見出し画像

【美術展2024#58】神護寺 空海と真言密教のはじまり@東京国立博物館 平成館

会期:2024年7月17日(水)~9月8日(日)

京都北郊の紅葉の名所、高雄の神護寺は、和気清麻呂(わけのきよまろ)が建立した高雄山寺を起源とします。唐から帰国した空海が活動の拠点としたことから真言密教の出発点となりました。本展は824年に正式に密教寺院となった神護寺創建1200年と空海生誕1250年を記念して開催します。平安初期彫刻の最高傑作である国宝「薬師如来立像」や、約230年ぶりの修復を終えた国宝「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」など、空海ゆかりの宝物をはじめ、神護寺に受け継がれる貴重な文化財をご紹介します。

東京国立博物館


今回のトーハク特別展は「神護寺 空海と真言密教のはじまり」。
ヒンドゥー教の神々が登場したり、チベット仏教との繋がりが深かったりと、インド・チベット好きの私は昔から真言密教は気になっていた。(とはいえ別にそれほど詳しいわけではない)

神護寺には国宝重文がたくさんありその多くは普段は各博物館に寄託しているが、今回(時期はズレるが)国宝17点が上野に集結するとのこと。
これは絶対見逃せない。

※展示室内は撮影不可のため写真は公式図録から



【国宝】灌頂暦名  神護寺 平安時代

空海直筆の灌頂の記録。
ぱっと見メモ書き程度な雰囲気すらあるが、これが真言宗の創世記。
今から1200年以上前のものがよくまあこんなに綺麗に残っているものだ。
空海なんて(ワタシ的に)ほぼ想像上の幻の人物みたいな存在だったが、こういうのを見るとああ本当に実在したんだなあと胸アツになる。
最後のパズルのピースがぱちっとハマるような感覚。



【国宝】両界曼荼羅(高雄曼荼羅)  神護寺 平安時代

金剛界曼荼羅

江戸時代以来、約230年ぶりに修復されたという現存最古の超貴重な両界曼荼羅。
今回の修復は2016年から6年の歳月が費やされたとのこと。
会期時期により展示されている品が違ったが、私が行った後期は金剛界の方が展示されていた。
空海が唐から持ち帰ったものの複製の複製だそうだが、これ以前の二点は彩色が施されていたのに対し、これは金銀泥で描かれている。

部分拡大

これだってそれほど保存状態が良くはなかったことが伺える。
修復には細心の注意が必要だったんだろうな。
言ってれば凄腕脳外科医の超絶手術みたいなもんだ。
実物は4m四方の巨大な品なので修復の困難さは想像を絶するだろう。



・両界曼荼羅  江戸時代 神護寺 

金剛界曼荼羅

江戸時代に《高雄曼荼羅》を修復した際に模写した原寸大の江戸時代版。
こちらは胎蔵界、金剛界ともに展示されていた。
こちらの図像は描かれた当初のまま鮮明に残っている。
模写といえどもやはり4m四方の巨大な品なので迫力は十分。
掠れた《高雄曼荼羅》の在し日の姿が浮かぶ。



・両界曼荼羅(高橋逸斎筆)  江戸時代 知恩院

金剛界曼荼羅

こちらも江戸時代に描かれた《高雄曼荼羅》の模写。
ただしこちらのサイズは《高雄曼荼羅》の4分の1程。
とはいえ小さいからといって侮れない。
極細の筆でめちゃくちゃ細部まで描き込まれている。
ガラスケース越しの肉眼ではわからなかったが、単眼鏡(古美術鑑賞時必携!)で見ると仏の髪の毛の中にまでびっちりと極小の仏で埋め尽くされていたりとまさに超絶技術。
これはこれでめちゃすごい。



・【国宝】伝源頼朝像  鎌倉時代 神護寺

《伝源頼朝像》

前期には同じく国宝の《伝平重盛像》《伝藤原光能》と共に展示されていたが、私の行った後期には江戸時代の模写である冷泉為恭版が展示されていた。↓

《伝源頼朝像》  冷泉為恭

実は像主は源頼朝ではないかもしれないため伝と付けられているが、いずれにせよ鎌倉時代に描かれた俗世の人物の肖像画ということで超貴重かつ超有名な逸品。



【重文】愛染明王坐像 康円作  鎌倉時代 神護寺

豊かな表情。
しっかりとした造形。
良い感じの色褪せ具合。
否が応にも漂う緊張感。
う〜む素晴らしい。見入ってしまった。
なになに「愛染明王は人びとが持つ愛欲の煩悩を、悟りを求める心へと昇華させる仏」とな。
…わたしのゲスい心の中を覗かれ喝を入れていただいたように感じた。



・【国宝】五大虚空蔵菩薩坐像  平安時代 神護寺

我が国で制作された五大虚空蔵として5躯揃う現存最古の作例とのこと。
なんだか顔がのっぺりしているなあと感じたが、実際に平面の曼荼羅図を元に立体化したものとうかがえるそうだ。
神護寺では並列で置かれているが展覧会では中1体、4体は十字でそれぞれ外を向くように配置されていた。



・二天王立像  平安時代 神護寺

今回唯一写真を撮ることができた。
小松宮彰仁親王の揮毫と共に立つ二体の守護神。



・【国宝】薬師如来立像  平安時代 神護寺

神護寺のラスボス。
御本尊の薬師如来立像は展覧会でも最後のブースに登場。
左右を日光月光菩薩立像に護られ、後陣に十二神将立像を従えて立つその厳しい表情の御姿はまさに天上天下唯我独尊。
また照明の当て方や展示の仕方が上手いんだわ。
博物館での展示の際は通常見ることができない背面を見れることが多いので造形物としてフムフムと観察してしまうが、そもそもこれってなんか失礼なことだよな、といつも複雑な気持ちになる。(が、やはりマジマジ見る)



トーハクの特別展に来るたびに、もっと歴史の勉強をしておけば良かったという反省、日本文化の重厚さ奥深さへの畏怖、学芸員の仕事量へのリスペクト、そしてよ〜しおじさん今日から勉強し直すぞ〜という前向きなやる気などが入り交る。

早速こんなの買ってみた

イラストでサクッと理解しちゃうぞ~。

この夏、久しぶりに京都へ行ったがスケジュールの関係で遠出はできなかった。
次回はぜひ神護寺まで行ってみよう。
あ〜日本人で良かった。


【美術館の名作椅子】 ↓


【美術展2024】まとめマガジン ↓

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?