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やってやれないことはない16話 『改革事業計画策定開始 これで雰囲気が変わった』

この病院の理事長は整形外科です。
なのに⁉ エレベーターに身障者用のボタンがない。
「車いすでは、内部のボタンに手が届きません。
車いすの患者さんは、前から入ってそのまま後ろに出ます。
鏡がついていないから、待っている人とぶつかります。」
「早くつけてください。」

全うな意見です。
善処しますでは始まりません。

早速エレベーター会社を呼んで2台の改修工事スケジュールと見積書作成依頼します。

メーカーから出てきた見積りは2台で500万円弱。
こんなに高いのかと思案していたところ、法定整備に来ていた業者に相談してみたらある策が見つかり、300万円強で決定となり即実行です。
蛇の道は蛇とはこのことです。

『この設備改修をきっかけとして病院の雰囲気が変わり始めました。』
「お金は活きるものに使え」これは鉄則です。

言っても変わらない。と思っていた人たちが希望を見出したのかもしれません。
赴任後、わずか半年でこの改修に手を付けたことは病院の方向性を示した証しでした。

職員との面接でも、息せき切ったようにいろいろな思いが告げられます。
                                       私はなぜ、この病院に就職したのか。
グループ会社から出向できたけどやりたくなかった。
理事長から請われてきたが、未だに何も実現していない。
ボーナスが年間1か月では、年収が平均して低くなる。
ほかの病院を知らないので、こんなものかと思っている。
医療機器が古く、必要数に足りない。
病院全体が鬱蒼として明るさがない。
調子のよい人ばかりがいい加減。
病院の将来に希望が持てない。
病室のエアコンがいくつも壊れているが、そのままになっている。
仕事に使命感を感じない。
就業規則を見たことがない。
口頭で個人的に言われるだけで、自分がどの職制にあるのかわからないし、誰も知らない。辞令などない。
無駄だと思って何も見ざる、言わざる、聞かざるとして勤務している。
余計なことはしないほうが、叱られなくてよい。
外来と病室のカーテンをきれいにしてほしい。
制服がバラバラで統一感が全くない。
待合室と売店をきれいにしてほしい。
外来のトイレが特に臭いし、病棟のトイレも臭い。
お風呂の水をたらいに汲むとそこに黒いマンガンが出てくる。
遅刻する人も早く来る人も同じ扱いになっている。
給料や賞与の決め方がバラバラでお手盛りになっている人もいる。

読むのもつらくなってきませんか。

現在なら、全くのブラック企業ですね。
まだまだいくらでも出てきます。
ここらでやめておきますね‼

兎に角、改革材料は山積みであることだけははっきりしています。

改革事業計画策定開始

まず初めに、短期目標として、
① 井水の浄化施設建設
② 就業規則作成開示
③ 退職金制度確立
④ 各トイレの消臭装置設置
⑤ 病院組織と職制職域の作成
⑥ 給与体系の確立
⑦ 制服の統一と貸与
⑧ 設備機器の修理
⑨ カーテン類の新規導入
                                                                                                                               長期的な目標として、
① 総合リハビリテーションセンターへの施設基準取得実施。作業療法室新設、言語療法室新設
② 医療制度改革による、4人部屋、6人部屋病室の拡充。急性期及び慢性期の病棟再編
③ 1看護単位40床以下
④ 介護保険適応施設併設。訪問看護ステーション、介護病棟、デイケア、デイサービス、ショートステイ、指定居宅介護支援事業所、マネージャーの資格取得のための支援等                                    ⑤ 医療情報ライブラリー新設

やることが同時進行でなくては、終わりが見えません。
やるか・・そう決めて粛々と行っていきます。

先ずは資金需要に耐えるだけの収入がなければならないのは誰でもわかることです。

収入を増やす。どのように考えますか?

病院は、ご存じのように保険請求が点数制になっており、勝手に治療費を決められません。計画統制経済の最たるものですね。

ならば、多くの患者さんに来院いただくか、点数の高い先進医療を目指すしかありません。
市井の病院では先進医療を確立することは資金面からも難しく、まともな経営では、外来患者数の確保が重要な要素となります。

外来患者数の定常化と適正化は、大学付属病院勤務時代に確立していますので、これを最優先に行うこととしました。

外来窓口の平易化と待合室を明るく改修し、椅子もいくつもの種類を統一したデザインで設置しました。売店も清潔感の漂う作りに変更。      

外来トイレの全面改修で、女性用には円形ドアにより広さを確保し、大きなミラーを設けてパウダールームにし、全自動の給湯栓と石鹸滴下により衛生保持を第一としました。
                                                       男性用はパウダールームとはなりませんが、同等の設備でした。
これは、地域の人々の評判となり、多くの患者さんが見学に来るほどでした。
                                           時に円形ドアは、開け方が分からなくなった高齢者の方がいて、壊されたことがありましたが、メーカーの方が直ちに来て改修を行い、逆に弱い箇所が分かってよかったと喜ばれました。
何せ、全国でも早い時期の導入でしたので、メーカーの対応も素早かったことが記憶に残っています。

そして、あれよあれよという間に外来患者数が伸びていきました。
そう言っても、私が来た時の外来患者数は、100人以下/日です。入院の病床数は118床。

これからが楽しみになりました。
ある仕掛けが、予想外の展開で・・・

このnoteは、私の人生において成功・完結・失敗・後悔などのストーリーです。 若い皆さんのヒントになればと思って書いています。 書いてほしいことがあれば、気軽にご連絡ください。 サポートは結果であると受け止めておりますのでよろしくお願いいたします。