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#創作小説
【小説】瑠璃の囀り 第5話「香水」
※X(Twitter)の企画に参加し、「香水」というテーマで執筆させていただいたお話です。
公園を散歩していた私の鼻を、良い香りがくすぐった。辺りを見回すと、いつものタートルネック姿の青沼さんが歩いているのを見つけて駆け寄る。
「青沼さんっ」
青沼さんはこちらをみて目を丸くした後、にっこりと微笑んだ。
「こんにちは。またお会いできて嬉しいです」
「私も嬉しいです! 青沼さんの匂いがしたので、
【小説】瑠璃の囀り 第3話「散歩」
今日は大学の授業が早く終わったので、再びあの公園へ散歩しに行った。
昼間は猛暑だが、夕方になると涼しい風が吹いてきて心地良い。ボールを追いかける子供たちを微笑ましく眺めながら、ベンチでひと息つく。
「こんにちは」
横から声を掛けられ、見るといつの間にか隣に青沼さんが座っていた。
「わ⁉︎」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
「驚かせてしまってすみません。またここでお会いできたのが嬉しくて
【小説】瑠璃の囀り 第2話「再会」
大学の授業が終わった後、少し寄り道して商店街に入る。あの人が今日も青果店で働いていた。
「いらっしゃいませ……あ」
どうやら気付かれたらしい。薄い唇が嬉しそうに微笑む。
「また、お会いしましたね」
覚えていてくれたのが嬉しいからか、それとも緊張からか。少し体温が上がるのを感じた。
「何か買っていかれますか?」
「……え、あ……じゃあ、せっかくなので」
商品を見るだけの予定だったが、弾んでい
【小説】瑠璃の囀り 第1話「邂逅」
休日。何の気なしに近所の公園を散歩していると、ふわりと爽やかな香りが鼻を掠めた。
(香水?)
香りの方を見た瞬間、すぐ横を背の高い人が通り過ぎていった。顎のあたりまで伸ばしたボブカットの黒髪から一房、青緑色のメッシュが覗く。切れ長の黒い瞳。すっと通った鼻筋。微かに笑みを浮かべた唇。薄いグレーのタートルネックや黒いズボンにしなやかな身体の線が出ている。性別は分からないが、とにかく美しい。
思わ