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宮沢賢治 やまなし 本質の解明

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謎多き「やまなし」の解明に挑みます。「やまなし」の味わい方を一緒に考えていただけたら幸いです。
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#解明

宮沢賢治 やまなし 本質の解明 12

宮沢賢治 やまなし 本質の解明 12

8 主題はカニの兄弟と父親から見える これまで、「やまなし」にまつわる数々の謎を自分なりに解明しましたが、「この作品の主題は?」と聞かれると、回答に困ります。ただ、主題なので、あまりごちゃごちゃ考えず、基本的には主観的なものでよいのではないかと思います。

 数々の宮沢賢治作品を通してこの「やまなし」に凝縮された思想を読み解くと、様々な主題が浮かんで来るのは当然であります。でも、そこはやはり登場人

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宮沢賢治 やまなし 本質の解明 ⑤

宮沢賢治 やまなし 本質の解明 ⑤

5  父親の存在とその価値 「やまなし」の「五月」の暗さと、クラムボンやお魚、カニの兄弟などの謎について考えてきましたが、私はこの作品で最も重要な人物は、お父さんのカニであると思います。お父さんのカニに着目して「やまなし」全体を捉えれば、比較的容易に主題に迫ることもできるでしょう。そして、この父親像には、宮沢賢治の人柄と理想がにじみ出ているようで、私自身とても好感をもっています。ここでは、そんなお

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宮沢賢治 やまなし 本質の解明 ③

宮沢賢治 やまなし 本質の解明 ③

4 「お魚」の謎 「五月」において、「クラムボン」「カワセミ」と同じくらいに存在感をもつ「お魚」。これについて宮沢賢治は一体何を表そうとしたのでしょうか。やまなしを読解する際に、比較的さらっと解釈されてしまいがちな「お魚」ですが、ただカワセミに食べられるためだけに登場させるのだとしたら、こんなに何度もその行動に言及することもないでしょう。そこにはきっと、「クラムボン」のような深い事情が隠されている

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