第9回:事業の発展のために後続の商品開発ができるか?
みなさま、こんにちは。
食の6次産業化プロデューサーの松田高政です。
特別講座「新たな時代に新商品・サービスを生み出す能力とは(全11回)」の第9回目のテーマは、「事業の発展のために後続の商品開発ができるか?」です。
これまで、新商品・サービスを生み出す能力として、商品の企画・設計や、成長性の把握、競合との差別化など、総合的に必要な手法を理論と事例を踏まえて解説してきましたが、会社及び事業活動を発展させていくためには、ヒット商品を1つ生み出すだけでは長続きしません。
開発した1つの商品・サービスをきっかけに、事業活動をさらに発展させてゆくために、第2・第3の後続の商品・サービスを生み出す必要性・タイミングが必ず訪れます。また、開発した1つの商品・サービスの売上を維持していくためには、時代の変化に応じて改善またはブラッシュアップし続けなければなりません。
伝統を守るためには革新が必要であり、絶えず変化が求められます。
では、事業の発展のために後続の商品開発どのような方法で生み出すのか。具体的な手法と事例を見てみましょう。
問題:事業の発展のために後続の商品開発ができるか?
【問いかけ】
開発した商品・サービスをきっかけに、事業活動をさらに発展させてゆくために具体的に何を行えば良いか。
理論と手法を学ぶ
【理論・手法】
商品・サービスにはライフサイクルがあり、消費者ニーズの変化や新たに競合商品が出てくることにより、ヒット商品もいつかは売れ行きが鈍化する時が来ます。
このため、たとえ今が順調であっても常に持続発展する戦略を練っておく必要があります。
事業の継続性を意識した取り組みとしては、消費者ニーズの変化を踏まえて、既存商品の規格やパッケージ等を見直すなど商品をブラッシュアップする方法や、海外市場・ペット市場などの新たな販売チャネルを開拓する方法が考えられます。
また、新たな消費者ニーズと自社の強みをマッチングさせて、他の食材または加工方法で新商品を開発することも考えられます。
ただし、現在の市場環境・ビジネスを取り巻く状況は、コロナの影響もあり、さらに先行きが不透明となっており、社会環境の変化の予測が難しくなっています。また、消費者ニーズも刻々と変化しており、消費者の心理・行動がなかなか読めない状況です。
このため、予測不可能な時代の中で、ビジネスチャンスをいかに先に掴むかが重要で、他社よりも早くチャンスを発見するために、日々現場で起きている変化に気づき、そこで得られた事実情報から、ビジネスチャンスの仮説(新商品企画)を作る必要があります。
図:新規ビジネス・商品開発の成功の秘訣(顧客課題の解決)
例)現場での事実情報に基づいた新たな商品開発
(事実:言われたこと)
年末にバイヤーに大手以外のこだわりの羊羹がないか聞かれた。
(仮説:顧客課題)
中小メーカーでこだわりの羊羹を探している。
店舗同士の差別化、お客様が大手では不満に思っている。
こだわりの和菓子店の羊羹は高い、生産量が少ない。
レトルトにしていないので賞味期限が短い。
(行動:新商品企画)
商品:こだわりの冷凍羊羹の製造・販売
製造:手作りの羊羹を冷凍保管して在庫管理
販売:解凍後に冷蔵販売、数量は事前予約
上の例のように、事実情報の収集は、商品の企画の前のニーズ・お困りごと(顧客課題)の把握であり、情報を収集した後の次の展開としては、そのニーズ等の情報に基づき、既存商品があれば積極的に提案することで新たな販路が広がります。
仮に既存商品がなければ、新商品開発案件として、商品アイディアを企画書に落とし込んで提案し、試作品の開発・テスト販売(新商品テストマーケティング)を一定期間行います。そして、販売期間終了後は、関係者に改善点・工夫等を伺い(現場フィードバック)、その意見を反映させて商品を完成させ、新しい市場に本格的に営業活動を行うことにより、全国的に売れる商品が出来上がります。
図:現場フィードバックによる新商品テストマーケティング
このように、事業の発展のために後続の商品開発は、新たなニーズ・お困りごと(顧客課題)の発見が元となり、その課題の解決のために後続の新商品・サービスを生み出すのです。
実際の事例・経験談から学ぶ
実際の事例に関して、この回では、私(筆者)自身が、食の6次産業化プロデューサーとして、どのように後続の商品開発を手掛けてきたのか、その手法と道のりを紹介します。
新商品開発の手法としては、基本的には、まず初めに理想の販路(出口)を設定し、その販路の現状を徹底的に調べることで隠れたニーズ(不満点・顧客課題)をいち早く見つけます。不満点であればどのようにニーズを満たすことができるのか、顧客課題であれば解決するために何かできるかを真剣に考え、他の会社がまだ手掛けていない視点・アプローチで商品コンセプトを設定し、商品の試作・評価を繰り返しながら、商品を完成させます。
ここでは私がプロとして初めて商品をプロデュースした事例①~現在開発中の事例⑧の中から、①~④の4つの事例を紹介します。
事例①:輸入食品の高知県産化「きびなごフィレ」
「きびなごフィレ」は私が今の会社を設立して初めて企画した商品で、デビュー戦でした。あの頃は人脈もノウハウも乏しく、不安だらけでしたが、目標だけは決まっており、私が一番販路として憧れていた「伊勢丹新宿本店」一本でした。
地元のお塩を使っての商品開発というお題だったので、実際に売り場に行って、塩をメインとした加工品で何が売られていて、何に物足りないのか。自分の中での答えは、輸入食品であの頃国産のものがなかった「アンチョビ」を国産で作ってみてはというアイディアでした。
これは私が新婚旅行でイタリアに行ったときにふと思いついた視点で、その視点を現場で確認し、今ここにいるお客さまに喜んでもらいたいと真剣に思い、1年をかけて実現させました。最終的には売り場に採用されるまで3年かかりましたが、結果としても思いが通じた思い出の商品です。
事例②:国産原料100%無添加「のむジュレ」
次の第2弾の事例がこの講座のメイン事例として紹介してきた「のむジュレ」です。実はこの商品、私が関わる前にすでにチューブタイプで販売しており、その結果が芳しくないということで売り場や消費者の意見・評価を吸い上げて全面的に改良した商品で、新商品開発というより既存商品の規格やパッケージ等を見直すブラッシュアップ商品でした。
初めてプロデュースした「きびなごフィレ」が成功した秘訣として、後から分かった「基本調味料で差別化する」「大手ができないことをやる」ということを参考に、コラーゲン入りをやめて、原材料は高知県産果汁・国産寒天・北海道産てんさい糖しか使わない「国産原料100%無添加」をコンセプトに容器やネーミング等も全面リニューアルして商品を完成させました。
事例③:アイスでもスウィーツ「アイスブリュレ」
「のむジュレ」の成功事例を耳にした県内のお菓子屋さんから突然仕事の依頼がありました。このお菓子屋さんは「のむジュレ」の会社(柑橘農家)から原材料の果汁を仕入れており、「のむジュレ」をどうやって開発したか農家に聞いてみると私の名前が上がり連絡してきたようです。
悩みは冷凍スィーツを主に有名百貨店やコンビニのカタログに採用してもらい、注文があった量だけ納品するビジネスで、売り上げは季節的にも変動が大きく、翌年の採用の保証もないため売上予測が立たない不安がありました。
このため、自社の既存商品である冷凍スウィーツを通販用(ギフト)から小売用(個人)とするために、内容量を少なくして、アイスクリームとして食べても美味しい冷凍スウィーツ「アイスブリュレ」を提案しました。中身はまったく変わらず、内容量とネーミングを変えただけですが、これも立派な後続の商品開発です。売り場では食品ロスの心配もなく、今では冷凍スウィーツ売り場もすっかり定着しました。
事例④:軽くて日持ちする洋菓子(土産菓子)「シューラスク」
「シューラスク」は「アイスブリュレ」の会社の後続の商品開発で、「アイスブリュレ」は県内だけでなく県外にも販路が広がり売れていたのですが、冷凍庫が必要ということで売上が頭打ちになっていました。このため、会社初の常温商品の開発、さらには県内のお土産として「高知空港で売上No1になる」という目標を掲げて開発しました。
これまでの土産は和菓子で重量も重い(あんこたっぷり)といったものが大半を占めていたため、それとは真逆の「洋菓子で軽くてサクサク食べられるラスク」しかも既存商品である冷凍のシュークリームの生地を活かしてシュークリームのラスク「シューラスク」としました。商品のアイディアから箱のデザインもすべて従業員のアイディアで、開発から数年後に見事「高知空港売上No1」を実現し今でも売れ続けています。
まとめ
以上、第9回目の「事業の発展のために後続の商品開発ができるか?」はいかがだったでしょうか。
私自身も自分の会社の事業活動の発展のために、次々と依頼されるクライアントの商品開発を成功へと導かなくてはなりません。私としては数ある案件の中の一つですが、クライアントの生産者の立場になってみると、この商品開発に社運を賭けているケースが多く、失敗は許されません。
と言う私も成功したプロジェクトの案件でも、その途中段階では小さな失敗や挫折をいくつも乗り越えて結果的に目標達成しています。さらに若い頃は大きな失敗も経験しており、これまでの成功の秘訣は失敗の経験から学んだと言っても過言ではありません。なので、リスクが少ない場合は、まずはやってみて小さな失敗を経験することは、結果的に成功への近道でもあるのです。
みなさんも失敗を恐れず、日々の情報収集・市場調査の中で得られたチャンスとなる情報を元に企画立案及びテストマーケティングを実践してみてください。
失敗は成功への近道。きっと、やりながら又はやってみて気付く・分かることが本当の真実であると思います。
次回、第10回は、いよいよ販路開拓の分野、「商品特性に見合った販路・売り方を選択できるか?」です。お楽しみに!
そして、もしよかったら「スキ」・「コメント」・「フォロー」など、応援よろしくお願いします!
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