロナ禍以降の動きもいれたものとして

場所や移動に関する古典を抑える

社会学では移動やコミュニティについては古典的な領域です。また他の書籍や論文でも概念や枠組みで紹介されるので適宜、参照してください。(※翻訳は翻訳の出版年です。原典の出版年や出版社、翻訳者などはそれぞれ確認してください。)

・E. レルフ(1999)『場所の現象学―没場所性を越えて』筑摩書房...場所性についてトゥアンと比較しながら読んでも面白い。またモバイルメディアが出てきた時代にこれをどう読み直すか?も試してほしい。

・J. メイロウィッツ(2003)『場所感の喪失・上 』新曜社...メディアに寄って物理的な空間と社会的状況とが一致しなくなることを指摘。テレワークなどをそのように捉えると面白い。いつまでたっても「下」はでない。

・H. ラインゴールド(2003)『スマートモブズ』NTT出版...当時のケータイ利用のスナップ的に。テクノロジー要素が強め。都市におけるモバイルメディア利用について考えるヒントに。

・J. E. カッツ(2003)『絶え間なき交信の時代』NTT出版...ケータイがどのように利用されているのか?海外の研究者による社会学的な分析論集。現代のスタバでPCやスマホ利用と比較すると興味深い。

・Y. F. トゥアン(2009)『空間の経験』筑摩書房...場所(Place)と空間(Space)を異なるものと捉える視点や都市・建築の歴史的な視点など。場所への愛着については『トポフィリア』も併読したい。

・R. オルデンバーグ(2013)『サード・プレイス』みすず書房...居酒屋や銭湯など日本的?なものではどうなのか。磯村英一の「第三空間」と比較すると興味深い。

・J. アーリ(2015)『モビリティーズ』作品社...移動研究とさまざまな領域との関わりがまとまっている。リモートワークやテレワーク、デジタルノマドなどより広い視点で捉えるために。

・A. エリオット・J. アーリ(2017)『モバイル・ライブス』ミネルヴァ書房...こちらは『モビリティーズ』より入りやすいので先に読んだ方がよいかも。

・A. マタン・P. ニューマン(2020)『人間の街を目指して』鹿島出版会...J. ゲールの道路・広場など公共空間の捉え方を知る。公共空間をワークプレイス化する、オフィスを公共空間と捉えるなど応用できそう。

・ミシェル・ド・セルトー(2021)『日常的実践のポイエティーク』筑摩書房...新版になった。都市とそこでの行動とを問い直す古典で要チェック。

ストレートに働く場所や働き方を対象に

How to本やキャリア、啓発書はたくさん出ています。またオフィスデザインなど建築・デザイン領域、組織や労務管理など経営領域では比較的見つかりますが社会学的に分析しているものはそれほど多くはありません。オカムラのオフィス研究所の方々は積極的に書籍を出している印象です。エスノグラフィーやエスノメソドロジーなどフィールドワークの手法もさまざまな試行がなされています。

・佐藤彰男(2008)『テレワーク —「未来型労働」の現実』岩波書店...10年以上前のものですが、この時点ではどうだったのか、現在との比較をする際に有用。

・池田晃一(2011)『はたらく場所が人をつなぐ』日経BP社...オカムラのオフィス研究所のもの。理論的なところ、実際のデザインとのバランスが良いです。「co-presence」はまさに今も論点になりますね。

・花田愛・森田舞(2015)『オフィスはもっと楽しくなる』プレジデント社...こちらもオフィス研究所のものですが、より読みやすいタッチです。入り口として読むといろいろピンとくるネタが見つかるかも。

・田中研之輔(2015)『丼家の経営: 24時間営業の組織エスノグラフィー』法律文化社...エスノグラフィーとして興味深い。これを読んで他の職種だとどうか、などいろいろ展開できる。筆者は他にもエスノグラフィー出しているのでそちらも併読してみても良いかも。

・水川喜文・秋谷直矩・五十嵐素子編(2017)『ワークプレイス・スタディーズ』ハーベスト社...こちらはエスノメソドロジーの手法で仕事における会話や行為を分析しています。手法の参考にも。

・鯨井康志(2017)『「はたらく」の未来予想図』白揚社...こちらもオカムラのオフィス研究所のもの。長年オフィス研究を進めてきた筆者による読み応えのあるエッセイ的な部分もありながら、重要な論点も外さず提示してくれます。

D. グレーバー(2020)『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』岩波書店...「仕事」や「働く」をどのように捉えるのか?の現代的視点。

・松村圭一郎・コクヨ野外学習センター(2021)『働くことの人類学』黒鳥社...人類学でのさまざまなフィールドでの研究を「働く」から解説。対話形式なので読みやすい。現代の日本の職場をこの視点でフィールドワークすると面白そう。

・コクヨ(2021)『WORKSIGHT 2011-2021: Way of Work, Spaces for Work』...あとで紹介するworksightの記事をまとめたもの。超大型で持ち運ぶのはきつい。

地域や都市の関連から

地域活性化や地方創生の文脈、また都市デザインや建築の文脈で比較的多く研究されています。またコミュニティは地域社会学・都市社会学でもよく見られますね。近年ではプレイスメイキング、タクティカルアーバニズムなど都市デザイン・建築と市民運動、生活とがクロスする領域にも注目が集まっています。またワーケーションに注目が集まる中で観光学、地理学なども要チェックです。これらの地域・都市のソーシャル・デザインと「働く」を組み合わせてどのように考えられるのか?を考えるといいかも知れません。

・田中元子(2017)『マイパブリックとグランドレベル』晶文社...建物内ではなく1階・道路・公園などをどのように「拓いて」いくか。ポストコロナの働く場所を考えるヒントに。

・田所承己(2017)『場所でつながる/場所とつながる』弘文堂...「場所」やコミュニティ、活動をどのように捉えるのか・研究するのか。

・遠藤英樹(2017)『ツーリズム・モビリティーズ』ミネルヴァ書房...ワーケーションは観光とも密接に結びついています。2拠点・多拠点居住や地域で働くことをどう考えるかのヒントに。

・南後由和(2018)『ひとり空間の都市論』筑摩書房...コミュニティ、コラボレーション万歳とは逆の視点。こちらを踏まえながらポストコロナで「疎」をどのようにデザインするか。

・石山恒貴編著(2019)『地域とゆるくつながろう』静岡新聞社...こちらは都市というよりもコミュニティカフェなど地域目線。サードプレイスと併せて読むと良いかと。

・出口敦・三浦詩乃・中野卓編著(2019)『ストリートデザイン・マネジメント』学芸出版社...場所は建物だけではなく道路(ストリート)も重要な視点です。

・園田聡(2019)『プレイスメイキング: アクティビティ・ファーストの都市デザイン』学芸出版社...事例を元にそれをどのように読み解くのか、という「眼」が養われます。

・泉山ら(2021)『タクティカル・アーバニズム: 小さなアクションから都市を大きく変える』学芸出版社...タクティカルアーバニズムについてこれまで英語が多かったのですが日本語での解説。また事例も豊富に載っています。

・松村淳(2021)『建築家として生きる――職業としての建築家の社会学』関西学院大学研究叢書...建築ではなく建築家という視点も面白い。建築家×社会学をどのように研究するのかの参考になる。広告ではなく広告制作者に注目した加島卓(2018)『〈広告制作者〉の歴史社会学』せりか書房、と同じ路線。

コワーキング・スペースについて

意外と?コワーキング・スペースそのものについての日本語書籍はあまり見かけません。論文では経営学や建築、都市論などの領域で割りとあるのでそちらを検索してみてください。英語論文だとイノベーション、マネジメント、不動産研究含めてかなりの量になります。

・飯田美樹(2009)『Cafeから時代は創られる』いなほ書房...直接コワーキングスペースを扱ったものではないですが「カフェ的」なものやそこでのコミュニティ、クリエティビティなどと結び付けられます。

・中村真広・村上浩輝・ツクルバ(2017)『場のデザインを仕事にする』学芸出版社...日本における代表的なコワーキングスペースとも言えるco-baの原点や志向を伺い知れます。

webメディアもぜひチェックを

ワークプレイス・ワークスタイル関連の企業がwebメディアで関連情報を発信しています。事例やインタビューなども豊富なので参考に。

WORKSIGHT(コクヨ)
WORK MILL(オカムラ)
まち座(学芸出版社)

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