見出し画像

『もっと早く言ってよ!』と『こんなこと相談すんなよ!』のギャップを解決する教科書

組織を運営する中で、上司と部下の間の「報連相」は成功への鍵と言えるでしょう。

しかし、「もっと早く言ってよ!」と言う(言われる)ときもあれば「こんなこと相談するなよ!」と叱咤する(される)ときもあります。

このギャップは、一体どこから来るのでしょうか?

結論から言うと、多くの場合、報連相の「正しい」やり方が、実は誰にもきちんと教えられていないことにあると考えています。

私自身も、かつては報連相で悩む一人でした。上司にいつも怒られ、何が正しくて何が間違っているのか、その境界線が見えませんでした。

しかし、経営企画として、さまざまな事業部の部長たちと合意形成を図りながら仕事を進める中で、あることに気づきました。

それは、報連相の本質と、その成功のカギを握る「思考法」です。

この記事では、報連相における根本的な問題点と、それを解決するための具体的なフレームワーク「空雨傘」について解説します。

また、実際の具体例を交えながら、報連相と空雨傘を組み合わせた3×3の合意形成方法を紹介し、マネジメントにおけるコミュニケーションの質を格段に向上させる方法をお伝えします。

若手を抱える上司も、現在うまく働けていない部下も、報連相の悩みから解放される日はもうすぐです。この記事が、そんなあなたの一助となれば幸いです。

報連相とは何が目的なのか

報連相は、単に情報を上司に伝える行為ではありません。

その根本的な目的は、「信頼関係の構築」「意思決定の迅速化」にあると考えています。

「YES / NO」で判断できる報告ができることで、素早く意思決定をすることができ、事業が前に進むスピードが上がります。

また、必要な情報が適切な頻度と内容で連絡されることで、組織の情報のキャッチアップが迅速に、正確にできるようになります。

さらに、問題解決をするためにスモールステップで相談ができることで手戻りがなく迅速にプロジェクトを進めることができるようになります。

これら全てが円滑なマネジメントを実現するための基盤となります。

ここでは便宜上、報連相の順番で語られることが多い概念ですが、難易度を『連絡→相談→報告』の順番にさせていただき解説を進めます

なぜ、報連相が上手くできないのか

報連相がうまくいかない理由ってなんだと思いますか。

上司の目線から見ると、「なんかいい感じに進めてくれ」って思いますし、部下から見たら「ちゃんと指示してくれ」って思いますよね。

最初にも問題意識として話しましたが、報連相はこれが正解!みたいなものって実はあまり教えてもらえる機会がなく、使いこなせている人が少ないというのがあると考えていて、このことが原因で報連相がうまく行ってないように見えています。

思い返してみた時に「報連相」を体系的に、ロジカルに、再現性を持って教えてくれる人って今まで居ましたか?

個人的な経験で恐縮ですが、1人もいませんでした。

上司というのは全員が正しく報連相ができるから上司になったわけではなく、営業で結果を出せたり、その時の流れでマネージャーになっているわけなので、『報連相を正しく教えることは難しい』ということになります。

じゃぁ、報連相のやり方を正しく学べば良い!となるのですが、あんまりないんですよね。

報連相って相手によるし、シーンによるので、これ!と言う正解がないために、阿吽の呼吸というか、こうやると正解!というよりは、こうやると失敗しなかった!みたいな方向性の知識になりがちで、手取り足取りというより背中を見て覚える的な感じになりがちです。

ただ、今回このなんとなくある報連相を『こう理解したらわかりやすいのでは?』というものを見つけましたので、それを紹介します。

結論から言うと、よくあるフレームワーク『空、雨、傘』と『報、連、相』を掛け合わせで理解することが良さそうです。

まず簡単に空、雨、傘のフレームワークからお伝えします。

空雨傘のフレームワーク

「空雨傘」とは、問題解決のためのフレームワークの一つで、「空を見て、雨が降りそうだから、傘を持っていこう」という意志決定に至るプロセスを分解してロジカルに考える手法です。

このフレームワークでは、予測可能なリスクを事前に考慮し、計画段階でその対策を準備することで、上手くプロジェクトを進められることを狙います。

空は情報を見つけること、何が起きたことを正しく理解することとします。比較的答えが決まっていることが多い領域です。

雨は空を見た時の解釈とします。個々人の経験や、上司とのコミュニケーションに依存する、比較的答えが複数ある領域です。

また、雨の段階で間違えると大きな方向性がズレるので、手戻りが多くなったりする範囲でもあります。

一方、解釈になるので、正解はないものの、ある程度こうしたら良さそう、という前例は存在するので訓練することで精度は上げられます。

傘については、雨に対してのアクションをさします。実際に雨が降ってきそうなことに対してのアクションとしては傘を持っていく、家から出ない、タクシーを使う、ヒッチハイクする、テントを持っていくなど、前提条件によって変わるし、かなり自由な範囲があるのが特徴です。

行動が伴うので、やると決めたら不可逆ですし、ここでの合意はかなり大事です。

では、この空雨傘のフレームワークと報連相を掛け合わせた形で説明していきます。

空雨傘×報連相の3×3で合意形成をする

空雨傘のフレームワークを報連相に適用することで、全部で9つの枠を作ることができます。

空(現状把握)、雨(状況の解釈)、傘(意思決定)に対して、連絡、相談、報告の順番で信頼度(過去の実績的に任せることができるか?)という点で整理してみました。

イメージこんな感じです。

この9マスの中で、進めている案件はどこで上司と部下の間で合意しているか?という視点でお互いに会話するととてもイメージがつきやすくなります。1つずつ「どういう状態か?」「合意形成ポイントは?」「注意点は?」で整理してみます。

空×連絡

  • 状態: 発生した事象や計画段階での情報を機械的に伝えることが大事な状態。

  • 合意形成: 発生したことと情報の重要性を正しく伝える。

  • 注意点: 不確実性を伝えつつ、過剰反応を避けるために冷静な伝達を心掛ける。また、「事実」と「解釈」をしっかり分けて伝える練習をする。ここでは特に事実を伝えるのが大事。

空×相談

  • 状態: 発生している事象に対して、これで情報収集は完了しそうか?という点で相談する状態。雨(解釈)を見据えた上で必要な情報収集を行うが、1人立ちするのは少し難しい状態。

  • 合意形成: 調査しようとしている情報がこれで全てか?を相談する。

  • 注意点: あくまで情報収集というところを合意するべきである点と、全てか?という点のミスすると手戻りが発生するので上司は注意が必要。

空×報告

  • 状態: 調査の進捗や完了状況を報告し、最終的な判断を求めるだけで問題ない信頼関係と実績がある状態。

  • 合意形成: 情報収集が適切に完了したかの評価と今後の指示を出す。もしくは一緒に雨や傘の話に入る。

  • 注意点: 「事実」と「解釈」を分けることと、具体的な成果と未解決のポイントを明確にすること。

雨×連絡

  • 状態: 現在発生している問題や状況に対しての解釈を連絡すること。空に対しては一定の安心感があるが、解釈についてはまだ実績や実力がないと感じられる状態。

  • 合意形成: 自分の解釈をとりあえず共有してください、で合意形成をする。

  • 注意点: 内容がどこまで考えられたか?を注意深くヒアリングする必要がある。

雨×相談

  • 状態: 解釈について相談をしながら前に進めることができそうな状態。たまに違うと思われる解釈をする時があり、100%そのまま任せることが難しい状態。

  • 合意形成: ステップバイステップで解釈について進めていこうという合意が前提。

  • 注意点: 解釈をミスすると大きな手戻りがあるので注意深く進めること。また、ここで介入を多くすると、依存する関係になる可能性があるので、大きな方向性があっていたらできるだけ自分で「報告」ができるように促すこと。また、思考のパターンや過去の経験はできるだけ伝えて引き出しを増やすこと。

雨×報告

  • 状態: 解釈に対しての結果に対してある程度信頼感を担保することができている状態。

  • 合意形成: 解釈までは任せることができているために、内容に対して議論をすればOKという合意。

  • 注意点: 任せると放置は違うので、報告内容に対してはしっかり確認を入れること。また確認が自分の視点だけではなくて、フラットに物事を判断できるようにしておくこと。

傘×連絡

  • 状態: 空、雨の情報を踏まえたアクションを考え、ただ、状況を共有(連絡)している状態。自体が前進していないため、あまりここで合意形成されるイメージはない。

  • 合意形成: ー

  • 注意点: この様なコミュニケーションになっていないか?を確認する方が大事になる。

傘×相談

  • 状態: 空、雨の内容を踏まえてたアクション計画について、相談しながらステップバイステップで進められる状態。必ずしもこの状態が悪いことはなく、人と進める際にはこの状態で進めることが多いイメージ。

  • 合意形成: どの様な空、雨に対して、自分がどういう傘をしようとしているのか?という全体感を持ってコミュニケーションできる。小さく持ってきてください、というオーダーは逆に必ず必要になる。

  • 注意点: ステップバイステップで進めてくださいの合意形成を必ずすることと、ここに対して「相談」の癖がついてしまうと、自分で最後まで考えてこない教育になるか可能性があるので、最終的に報告だけでOKな状態を作るための相談です、というコミュニケーションを忘れないこと。

傘×報告

  • 状態: 事象に対して1人で完璧に処理できる状態。アウトプットに対して一定以上のクオリティと実績と信頼がある状態。

  • 合意形成: この問題の対応は任せる!という状態。

  • 注意点: 放置は良くないので確認はするが、この状態で合意した場合は問題の対応に当たった人を尊重する度量も求められる。ここで色々突っ込むと、部下からの信頼を失われてしまうことにもつながるから注意。

実際の業務で使うには

実際はここの9マスの中で1つというよりは、複数選択することが多いかもしれません。

例えば、「空は報告でOKだけど雨は相談にする」とか、「空と雨は報告でOKだけど、傘は相談にする」とかです。

最終的には、空雨傘を全部報告でOKな状態を作ることが目標となりますが、この様なフレームを意識したらある程度はスムーズに会話ができるようになるはずです。

また、何か会話が噛み合わないな?となったら、お互いにこのフレームワークを用いて、『今どこの会話をしている?』だったり、『どこをやる必要があると思っていた?』という目線合わせもできます。

正直私自身がこの報連相に苦しんだ人間なので、これで少しでも苦しむ人が減りますように。

感想など是非コメント欄か、Twitterで聞かせてください!

私は、スタートアップ企業で5年間1人目社員として働いた経験をもとに「マネジメント」「組織」「自己成長」「マーケティング」などをテーマに週に1本程度発信をしています。

もしよろしければフォローして続編をご期待いただけますと幸いです!

それでは!

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?