「Terra Co. 振付家育成講座」 受講レポート⑵
【Terra Co.とは】Terra Co.は平原慎太郎が主宰するダンスカンパニーOrganWorksが企画運営する振付家育成講座です。選考によって選ばれた16名の振付家が10ヶ月で10回の講座を経て創作した作品の成果を発表いたします。
【メッセージ】
コンテンポラリーダンスという90年代から00年代にムーヴメントをおこしたダンスにおけるオルタナティブなジャンル。
そして2010年代も終盤になり、同ジャンルは専門的な知識と、個人的な思想をより求めた。
当然、振付家という言葉も裾野を広げ、誰もがそう名乗れるようになり様々なツールを用いてダンスを表現するようになった。
今企画の参加者はそんなジャンルの振付家となるべく10ヶ月間知識を蓄え、型を学びそれを壊す時間を過ごし、遂に終着点である公演に辿り着いた。
それはこれからの始点としても位置付けられる。
僕はこの機会を同業者に向ける厳しい目と、同業者に向ける敬意を持って迎えたい。
扉の表と裏。一歩踏み出せば違う景色がある事を知っているからこそ。
講師・監修 平原慎太郎
第2回のテーマは「作品/時空間」
第1回では「コンテンポラリーダンス」という言葉の捉え方について考えたが、今度はそれを作品という枠組みにし、観客に手渡すかたちにする方法を学んだ。いくつかの例えを用いてこれは作品と言えるか否かを議論したりもした。
インプロは作品?ただ90分寝ているだけは作品?盆踊りは作品?などなど。
そして、ダンス作品の枠組みの形成の方法を大きく3つ学び、その中からひとつの手法を選び動きを作り短い作品をつくる実践を交えて具体的に学んだ。
そしてダンスではないジャンルの芸術における「時空間」の特性を知り、ダンス作品において「観客と時空間を共有する」という特異性があるということから、ダンス作品の枠組みと捉え方を考えた。
この育成講座全体で何度も出てくるワードは枠という言葉。枠をどこから、何を使ってどんな形で作るかというところに作家性が現れる。
私は映像身体学科という学科を卒業した。私に映像のことに専門的知識があるわけでは全くないが、卒業論文を書くときに映像にある「枠」に興味を持ってダンスにとの繋がりを探した。
講義の中で平原氏の言葉としても出てきたが「映像」は時空間の流れを編集によりコントロールする。カメラは映るものを切り取り枠を作る、見えていないものの存在が作品の中に登場することができるというのも映像の特徴である。
手だけのクロースアップや、会話相手が声しか聞こえないなど情景を切る。
ダンスでは観客の視点がその切り取りを行う。ダンス作品で舞台上のどこを見るかは観客に委ねられるが、それを切り取ってもらうための考慮は作家側で持っておく必要があるのだ。いわばそのヒントになるようなものを置く。
映画でも見ていて、タイトルのワードが主人公の口からポロリと出た瞬間や、同じ場所の景色が時間を経て変化している様子など終わりのシーンに向かうにつれて積み重なりを感じられるとき、その積み重なりの中でこちらが何かを習得していけるときに面白みを感じる。そう、積み重ねが必要だ。時空間を共にするダンスでは舞台上と観客は同じだけ歳をとる。ある時間で身体がどのように変化するかを作品のなかに置く、これはダンスである以上身体でなくてはならない。たくさん言葉を使っても、動きが少なくても、舞台装置がたくさんあっても、プロジェクターを使っていても、ダンスにおいてつきまとうのは身体的要素だ。
たくさんのメッセージや意図が自身の中にあってもそれを「作品」に昇華するには、受け手に正解をわかってもらうわけでも、いいと思ってもらう必要はなくても「伝えようとする」必要だけはある。空白を楽しむ芸術である以上、時系列が複雑であったり遠回しな説明を用いたりすることがあるであろう。しかしこれを受け手にヒントや手引きとともに提示する、その置き方を考えなくてはならない。
例えば洋服を作った人が、これは実は目を閉じて裁縫したんだ。と言ってもその意図や価値が、価格とクオリティにあっていなければ、その要素に必要性を感じるのは難しい。ダンスにはこの現象がたまに起こる。必要性の必要性。
「作品」に昇華と書いたが芸術作品は人間がより豊かに生きるために存在していると思うので「作品」と呼ぶには見た人の心に何かしらの爪痕を残していたい。私はこれに先に書いた「ロマンチック」性を秘めていてほしいなあとダンスでは。という思いでいる。(映画でもハッピーエンドと言える終わりで終わってほしいと願ってしまう。)
この講座があったのは7月。
この時はまだ作品の目鼻は形成されていなかったが、今創作中の作品は、講義で提示された作品の作り方3つのうちどれに当てはまるかを考えて見る、1番のパターンにちょっと3番が入っているかな。などと。
作品を創作するには、何もない0状態から始めなくてはならないということを少しだけ感じていたが、むしろ既にあるピースを何色にしているのか、形を変えた場合原形をとどめていなくてもいい。ちょっと楽しそうに感じてきた。
平原慎太郎氏の遊びのある作品は、創作の時点で始まっていて、ちょっとしたパズルゲームのように確実に一つづつのピースを形成し当てはめているんだと感じた。
【公演日程】2019年3月21日(木祝)A20:0022日(金)B19:3023日(土)C14:00/D19:3024日(日)E13:00/ F17:00 *最終講座19:00-20:00※ 受付開始は開演30分前。客席開場は開演15分前。※ 上演作品は振付家名の欄にA〜Fで記載。
【最終講座のご案内】最終講座を公開いたします。本公演をご覧になった方のみご観覧いただけます。Peatixでご購入の方は、講座観覧チケット(無料)も合わせてご購入ください。
講師:平原慎太郎
【振付】
足立佳野/B F 上田舞香/C D 大西彩瑛/B E 尾形菜々子/A E 貝ヶ石奈美/C D 木原萌花/A B
高橋真帆/C D 高谷楓/C D 田中彩/B F 豊永洵子/C D 中西あい/C D 深井三実/B F 堀内まゆみ/E F
牧野彩季/B F やえおめぐむ/A E 渡辺はるか/A F
【チケット】
一般 2500円 当日3000円 U25 1500円
※リピーター割引:2回目以降の観覧は500円引き。(Peatixでご購入した方は当日受付で返金いたします。)
※U 25チケット:年齢確認のできるもののご提示が必要です。
【予約フォーム】https://terraco01.peatix.com
【問い合わせ先】
staff@theorganworks.com 担当:町田
070-1409-0478(対応時間10:00~18:00)
【スタッフ】
舞台監督:筒井昭善
照明:櫛田晃代
音響:相川貴
広告デザイン:小見大輔
写真:加藤甫
制作:町田妙子(OrganWorks)、小松睦(OrganWorks)
特別講師:北村明子 児玉北斗
協力:森嶋拓 (株)セッションハウス G-screw Dance Labo
助成:公益財団法人セゾン文化財団
主催:OrganWorks HP:theorganworks.com
【会場】セッションハウス
〒162-0805 東京都新宿区矢来町158
MAIL mail@session-house.net
TEL 03-3266-0461
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