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【美術展2024#28】第8回横浜トリエンナーレ@横浜美術館、他

会期:2024年3月15日(金)〜6月9日(日)

横浜トリエンナーレは、3年に一度開催される現代アートの祭典です。2001年にスタートし、200を数える国内の芸術祭の中でも長い歴史を誇ります。国際的に活躍するアーティスティック・ディレクター(以下AD)を毎回招き、世界のアーティストたちがいま何を考え、どんな作品をつくっているかを広くご紹介するのが特徴です。
このたび第8回展を迎えるにあたり、私たちは、強みであるこの「国際性」を大切にしながら、次の10年にトリエンナーレがどうあるべきかを考えました。その結果、当初から掲げる「現代アートの良質の入門編になる」という目標に、いま一度ていねいに立ち返ることにしました。

〜中略〜

気候変動や戦争、不寛容や経済格差。私たちの暮らしを支えていた価値が、いま大きく揺らいでいます。見る人それぞれの解釈を許す現代アートの作品は、見知らぬ誰かとその不安を分かち合い、共に明日への希望を見出すためのよき仲立ちとなります。すべてがわかったわけじゃないけれど、新しい扉を少しだけ開けた気がする。会場を訪れた方たちにそんな感覚を持ち返っていただきたくて、横浜トリエンナーレは次の10年への一歩を踏み出します。

展覧会公式サイト


今回のテーマ「野草:いま、ここで生きてる」は、約100年前に中国で活躍した魯迅の散文詩集「野草」にちなんでいるとのこと。
魯迅の「野草」については読んだことがないので内容はわからないが、サブテーマも含めて私感でざっくり意訳すると「雑草のように虐げられながらもなんとか踏ん張りながら生きてる人たちの主張を集めてみたよ」と言ったところだろうか。

わたしたちの社会は今、資本主義の暴走に起因する戦争や気候変動、経済格差や不寛容など多くの問題を抱えています。ADの二人は、その拠って来たるところを100年前の魯迅の時代にさかのぼって探り、未来を切り開く手がかりを共に見出そうとわたしたちに呼びかけます。

「ごあいさつ」より

「ごあいさつ」にはこのように記されているが、資本主義の暴走と言われてもそもそもこの展覧会も莫大な資金や税金が投入されて成り立っている。
ある意味この展覧会だって資本主義の暴走だ。
そして世界の諸問題はそれだけに起因するものでもないだろう。
主催者として先頭に名を連ねる横浜市はこれでよかったのか?
どの役所レベルでの決裁なのだろう。

会場入口すぐから絶望感に満ちており、広い空間全体になんとも言い難いどんよりとした雰囲気が漂っている。
感覚的にしっくりこない。
これが今の世界の縮図だというのか。

国際性ってこういうこと?
多様性ってこういうこと?

日本で暮らしていれば、とりあえず明日生きるか死ぬかの心配はしなくてもよい人がほとんどだろう。
もちろん物価は年々上がるが給料は上がらないし、税金はたくさん持っていかれるし家のローンや子供の学費などあるし…皆が皆決して楽な暮らしなわけではない。
だが、さすがに明日飢え死にはしないだろうし、明日ミサイルが飛んできて街が焼け野原になることもまあないだろう。(某国の動向次第でありえなくはないが)

色々大変なことはあるけれども、たまにはそれなりに楽しいことや幸せなこともあるし手の届く範囲でなんとかやりくりしながら慎ましく生きている。
そんな人が大半なのではないか。

時にそれは平和ボケと言われることもあるがそれの何が悪いんだと思う。
常に何かと戦ってなければいけないのか。
むしろ世界がおかしいだろ。

今展は古今東西のマイノリティの小さな声に焦点を当てているのだが、どうも全体的に否定や批判や主張や抗議等の暴力的で反体制的なスタンスが強い。
もちろん声を上げなければ何も始まらないが、声高に多様性を主張する人は果たして自分以外の相反する意見を前にした時に、それを多様性のひとつとして理解し受け入れる覚悟はあるのだろうか。

魯迅の時代から100年経つが、結局今でも暴力でなければ未来は切り開かれないのか。
そもそも大前提として戦争や差別なんか良くないなんてことはみんなが思ってることではなかったのか?

もちろん中には良質な作品や深く考えさせらる作品もあったと思う。
だが個別の作品に対してどうのこうのいうイベントでもないだろう。

今回の展覧会全体を俯瞰して思ったこと。
私はアートの暴力を投げつけられるのでなく、アートを通して対話をしたい。
そして小さな気づきを得て手の届く範囲の世界を少しだけ幸せにしたい。

あとせっかく中国人がアーティスティック・ディレクターだったのだからそれこそチベットとかウイグルの現状を世界に訴える良い機会だったはずなのに、それには全く触れずに、結局戦争とか差別とか不寛容とか経済格差とか資本主義がうんぬんとか、ざっくりしたことをがちゃがちゃとそれぞれの立場から物申す雑多な主張ばかりが目についてしまった。

ある意味これが世界の縮図といえば縮図なのだが。

国際性ってこういうこと?
多様性ってこういうこと?

その状態はまさに「野草」そのものだった。


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