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【第3話】1リットルの牛乳パックの中身は何リットル?


 T先生の日課は、毎朝牛乳を飲むことである。1Lの牛乳パックと朝ごはんになるようなおかずを買い、家に帰ろうとしていた。

 先ほどの公園をもう一度通りかかったとき、2人がまた声をかけてきた。

りん「さっきの問題おもしろかったね。」

こう「最後は、9だけになるんだね。」

T「ふたりが算数の不思議な性質に触れてもらってよかったよ。」

りん「そういえば、計算は役に立ったことがあるけど、図形も日常生活の役に立つの?」

こう「たしかに。面積とか求める機会ってあんまりないなぁ。」

T先生はさっき買ったばかりの牛乳パックを取り出した。

T「よし、それなら体積を求めてみようか。この牛乳パックの形の体積を求めることはできる?」

りん「これは直方体だから、
    たて✖️よこ✖️高さ
だね。」

こう「測るもの持ってない?」

T先生はポケットに忍ばせていた定規をそっと渡した。

こう「底面は、7cmと7cm。高さは、19.5cmくらいかな。」

T「電卓を貸してあげるから、体積を求めてみて。」

こう「7✖️7✖️19.5=955.5。出たよ、955.5㎤」

T「なんかおかしくない?」

ふたり「え?なにが?」

T「この牛乳パックはどれだけ入っているんだっけ?」

りん「1Lだよね。」

T「うん。1Lって何㎤だったか覚えてる?」

こう「1Lは1000㎤…あ、おかしいよ、この牛乳パックには、1Lも牛乳入っていない!」

T「44.5㎤はどこに行ったんだろうね?」

りん「もしかして、今まで嘘つかれていたの?」

T「そう思うよね。でも、この牛乳パックには、ちゃんと1L入っているんだ。」

こう「よく見たら膨らんでいる。」

りん「ほんま?…ほんまや!」

T「牛乳パックはまっすぐな直方体ではなくって、少し膨らんでいるんだね。この膨らんでいる部分をたすと、ちゃんと1Lになっているんだ。」

りん「よかったぁ。」

T「牛乳屋さんは、ちゃんと嘘はついてないけど、世の中には一見正しそうだけど、実は間違えているってことがよくあるんだ。
もちろん、わざとじゃなくてミスのときもあるけどね。だから、それに気づくことができる"目"を養うために、算数を勉強するんだ。」

こう「それが、少し前に言っていた算数を学ぶ目的の一つ?」

T「そうだね。〈考える力がつくから学ぶ〉というやつだね。」

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