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【800字 ショートショート】#52暁への金星
一人の少女が銃を構えている。目標は俺だ。その少女の手は震えていないし、目もきちんと座っている。人殺しに慣れている目だ。
でも、何となく感じる。その少女の心の揺らぎがあることを。何となく感じるのは気のせいじゃない。これは俺自身の過去が俺に銃を突き付けてきている。
「・・・私は英雄、私はヒロイン、私は・・・」
「ヒーローだった」
〝英雄になりそこなった者たち〟
それが自分の過去だ。
「こう生きればよかった、そうすればよかった、ああすればもっと良くなった」
「もっと勉強していればよかった、もっと練習すればよかった」
その英雄になりたくて生きてきて、どこかで失敗したか、道をそれたか、妥協したかはわからない。過去が作り上げた自分が今の自分で、その今の自分は決して裏切らない過去から繋がった自分。
その過去を否定し始めたとき、少女は俺に銃を突きつけた。
少女は口を動かす。
「・・・あんた、あんたさ、このままでいいと思っているわけ?それは私が許さない。ってことにしたいんだけど、ここはあんたの頭のなかさ。だから私の存在をなかったことにすることもできるんだ」
そういうと少女は外を指さした。
「あんたはどっちだい?」
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