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【青年海外協力隊ベトナム日記 2006〜08】 第19話 任国外旅行②チベット:ラサ

現在、勤務先の大学は長い夏休み。
その期間を利用して久しぶりの海外旅行中だ。

中国雲南省の麗江に3日間滞在した後、昆明へ戻る。
その足で旅行会社へ。
無事チベットのパーミット取得。
翌日の早朝、飛行機で昆明からラサへ。

3年前はネパールのカトマンドゥからヒマラヤを越えて5日間かけて陸路でラサに入った。
途中標高5,000m以上の峠をいくつも超え、高山病に苦しんだ。
季節は8月だったにもかかわらず標高が高いため場所によっては雪が降っていたりしてフリースとゴアテックスジャケットを着ていても寒かった。
だが昔からあこがれ続けたラサの町が見えてきたときにはそんな苦労も一気に吹き飛んだ。


今回は飛行機で空から一気にラサに入る。
航空券は高かったが仕方がない。
前回の長旅時は時間がいくらでもあった。
だが今回はラサ滞在6日間しかない。
時間が限られているため金で時間を買うのだ。

チベットの省都ラサの標高は3,658m。
富士山山頂とほぼ同じ高さに町がある。
平地から一気に3,000mを超える高さの場所へ入ればやはり高度順応できず、一般的に2、3日は高山病に悩まされる。
しかしこれも仕方が無い。
世界で一番天空に近い国へ入る通過儀礼だ。

到着後ゆっくりとラサの町を歩く。
3年前には無かった鉄道の駅がついに完成したらしい。
ここでも麗江同様やはり以前に比べ漢民族旅行者が大量に増加していた。

江沢民が掲げた中国国家プロジェクトの「西部大開発」は着実に進行している。
それに加え2008年に控えた北京オリンピックもある。
この町も今後さらに「大開発」に拍車がかかることは間違いない。
そして元からあるチベットの美しい自然や景観は加速度的に減少していくだろう。

オリンピックのための聖火リレーでエベレスト山頂を通るプランを中国は計画中だとか。
中国によるチベット支配をアピールするためだろうか、元来この地に住むチベット人、ネパール人にとっての聖なる山への冒涜はもとより、環境問題の面からも世界中の環境団体、学者、登山家、宗教家などから数多くの反対意見が出されていることを果たして中国政府は真摯に受け止めることができるのだろうか。

生きていくための最小限の環境破壊は仕方がないのかもしれないが生態系を破壊するほどの本来必要の無い大規模な開発は果たして「開発」と呼べるのだろうか。
それは何も産み出すことの無いただの「破壊」でしかないのではないか。
昔からこの地に住むチベット人は様々な抑圧を受けながら漢民族による漢民族のための開発をいったいどのように見ているのだろう。


ダライラマ14世は言う。
「環境を大切にすることを、我々の日常生活の一部とするべきです。自動車を利用したり、電気や水を利用する時はいつもエネルギーや資源の保護のことを思い出してください。自然を支配できるなどという間違った考えを持った人間に世界の資源を浪費させてはなりません。現代に生きる私たちは、未来の世代の人々に十分な資源を残しておく道義的責任があります。」

主不在のチベットにはこれから先どのような未来が訪れるのだろう。

続く ↓

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