【怪談】わが家の座敷童【奇談】
先日、いつも聴いているラジオ番組で、真夏の心霊特集をやっていた(私の家にはテレビがない)。それで思い出したのが、子ども時代に経験した不思議な出来事だ。
体験した、と書いたが、直接に不思議なものを目の当たりにしたのは私自身ではない。私の母だ。私も当事者だが、間接的にそれを見聞きしたに過ぎない。
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随分前の話だ。一人で風呂に入れる歳だったから、たぶん小学校の低学年ぐらいだったろう。季節は冬の頃だったと記憶している。
夜、風呂でちゃぷちゃぷしていると、外から急に母の怒鳴り声が聞こえた。
「和成!遊んでないでお風呂入っちゃいなさい!」
ちなみに和成、はわたしの偽の本名だ。
驚いた私は風呂場から「なーにー?」と呼びかけた。
ややあって、母親が風呂場のドアを開けた。ポカンとした顔で立ち尽くしている。
なんでも、私に風呂に入るよう言いつけてから少しして、母は夕飯の食材を取りに廊下に出たそうだ。すると、そこに私がいたのだという。
実家では廊下に根菜類や乾物を保存していて、リビングの冷暖房の影響を受けないように廊下の玄関側に仕切り用のカーテンを引いていた。
そのカーテンの下の隙間から、いがぐり頭の子供が顔だけ出して覗いていたらしい。当時の私はスポーツ刈りだったので、母は私が風呂に入らずに遊んでいるものと思い、怒鳴ったのだという。
しかし当の私が風呂場から声をかけたので驚き、一瞬そちらの方向を見た瞬間に、もうその子どもはいなくなっていたそうだ。
家族の間では、「あれは座敷童だったのではないか」ということになっている。
東北に伝わる座敷童の伝承では、座敷童はその家を栄えさせるが、家を出ていくときに姿を見せるという。
姿を見せた座敷童の服が白いと吉事、赤いときは凶事の前触れと言われている。母の証言では、その子の輪郭は全体的に灰色っぽかったそうだ。可もなく不可もなく、ということだろうか。
不思議なことに、母はその子の顔を凝視したはずなのに、輪郭すら全く覚えていないらしい。その後、家族の誰もその子どもを見ることはなかったし、特におかしなことも起こっていない。
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これも風呂の話か。何を書いても風呂の記事になってしまう呪いかもしれないな。
ちなみにこの記事、ちょうど1000文字です。
ここまでお読みくださりありがとうございました!
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