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読書記録 230321 冲方丁「骨灰」

冲方丁さんの初の長編ホラー「骨灰」

渋谷駅の再開発事業をしているシマオカ・グループの財務企画局IR部に所属する主人公。駅前の高層ビルの地下工事現場について不審なツイートがあり
それを確かめるために地下に降りたところ、そこから嫌な臭いや喉の渇きを感じるようになり、やがて自分の家や家族など日常にも恐怖が忍び寄ってきます。

ホラーと言えば湿気とぬめりという感じでしたが、渇きとか細かい灰という乾燥したイメージだったのが面白いなと思いました。ものすごくホラーという感じではないのですが、引き込む描写はさすがです。

地下の閉塞感や何度も鳴るマンションのインターホン、そして主人公の父がだんだんと存在感を増してきてくるのに関わらず、本人はまったく祟られているという実感がない所なども怖かったのですが、やはり怖いのは人間だなと思いました。

儀式や因習の怖さもありましたが、渋谷の再開発という華やかさの下に、実は東京という土地が持つ歴史があり、そしてホームレスや生活保護などの問題などの現実もあるというあたり、WOWOWドラマとかで映像化したら面白いのではないかと思ったのですが、大手デベロッパーを容易に想起させる内容なのでOKでないかもしれないですね。

大火に震災、空襲などに遭った東京という場所については、こちらの本も良いかもしれません。こちらもぬめりを感じない湿度低めな文章で読みやすいです。


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