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まったく健康じゃなかった日の健康診断

昨日は健康診断の日だった。去年、自営業の我が家も健康保険に加入したので、協会けんぽが指定する医療機関の中から、都合が良いところを探して受けに行く。昨年いろいろ調べ、選んだのはヘルチェックという事業者。

ターミナル駅のそばに施設が設置されているので、アクセスがいい。そして最大の決め手は、レディース専用の施設があることだ。だが、昨年は予約が先々まで満タンだったので、待ちきれずに男女混合の施設に甘んじてしまった。リベンジしようと意気込んでいたのに、気づけば1年まわってる。諦めながらも、やっぱり先々まで満タンの予約サイトを眺めていると、ポツンとひと枠空きがある。しかもその日は、弟の延長保育の日ではないか。決定!

ひとつ不安があった。予約時間が11時20分なのである。今までそんなに遅い時間の健診を受けた経験がない。某正義の味方のように、お腹が減ると力が出なくなる自分としては、腹減りで電車に乗り、都会に出ることが少々心配だった。でも、この枠を逃したら年末まで待たねばならない。焦った9月初旬、ポチりと予約ボタンを押した。

その日が、昨日だった。

木曜はお弁当があるので、早朝から活動せねばならない。腹減りが心配だ。前日の夜、19時ごろ夕食を摂り、水以外の飲食禁止となる22時直前に、チーズトーストとチョコレートを頬張った。よし、これで大丈夫。

木曜の朝。良かった、お腹は減っていない。お弁当作りと朝の家事をすべてこなし、兄を小学校へ送り出し、弟を連れて幼稚園へ行く。帰宅後、出発まで1時間もある。検便を済ませるため、大量の白湯を飲みながら在宅仕事をこなす。出発直前にお待ちかねの便通が来た(すみません)。

ホッとしたところで、ようやく出発時刻。2月から数えて、電車に乗ったのは3回ほどである。そういえば、最近の新宿のコロナの感染状況はどんなだろ。アプリを開いて見てみると、感染履歴のあることあること。行動に気をつけねば。ピリッと緊張感が走った。

電車のドアが空き、新宿の街に吸い込まれる。緊張するなぁ。便通があったからか、お腹も少し減ってきた。水筒に入れた白湯を飲む。目的地まではそう遠くない。まぁ、大丈夫だろう。

西新宿の高層ビル群を見上げながら歩みを進めると、施設に到着した。受付を済ませ、ロッカーで健診着に着替えて健診フロアーに出る。昨年も思ったが、ここには本当に大勢の人が来ている。ソーシャルディスタンスが取れるよう人数を減らされているが、それでも人は多い。今年は沢山の人がいるところに慣れていないので、ちょっと人酔いしている気がした。

椅子に座り、呼ばれるのを待つ。ひとつの健診項目ごとに自分の番号が呼ばれ、終わると再びフロアーの椅子で待つ。そしてまた次の健診項目に呼ばれ…という流れ。まわる順序は自分では決められない。

最初は血圧だった。私は昔から低血圧だ。1回目は100あったのが、2回目は85になっている。でも間をとって90幾つで、大丈夫なのだそうだ。良かった。お腹が減っているからしょうがないな。次は採血だそうだ。

腹減りだし、来るバリウムに備えて水分も取れない。少し頭がぼんやりしながら採血の席についた。「どちらの腕にしますか?」と聞かれたので、利き腕と逆の「左腕で」と答えた。止血ベルトを巻き、血管を確認する看護師さん。その間に、「私、いつも右腕で採血していたかも…」と思い始める。看護師さんは血管位置をさすりながら、アルコールで拭き始めた。「大丈夫なのね」と、身を預けることに決め、黙ってされるがままにプスリ。血は出てこなかった。グリグリされる。痛い。でもやっぱり出ない。

「申し訳ありません!ご気分大丈夫ですか!?」と看護師さん。ぼんやりが続いていたが、気分が悪いわけではない。「気分は大丈夫です。じゃあ右腕でお願いします」と即答する。なんでも良いので、早く終わってほしい。だが、看護師さんはかなり慎重になっているご様子。ゆっくりゆっくり血管を確認しながら、刺す位置を探している。徐々に気分が悪くなっている気がしてきたところでプスリ。2回目は一発で出てきてくれて、採血完了。

「ご気分大丈夫でしたか!?」と再度確認されるも、終わった安堵感もあっり「大丈夫です」と答えた。立ち上がって待ち合いの椅子に向かう。着席するや否や、全身から冷や汗が出てきた。目の前がテレビの砂嵐みたいになっていく。まずい、貧血だ。近くにいるスタッフさんにやっとこさ声をかけると、「今、看護師を呼びますのでお待ちくださいね」とのこと。少し待たねばならぬことにガーンと来て、ますます目の前が暗くなっていった。

看護師さんが到着すると、「すぐそこに横になれる場所があるので、移動しましょう。車椅子持ってきますね」と言われた。こんなにも体調が悪いのに、車椅子に乗るのは仰々しいよ、と思ってしまう。「大丈夫です、すぐそこなら歩けます」と言い、歩き出したところまでは覚えている。が、次に目を覚ましたときには床の上にいた。

「意識が戻って良かったです!外傷はありませんから大丈夫ですよ!」

えっ!意識失ってたの!?

すぐ水分を摂るために、バリウムをキャンセル。もらった水を飲み、飴をなめ、ソファーに横たわって血流の回復を待つ。ひと眠りしたと思う。かなりの時間が経過し、貧血症状が和らいだところで、健診フロアーに復帰した。

2項目めで失神してしまったので、健診項目はまだたんまりある。朦朧としながら呼ばれる方向へたなびかれ、言われるがままにするだけの健診。いつものパフォーマンスが出せないどころか、すべてが悪く出るとしか思えない。でも、ただただ早く終わってほしかった。私は、バッタリいってしまった人。健診開始時刻からもう2時間半もここにいる。早くこの場を離れたい。こんなにも恥ずかしいの久しぶりだ。

あっちへフラフラ、こっちへフラフラし、バリウム以外のすべての項目を終えて、今年の健康診断は幕を閉じた。お会計は昨年の約半額。バリウムって健診費用の半分も占めていたのですね。こうでもならなきゃ知らなかった。

受付でもらったクッキーをむさぼり食べて、家路に着く。その後も調子は完全には戻らず、昨夜の夕食は惣菜にし、ゴロゴロさせてもらった。

貧血恐るべし。倒れた記憶は今もない。調べてみると、これは脳貧血や、起立性低血圧症というもののようだ。座位から立位になったとき、一時的に脳への酸素供給が不足する症状らしい。倒れて物理的に脳の位置が下がると、急速に症状が緩和するとのこと。失神も理にかなっているのだね。

看護師さんには「急激なストレスを感じてしまったのだと思います」と繰り返し言われたのを覚えている。そもそも低血圧で空腹のところに、新宿に出てくることへの緊張や、採血失敗の悲壮感が加わって、ストレスの応酬を受けていたというわけだ。今後は自分を追い込まないよう気をつけます。くわばらくわばら。

女性専門というのは緊張緩和要素なので、今後もお世話になりたいが、ぶっ倒れた記録はカルテに残ってしまうのだろうか。再び現れたら、また仰々しい対応をされてしまうかもしれない。気を遣わせるのも気兼ねするし、どうしたものか。また1年後、忘れたころに思い出すことにしようかな。


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