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AIに仕事を奪われるか否かは、「教科書的学習コストの高さ」よりも「読解力」「交渉力」によって決まるという話

今回は、こちらの2冊の本を参考に記事を書いていきたいと思います。
AI vs. 教科書が読めない子どもたち
交渉力 結果が変わる伝え方・考え方

AI vs. 教科書が読めない子どもたちについては「中田敦彦のYouTube大学」で紹介されているので、動画で概要を把握されたい方はこちらをご覧ください。
【AI vs.教科書が読めない子どもたち①】人間はAIに仕事を奪われる?

・AIが得意なことは、論理、確率、統計で対処ができること
・AIが苦手なことは、意味を理解すること
・AIが得意なことで対処できる仕事はかなり多いが、それを念頭においた業務設計、職種の定義、学校教育や新人研修の見直しは現状なされていない
・「AIが仕事を奪う」という変化に対して、仕事への取り組み方、業務内容、職種、学習内容を見直していく必要がある
・見直していくにあたって念頭におくべきことは、「AIが苦手なこと」「人が取り組むことによって付加価値がつくもの」は何かということ
・人間的なつながりを維持すること、利害関係の調整はAIに取って代わられることはなさそう

というところをアウトラインに書き進めていければと思います。
(そもそもAIとは・・・といった内容については言及しません)

AIが得意なこと、苦手なこと

AIが得意なことは、論理、確率、統計で対処ができること、苦手なことは、意味を理解すること、だそうです。
(詳細は前述の本か動画にてご確認いただければ)

これを仕事に落とし込むと、AIはマニュアル化された定型業務は得意であり、指示が明確でなかったり、都度判断が必要になるような複雑な業務は苦手、という理解で問題ないかと思います。

AI vs 人 における人の課題

AI vs. 教科書が読めない子どもたちでは、「AIで全ての仕事が代替されるような夢のような未来やシンギュラリティは来ないが、AIによって取って代わられる仕事は多く、仕事を奪われる人は多い。また、仕事を奪われた人が新しい仕事を得られる可能性は低く、これまでの技術革新による職業の変遷とは質が異なる。」といったニュアンスの記載があります。

筆者の方が、「仕事を奪われた人が新しい仕事を得られる可能性は低い」と書かれている背景には、調査を通してみえた「読解力の低さ」があるとのこと。

つまり、

・AIは意味を理解することは苦手である(読解力は低い)
・しかし、論理、確率、統計によって「意味を理解しているように思わせる」ことは可能
・人がAIと差別化できる部分は「読解力」であるにも関わらず、AI程度の読解力しかもたない人が多数いる

ということでした。

AIが真っ先に奪いにくる仕事

こちらの記事
AI(人工知能)は仕事を奪うのか生み出すのか|なくなる仕事・新たな仕事【事例あり】
にも記載がありますが、「こういった仕事はAIに奪われる」という予想は実施されて久しいかなと思います。

その中でも特に、

・パソコンに向かって取り組むルーティンワーク
・マニュアル通りに作業をすれば完遂可能な仕事
・代替する際に必要なハードウェアの価格が安いもの

は、AIに真っ先に仕事を奪われる可能性が高いかなと。
(AIに限らず、クラウドなどによる代替の可能性もありますが)

つまり、マニュアルを読む際に高い読解力が必要なく、論理、確率、統計を軸にシステマチックに対処可能な仕事で、代替するにあたってROIが合うものですね。

既存の職種の枠組みだけでは自分の仕事がAIに奪われるか否かは判断できない

これまでの文脈の中で、「私の仕事は◯◯だから、AIに仕事を奪われる・・・」という悲観的な発想は浮かんでしまうかなと。
しかし、個人的には「自分が取り組んでいる仕事を細分化して、AIが得意な仕事とそうでない仕事を仕分けをし、AIが得意としない能力を磨くことに重きをおく」ということが、いまいま対応できる適切なアクションであり、そういったプロセスを経ずに今取り組んでいる仕事から離れるべきではないかなと思っています。

例えばレジ担当者についても、レジ打ち作業だけではなく、(顧客と会話をすることが求められるお店であれば)顧客とのコミュニケーションをどう改善すべきか考えたり(もちろんレジ打ちはきちんと対応しないといけませんが)する、という感じですね。

単に職種という枠組みだけでAIに仕事が奪われる、奪われない、を考えるのではなく、自分が取り組んでいる仕事の中でAIよりもバリューを発揮できそうなポイントがあるかどうかを考え、そこに磨きをかける、というイメージです。

読解と交渉を反復し、改善し続けることの重要性

これまでの記載を前提に、AIが得意としない仕事で、能力として身につけることを意識でき、真似されにくい大切なスキルは読解力と交渉力だな、と考えました。

また、

・学校教育
・新人研修
・AIに奪われないスキルを日頃から意識して身につけるために

というところで、読解と交渉を反復し、改善を継続できるように努力していくことは非常に重要なのではないか?という認識に至っています。

ちなみに、交渉力 結果が変わる伝え方・考え方を読んで、交渉にあたって大事なことは下記かなと。

・自分が何をしたいかを整理し、絞り込むこと
・自分の要望と相手方の要望のマトリックスを作成し、譲れるライン、そうでないラインについてすり合わせること
・譲れるものは交渉のカードとして切ること
・人間関係、ものごと、意思決定のつながりをきちんと把握すること

AI vs. 教科書が読めない子どもたちでは、筆者の方は「こうすれば読解力が向上するという解は見つかっていない」という旨の記載をされていて。
また、少なくとも私たちの年代から若い世代については、読解力を向上させるインセンティブが強くないのも事実かな、と思っています。
読解力が高くなくても生きていけそうな社会や、読解力が高くなくても楽しめるエンターテイメントが多数あることがそう思った理由です。

教育の専門家ではないので、「これをすれば読解力があがる」という解を示すことはできないのですが、自分たちの生きる世界がよりよくなるか考え行動を起こした結果が、きちんと自分たちにいい形でかえってくる、という実感は読解をするインセンティブになると思っています。

また、よりよくしていくためには利害関係の調整が必要になるんですよね。
自分たちが何を実現したいのかを整理し、それによって変更が発生することで関係者は何を許容でき、何は許容できないのか、読み解きながら落とし所を探っていくことは、改善をするための必須スキルだと思っています。

なので、読解力と交渉力は、改善のためのスキルとしてワンセットかなと。

KPI、KGIの達成と、個人の能力開発がリンクしない

仕事に一生懸命取り組んでいると、その時代感にあった能力が身に付く、という状態が会社にとっても、個人にとってもプラスかなと思います。
が、仕事に取り組む上で読解力と交渉力が求められる仕事に取り組んでいる人は多くないのでは?というのが現状の個人的な所感です。

・獲得したい売上や利益
・市場の変化
・市場の変化に合わせた意思決定
・その意思決定をベースとした変更とガバナンスをきかせるための時間や学習コスト

これらは、市場の変化が非常に早く、既にできあがった枠組みを変えるROIがみえないという状態の中で、特に大きな組織においては、その組織を動かす側が主語になっていて、個々人にフォーカスがあたっていないんだと思います。
当然といえば当然ですが・・・。

読解力と交渉力を高める影響力の輪における方針やルールづくりの取り組み

では、読解力と交渉力を身につけるために具体的に何をすればいいのか?というところですが、「影響力の範囲の中で方針やルールをつくる」という取り組みを実施するといいかなと思います。
(大きい組織では取り組みにくく、組織を小さく区切ったり、スコープを狭めることが大事かなと)

方針やルールが決まっていることで安心できること、楽なことはたくさんある(交通ルールなど)と思うのですが、自分が影響力を及ぼすべき範囲について「すでに決まっているんで」「変更はできません」というフィードバックを受けると、思考停止につながったり、モチベーションの低下に繋がったりすると思っていて。

学校であれば校則や、「その教科の知識をどうキャッチアップするか」の方法論、会社であればどう予算を達成するか、どうやって生産性を改善するかなど。
人は現金な生き物で、その状況が自分の努力によって改善可能性があって、自分に利するとわかれば、状況を読み解いて、よくするための交渉を重ねていくと思うんですよね。

・既存の方針はなぜそうなっているのか
・その方針の中で、現状に合うもの、合わないものは何か
・現状に合わないものについて、どういった変更を加えればベストか
・変更を加えるにあたって、実施すべき交渉は何か

を議論することで、読解力と交渉力は高まっていくかなと。
AI vs. 教科書が読めない子どもたちにも記載はありますが、読解力がない人同士の議論は誤った結論に至る可能性が高く危険とのこと。特に学校では、読解力のあるサポート役が必要かもしれません。

教科書的学習コストが高くても、AIに代替されないとは限らない

タイトルで記載した内容について。

大学に進学するとき、偏差値で大学、学科を選択した人は少なくないと思いますし、それはそれで大事なことだと思います。
一方で、それによって獲得した◯◯大学◯◯学部卒業というものは、一部の先進的な教育機関を除いては、「教科書的学習コストを払ったことは証明しても、AIに仕事を奪われないビジネスマンであることは保証しない」という認識に至っています。

どんなに高度な知識やスキルが必要と言われていた仕事でも、パターンが見えたらAIなどにその仕事は委託し、自分はAIに代替されない仕事にフォーカスする、ということをしていかないと、いつのまにかAIに代替される人材になる、という顛末はありえるのかなと。

ちなみに、私が新卒で就職活動をしていたころは、「コミュニケーション力」がキーワードだった記憶ですが、今は「読解力と交渉力」が必要な時代かなと思います。
(当時言われていたコミュニケーション力は、読解力も交渉力も包含したものだったのかもしれませんが・・・)

AI時代に強いビジネスマンは、AIをうまく使いこなせて、人とのつながりを大切にする人

今回の結論はこちらです。

これまでの職種の枠組みは、「専門性」「ビジネスプロセス」「設計か実行か」「マネジメントする側かされる側か」という軸で区切られてきたように思います。

AIは、「この職種は◯◯という仕事をする仕事だから、これらをすべてできるようにする」というわけではなく、「論理、確率、統計の中でAIで代替可能な『タスク』はこれで、その機能はAという職種の◯◯タスクと、Bという職種の◯◯タスクに適応可能」というように、既存の職種の枠組みにとらわれずに、縦、横、斜めなどのいろんな軸で代替していくわけです。
(つまり、設計もマネジメントも部分的に支援してくれるわけです)

なので、自分の取り組む仕事について

・パターン化、マニュアル化されていて、すでに適したクラウドサービスなどが出てきている際は、そのサービスを利用して効率化する
・パターン化、マニュアル化はまだだが、いずれAIに代替される可能性がある業務は、AIによる代替可能性のある業務として注力度合いを下げる
・人との関係を構築する、利害を調整するなど、AIに代替される可能性の低い領域で必要なスキルは何かを定義し、そこでの学習を深める

ということをしてもいいのではないかなと。

そうすることで、AIによる健全な効率化が進み、例えばですが「エンジニア兼デザイナー」「医師兼看護師」といったような枠組みで働く人も増えていくと思っています。

以上、「AIに仕事を奪われるか否かは、『教科書的学習コストの高さ』よりも『読解力』『交渉力』によって決まるという話」
というタイトルで記事を書かせていただきました。

お読みいただきありがとうございました!

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