酸のあるワインは概念で飲む ~ 酸味教信仰の身につけかた ~ 〈カナダ/リースリング〉
これらの教義を、どこかで聞いたことがあるでしょうか。
みなさん、いかがですか。
酸っぱいワイン、好きですか?
今でこそ、「ちょいアロマティック酸ややつよ塩味系すっきり白ワイン」スキーであり、酸味教信仰者であることを公言(初)するますたやですが、実はもともと「酸っぱいワイン」はあまり得意ではありませんでした。
▶ ちょいアロマティック酸ややつよ塩味系すっきり白ワイン初出記事
「酸っぱい味」自体は平気なのです。むしろ、積極的に梅干を摂取しにかかるくらいには好き。酸辣湯も好き。トムヤムクンも好き。
ところが、ワインに「酸味」を感じると、うっかり「酸っぱい100%オレンジジュース」を飲んでしまったときのような、えぇぇ~この酸っぱみがなければもっと美味しいのに~…!みたいな、どちらかというと「お邪魔」「残念」な感覚になることが多かったんです。
ワインをひとくち飲んで「酸っぱ!」とくちにするのは、それすなわち「酸っぱ!(くて、困ってる)」という意味。
ワインにおける酸味って、わたしにとってはむしろちょっと苦手な要素だったんですよね。
ところが、ですよ。
そんなわたしが、いつしか酸味教を信仰しはじめることとなります。
きっかけは、わたしがワインを常飲するようになってから出会った、ソムリエたちです。
彼ら、彼女らはみなくちをそろえてこう言うんですよ。「酸はワインの命」だって。
「この酸こそが素晴らしいよね」と。
「酸がないワインはちょっとね」と。
そしてここで出て来る、冒頭の教義です。
酸があることは、いいワインの条件なんですよ。なんたって酸の高いワインは、長期熟成が可能な高いポテンシャルを秘めた、素晴らしいワインなんです――
今思えばこれは、わたしを酸味教信仰へと導くための布教活動だったんだな、と思います。気づいたときには、時すでに遅し。
もともと酸味が得意ではなかったはずのますたや。それがいつのまにか、ソムリエ(酸味教の司教様)たちの布教活動によって、酸の「捉え方」が変わっていくこととなったのでした。
いったい、わたしの身に、なにが起きたのか。
わたしが酸味を「美味しい」と感じるようになったワケ。
それは、酸味のあるワインを、「概念」で飲むようになったからです。
・・・・概念で飲む?
たとえば、ひとくち飲んだ瞬間「酸っぱ!」って感じるワインに出会ったとするじゃないですか。
そんなとき、頭のなかで、「と、いうことは、いいワイン」と、呪文を唱えるんですよ。
「わ、このワインけっこう酸味が強いね!(と、いうことは、いいワイン)」
「おお、すんごい、レモンみたいなシャープな酸を感じるわ(と、いうことは、いいワイン)」
「うわ~、まるで梅干しみたいな…(と、いうことは、いいワイン)」
こんな風に、酸の際立つワインに出会うたび、「と、いうことは、いいワイン」という呪文を、ひたすら唱えるんです。
これがいわゆる、酸味修行。ソムリエ(司教様)たちから教わった教義をもとにした、日々の鍛錬なのです。
このような日々を過ごすうち、「と、いうことは、いいワイン」はいつしかわたしの心身に馴染んでいきました。
そして次第に、酸を感じると反射的に「嬉しい」と思うようになっていきます。いやあ、不思議ですよね、だってこうなる前は、「酸っぱくて残念」って思っていたはずなのに…!
今では「酸味」を感じたその瞬間に、「あっこれはいいワインですね!」とくちをついて出てくるほど。
そうすると司教様(ソムリエ)たちは、「よくお分かりですね!」とナイススマイルで褒めてくださいます、えへへ🥰(信仰スマイル)
それにしても、身の上に起こる出来事は捉え方次第でどうにでもなるもんだなぁと、振り返ってみるとなんだか感慨深いです。
食の好みでさえ「概念」で変えてしまえるのだから、ゴータマ・シッダールタが「すべてのことは、ない(諸法無我)」って言ったの、わかる気がするなぁ……!(たぶん違う)
フラット ロック リースリング 2017 [¥3300]
<ワインdata>
国:カナダ 種類:白ワイン(やや甘口) 品種:リースリング ヴィンテージ:2017 生産者:フラット・ロック・セラーズ インポーター:ヘブンリーバインズ
<バランス>
酸味★★★☆☆ 糖度:★★★★☆ 香り:★★★★★
さて今宵の #3000円ワイン は、カナダのやや甘口リースリングです🥂
リースリングといえば、ドイツやアルザスが銘醸地として有名な白ブドウ品種。高い糖度と高貴な酸で、長熟も可能な高級ブドウです。
特にドイツでは、貴腐化したリースリングを使用した「トロッケンベーレンアウスレーゼ」という最高品質の極甘口ワインが作られています。とにかく「糖&酸」のバランスが最高、というのがこの、リースリングの人気さの所以。
ちなみに近年のドイツは、ドライなワインが7割を占めています。適当に手にとったワインが「めっちゃ甘い」ことは少なくなりましたが、それでも強い酸味とほんのりとした甘みのバランスは、ドイツならではの美味しさだと思っています🥰
そんなリースリングですが、今回のワインの生まれはカナダ🍁
こちらのワインをいただいたのは、恵比寿のカナダワイン専門店、ヘブンリーバインズさんです。
▶ ヘブンリーバインズさん初訪問記はこちら
最近ますたや家は、カナダワインをゆるく推しています。
かつて甘口一強だったカナダワインですが、今はドライな造りが主流。品質向上が著しいガメイをはじめ、ピノノワールやシャルドネといった国際品種による醸造、さらには3000円ワインが多いところもカナダワインの魅力です✨
それでは、そんなカナダのリースリング、さっそくいただいてみましょう!
外観は、イエローが強いです。2017年ヴィンテージということで、すこし熟成が進んでいるかもしれません。
でも、なんかこうちょっと、グリーンなトーンも残ってるんですよね。もともとこういう色なのかもしれませんが、ちょっとフレッシュさが残っているというか、まだまだ熟成してやるぞ、といった心意気を感じます。
さて香りを…とグラスに鼻を近づけた瞬間、「わあああ~~ッ!!」って思わず声が出ました。
で、出、出っ…… ぺトロール香だああぁぁ……っっ!!!!!
なにかの… 素材、かな…??っていうくらいの、ポリエチレン的な工業系の香り。すごい。思わず嬉しくなって、笑いながら何度もかいでしまいます。
あ~~~、これ、あれだ、ほら、なんていうんだっけこの香り、ああそうそう、えっと、ぺトロール香だ~~~っ!!!🥰(茶番)
ブドウからできたはずの液体から、こんな香りがするなんてほんとワインって面白いですよね^//^
ちなみに「ぺトロール香」ってフランス語なんですが、これが何かって言うと、「ガソリンの香り」って意味なんだそうです。・・・・やっぱ素材じゃん!!
かつてぺトロール香はドイツのリースリングに出やすいと言われていたのですが、最近のドイツワインはむしろぺトロール香は抑え気味。ここまでペトっているワイン、久々に飲みました。ああびっくりした、楽しかった🥰
ひとしきりぺトロールを楽しんでから、ようやくくちに含んでみます。
・・・・ああっ、うん、甘やか…♡
残糖度は25度ということで、舌の上でしっかりと甘みを感じる味です。
でも、これが不思議なことに「べったべたな甘み」じゃないんでよ。ジュージーな酸がきっちりと乗っかってて、輪郭がダレることがないんですよね。
なんていうか、あまーい柑橘系の果物を丸かじりした感じ。バナナとかメロンみたいな「”甘”に全ぶり」なテイストの果実じゃなく、むしろめっちゃ甘いけどちょっと酸っぱい果物、あれをジュ、と口の中でつぶした感じ。
飲み込んだあとには、レモンクリームみたいな余韻が長く残ります。この、あとを引くクリーミーさとほんのかすかな苦みが、ちょっと癖になる…🍋
熟成も進んでいるため、全体としては角が少なくまろみがあるんですが、糖度25度といわれて「えっ?!そんなにあった?!」と思うくらいには、綺麗なバランスのワインでした。
単純に「甘いな」と思った感覚でいうと、糖度19度だった同じくカナダのエーレンフェルザーのほうが「甘い」って感じました。不思議~!
▶ エーレンフェルザーは糖度19度。
いやほんと、これなんだよな~、単純な糖度だけではわからないんですよ。
そう、まさにこれこそが、ワインにおける「酸」の素晴らしさ・・・・
などと、ますます酸味信仰を強くしたリースリングの夜。
「と、いうことは、いいワイン」
この呪文をこれからも唱えつつ、酸味に迷う多くの民たちに向けて、布教活動に励もうと誓った酸味崇拝の夜だったのでした。
この記事がなんと、100記事めでした!わ~い👏
これからも狭くて深い3000円ワインの世界を楽しく紹介していこうと思いますので、どうかお付き合いくださいませ♪
それではここまでお読みいただいてありがとうございました!記事いいねって思った方、「わたしも酸味教の信者です!」という方は、「❤」を押して「スキ!」してもらえると嬉しいです🍋
3000円ワインをこよなく愛する3000円ワインの民、ますたやでした!(^○^)
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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)。夫婦で1本を分けあって飲みます。2021年、夫婦でJ.S.A.認定ワインエキスパート取得。これからもおいしいワイン、いっぱい飲むぞ~!
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