あこがれの北朝鮮②
「 私は、南北軍事境界線に行ってきます。」
社員旅行の韓国へ行くにあたり、韓国と北朝鮮の軍事境界線ツアーにひとりで参加することを職場で表明したところ、一瞬の静寂を経て社内が騒然となった。
その状況にしっかり怯んだ小心者の私は、このままツアーの参加を会社から却下されるのではと心配になったが、
結果的には、
念願叶ったのであった。
青い建物が例の板門店、向かいが北朝鮮である。
よく目を凝らせば、北朝鮮側の軍人もこちらを監視しているのが分かる。
そう、よく目を凝らせば、、、
ほら、いた!
それにしても、様々な技術が発展している現代において、こんなにも「直接的に」監視し合っているという光景はなかなかにシュールであった。
いずれにせよ、他人事のようにニュース映像で見ていた軍事境界線エリアに自分が立っている。
そして目の前には、北朝鮮。
その事実に私はもう興奮しきりであった。
しかし、これで終わりではない。
このツアーでは南北会談の場として用いられている板門店の内部まで見学できるのだ。
緊張しながらも、いよいよ核心部である板門店へ。
ゴク・・ほほぅ・・・これがぁ・・・・
・・・うん?
うーん。
ちょ、イス多いな。
別にいいけど・・・
この机上の真ん中に敷かれている黒いコード。
これは南北会談の際に使うマイクのコードらしく、このコードで南北の境界線を示しているらしい。何でマイクのコードでやっているのかは知らない。
とにかく、この板門店の中であれば南北を自由に行き来して良いと認められている。
つまりこの黒いコードを越えれば「北朝鮮に入った」ということなのだ。
こうして私は命の保証と引き換えに、おひとりさま経験値を大幅にアップさせたのであった。
完
【後記】
こうしてご満悦でその場を後にした私ですが、この一件により社内において自分が「相当変な人」というポジションを確定してしまったことに、この時はまだ気付いておりませんでした。
女性おひとりさまでツアー参加をご検討中の方へ、ひとつのリスクとして申し上げます。
「 思ってるより、引かれます 」
最後まで読んで頂き、どうもありがとうございました。
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