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【ショートショート】声薬

いわゆる美声と悪声って紙一重かなと思う。
歌手とかでも特徴のある声の人もいるが歌手になる前は変な声だと言われていたとか。
要は印象に残るかどうかなんだよね。
で、私もそんな印象的な声の持ち主だったと自覚したのは良かったんだけど…。


私は前述の通りというのか変な声ではあると自覚していた。
可愛い声なら良かったんだけど、陰キャだったのもあって、普段はあまり喋らなくて、ボソボソ声で通っていて、でもたまに大きい声を出したかと思うと素っ頓狂な声になったりもしたから、自分の声にコンプレックスを持っていた。
でも、私の好きになったアニメの声優さんとか推しのVtuberさんたちを見て、推し友から
「アンタ、面白い声してるね」
なんて言われて調子に乗っちゃったのか、
そっか…変な声イコール個性的な声…ってことでイケんじゃね?
なんて思ったりしたのが…どうなん?


で、声優のコースのある専門学校に体験入学に行った時のこと。
講師の人にも
「キミ、面白い声してるねー、うん、素質あるよ!」
と言われて、一緒に行った友達ともらったペットボトルの水を飲んでいたら
その場で倒れて、目が覚めた時、私は一粒の薬になっていた。


「あ!やっぱり薬になった!声もイイし、薬になっているし、僕の見抜いた通り大いに素質あったね!」
一粒の錠剤になった私に講師だと思っていた人の薄気味悪い笑い声が響いた。
抵抗も何も声も出せない私に、
「さっきの水にねェ、イイ声の素質のコには、声だけの存在として薬になってもらえる成分を入れたんだァー、幸か不幸か友達は薬になれなかったから、記憶を消してから帰ってもらったがね…」
ちょっと何言ってるか分からない…。
「まあ、くどくど説明するより、他に薬にしたコのを飲んでみよう」
すると、どうだろう。急に講師(仮)の声が可愛らしく変わった。
そうなのよねェ、と言うことは…でも大丈夫、大丈夫!ボクは飲まないから!代わりに見てくれはイイけど声に特徴がなかったコがいるから、そのコに飲んでもらって声優として売り出すから!


そして結局、その声優志望のコに飲み込まれて、そのコの声になった私。
が、当初の売り出し方針と食い違ったのか全く声優としては売れず、
しょうがないなァ、別ルートにでも売ろうかなァー
と講師(仮)に言われて、そのコごと薬にされて
とある詐欺グループの男に飲み込まれて仕事をさせられている。
その男も面白がって、私の声で、荒稼ぎしている。
私の声がこんなところで才能開花するなんて…。



完。



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