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【日本映画】竹熊健太郎メルカリ出品DVD解説文集

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竹熊健太郎メルカリ解説文集の中から日本映画をセレクトしました。
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#田中絹代

【映画芸術の到達点】溝口健二「雨月物語 4Kデジタル復元版」('53大映)

【映画芸術の到達点】溝口健二「雨月物語 4Kデジタル復元版」('53大映)

溝口健二が1953年に発表した「雨月物語」です。主演は森雅之、京マチ子、田中絹代。撮影は人間国宝級の名カメラマン宮川一夫です。上田秋成の「雨月物語」のうち「浅茅が宿」「蛇性の淫」を元に、モーパッサンの「勲章」を加えて川口松太郎が小説化し、依田義賢が脚本化しました。

琵琶湖北岸の同じ村に暮らす陶工の源十郎(森雅之)と妻の宮木(田中絹代)、源十郎の弟の藤兵衛(小沢栄)と妻の阿濵(水戸光子)。

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木下惠介「楢山節考」('58松竹)

木下惠介「楢山節考」('58松竹)

木下惠介「楢山節考」(1958)です。オープニングは歌舞伎風に「東西東西、このところご覧に入れまするは」という口上が。そして定引幕を黒子が引いて映画が始まります。

幕が引かれると、全編オールセットで、背景の山もあえて書き割り風。場面転換では振り落とし(背景が描かれている書き割の幕を瞬時に床に落として次の場面の背景が現れる)が使われています。最初から最後まで歌舞伎を意識した、ユニークな映画です。

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小津安二郎「風の中の牝雞(めんどり)」(1948)

小津安二郎「風の中の牝雞(めんどり)」(1948)

巨匠・小津安二郎監督が戦後の動乱期の東京を舞台に、心ならずも「売春」に手を染める女性(田中絹代)の苦悩を描きます。

小津安二郎としてはかなり珍しい題材で、しかも最後に(小津としては)派手なバイオレンス・シーンもあります。公開が1948年9月ですから、敗戦によって時代が変わり、大都市は壊滅し、極度のインフレが生活を直撃しました。それでも人々は生きていかなければならず、日本は大変な混乱期でした。

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溝口健二「夜の女たち」(1948)

溝口健二「夜の女たち」(1948)

小津・黒澤と並ぶ日本映画三大巨匠の1人溝口健二の、敗戦の混乱期に肉体を売る女性の悲劇を描いた問題作です。主演は田中絹代。1948年5月公開。

奇しくも同じ年に小津安二郎「風の中の牝雞(めんどり)」が作られており、これも田中絹代主演。つまり田中は、同じ終戦3年後の1948年に、2人の巨匠が売春婦を描いた映画に続けて主演したことになります。

田中絹代は空襲の跡も生々しい大阪の女性ですが、夫は外地で

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