その青い世界、赤い冒険者が歩く時 前編 2、青い世界から便りが届く
体調不良を起こし始めたのは2014年のゴールデンウィークの最中でした。私は茨城県へ出張に行っており、そこで工事をしていたのですが、その作業中にテスターを見る作業ってのがあってその数値を読んでいたわけです。テスターってのは計測器です。頭を垂れて。するとどいうわけか急にめまいが起きて、体中の感覚がなくなってふわふわしてきました。
「んん?」
急に口の中が乾いてきて、ああ、これなんか感覚的にやばいなって感じたんでしょうね、それが体調不良を起こしたきっかけでした。その日はゆっくり休むことで何ともなくなりましたが、これはきっかけです。ここから本格的に倒れるまでの約3か月間。私の生活は下り坂でした。
ある意味、青い世界からお便りが体に届いた瞬間なのでしょう。
体調が下り坂になっていった大きい一つに、ご飯が全く食べられなくなった。という症状が起き始めます。これが最も異常を感じる原因でした。とにかく食欲不振に陥ってしまっていきますが、当時の私は一過性の物であると信じ込んで無視しました。
無視しているととんでもないことになっていきます。
それが表に出始めるのが7月。暑い日の愛知県でした。その出張中、とうとう全く食べられなくなってしまった私は緊急医で点滴、業務、点滴、業務を繰り返した結果、ドクターストップがかかり、実家へ強制帰還。
家族に受け入れられらないまま、実家で過ごすことになります。
さて、急に病気になって休むことになったのですが、その時に驚いたのは人間の習性です。どんなに遅くまで起きていようが、それまできっちり起きていた時刻の6時には目を覚ましていました。しかし、それは健康的な起き方ではなく、なんというか起きなきゃいけないから起きる。という脅しが体に染み付いている。そんな感じです。
病気になった当初に行った病院は内科でした。そこで胃カメラ、CTなどやれることは全部やって、検査の結果異状なし。
内科の先生は「しばらく休んでみませんか?」と言ってくれたので診断書を出してくれました。
付けられた病名は「自律神経失調症」です。
自律神経失調症とは交感神経と副交感神経と呼ばれる2つの自律神経のバランスが崩れている状態にあることです。例えば何かの発表会や競技会などで体が緊張すると手に汗が出てきますがこれは交感神経が活発になっているからです。逆にこれを落ちつけようとするのが副交感神経の役割でして、緊張した場面で「深呼吸すると落ち着く」といったことはこの副交感神経を使ってバランスを取る。そんな感じです。
このバランスが崩れていると交感神経が出なくても良い場面でも手に汗が出てきたり、心臓が高鳴ったりしています。そもそも交感神経は人が意識していない部分の運動である通常の呼吸などを司っていて、これがずっと強いままだと早い話が寝れません。寝るには副交感神経が活発にならないといけないのです。
なので、内科の先生に言われたのは「生活リズムをしっかりと意識してください」ということです。これは夜起きていて、朝に寝るという乱れたリズムを取るとこの自律神経のリズムと逆転してしまうためあまりよくありません。最近でいえば配信サイトで配信をしている人たちも基本的に生活リズムが逆になっているので、この病気で休止することを見たことがあるかもしれません。
この病気は疲れとかストレスが原因と言われているため、それを改善すると自然に良くなります。プラスして内科の先生は「心療内科」の受診を勧めてくれました。紹介状も書いてくれましたので、次の日くらいに心療内科を受診すると「適応障害」と診断されました。
適応障害とはある特定の状況や出来事。仕事環境の変化、上司の変化、学校で起きたこと。そういう外的な要因で本人が「耐え難い」「辛い」という風にストレスを感じた結果、気分とか体調面にそれが出てきてしまうことです。
例えば部署異動をしたことによって業務内容が変わったりします。その変わったことで本人にストレスがかかります。結果として朝、お腹が痛くなります。これが適応障害です。
この人のお腹を検査しても何も悪いとこが出てこなかった場合、ストレスによるものである可能性が高いので適応障害とぃうことになるらしいです。
これを改善する方法は「元の部署へ戻して、昔の業務にすること」です。つまり原因を取り除けば治る可能性があるということになります。そのため心療内科の医師にはとりあえず環境を離れるために「半年の休養」を宣告されます。しかし私としては「とんでもない、そんなに休んではいられません」という感情でした。
病名を上司と親に言ったら、「ふんっ」と鼻で笑われました。それもそうです、別に部署が変わったわけでも、上司変わったわけでもありません。入社当時からやっていること自体、3年間くらい変化がなかったのですから。まあそれは置いておいて、とりあえず抗不安薬と呼ばれる薬を出されてそれを服用しました。
「薬の効果ってのはすごいですね」
どんなに眠くなくてもそれを飲むと寝れるんですよ。まあ、そういう薬なのでそうなのでしょうが。睡眠薬とは違っているものらしく抗不安剤とは手術の前とかそういう緊張するような場面で処方されるものです。違いは分かりませんが効果は薄めらしいです。
それでもこの薬の効果が凄いので、永遠に睡眠できる感じです。例えば夜12時に寝て、朝11時に起きる。普通はそのままですが、薬を服用すると13時くらいからでもまた寝れるのです。不思議ですね。すごいです。って思っていました。
そんな感じで一か月、とりあえず薬を服用しながら静養していると、私以上に上司や親がしびれを切らしてきます。
「いつまで夏休みでいるんだ?」
「会社が嫌になったのか?」
「お前をそんな風に育てた覚えはないぞ」
「仕事が沢山あるんだが?」
とかとか。罵詈雑言。上司は真剣に夏バテだと思っているらしくて、これは冗談ではなく本気で数年たった今でも「夏バテだったあいつは」と言っているらしいです。今思えばそんな上司の下に就いたのが運の尽きだったのかもしれませんね。
特に今でも覚えているのは親の一言です
「夏休み、楽しかったか?」多分私がさぼっていて、自分は働いているので嫌味で言ったのでしょうね。
それで周りの目もあって、当初医者に言われた半年を無視して復職せざるを得なくなり、長野から千葉へと行って寮に帰って、会社の上司と連絡を取って、次の日くらいから復職するのですが、
「わずか1日で使い物にならなくなりました」
何というか焦燥感という体に力が全く入らなくなり、現実感があまりなく、今にも倒れるんじゃないか?と思ってしまうくらいな感じです。私は翌日、出社拒否をしてその後上司が寮に来訪。当然、怒られました。その後、休職に入ることになります。
さて、ここからどうしようか?という話になります。実はこの時の私は相当焦っていました。そりゃそうです、急にこうなったもんですからびっくりしたわけですね。
それで次にこう考えるわけです。
「とりあえず病院に行かないといけない」
近辺に良い病院は無いのか?ということを探すと少し離れた場所に大きな精神科の病院があることを知ります。会社の人たちも何人か通っているという情報を得まして、そこに向かいました。
社会人が休職をするために必要なのは「医者の診断書」です。私はその病院に行って事情を説明しました。すると直ぐに診察が始まって、診断の結果は変わらず「適応障害」そして新しい薬を何種類か渡されました。
「これで助かるのかな」
そういう風に安易に考えていました。しかし、それはある意味間違っていたのです。
取り合えず、今の状態で食べれるだけを流し込むと、薬を飲んでみました。その後のことは今でもはっきりと覚えています。
まず夜中、トイレに起きたのですが、完全に体が自分の物ではなくなっていました。なんというか全身がしびれていて歩くのにもふらふらしています。私は恐怖を感じました。怖かったです、ああ、このまま死ぬのかなって。
それで怖くておびえながらベッドに潜り込んでいると、皮肉なことにきちんと薬は効くわけですから朝が来ます。
また薬を飲みます、また同じことを繰り返しました。
私はそれからその病院に連絡を入れて、薬が合わないことを知らせるとあっさりと
「じゃあ、薬を変えますね」
と言われて、薬が変わりました。
この時に私が抱えていたのはとにかく食べれないということで、それが継続していたことです。私は身長が168センチ。体重が62キロありました。これは自慢ですが体脂肪率は5%くらいです。体操やってましたし、そもそも食が細いというのもあります。晩酌もしませんでしたから。それが一気に急落し1週間で55キロまで落ちてきました。これは多分食べれていないことだけではない気がします。
なので、近くの内科医さんに事情を話して点滴を打ってもらいました。栄養が無くてふらふらしていたので、そうやって薬が変わったり、点滴をしたりする生活を2週間くらい続けたのですが、私が思っていたのはただ一つ。
「このままだと何も良くならないし、大変だし、辛いな」ということでした。理由は単純で
「飲むように指示されている薬の副作用が強い」
「食事がまともに取れないので、点滴を打ちに病院に通う」
らちが明きません。
担当医が言うには「千葉県で病気を治した方がいい」とのことでした。そんなことは分かっていましたが、現実は私一人しかいない状況でどうにもできなかったのです。
なので、ある決断をします。
「実家に帰ります」
私は実家に帰る準備を始めたのです。
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この物語で書かれていることは全部「ノンフィクション」です。内容は私が2014年頃に病気になり、現在まで続くまでの時間に起きた出来事です。 …
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