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ふわっと口語で愉しむ『言志四録』 今週の言葉「172 変化が基本」+chat「変わらないよさは本当か?」


172 変化が基本

この世の中は
変わることによって成り立っている。

わたしたちの仕事や考えも
変化させることで成り立っている。
(言志録 172天下之体)

◆◇ ◆◇ 訳者の蛇足 ◆◇ ◆◇

(変化を畏れることはない)
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これまでの言葉は↓
ふわっと口語で愉しむ『言志四録』まとめ

 佐藤一斎および「言志四録」については、こちらをご参照ください

【ご注意】勝手に現代口語に訳すというか、かなり著者なりの言葉になっていますので、ご興味を持たれたら原典にも触れてみてください。

参考:講談社学術文庫 川上正光訳、岩波書店 日本思想体系46「佐藤一斎 大塩中斎」(1980年5月23日第1刷)

M&Aオンラインの著者連載コラム
「M&Aに効く『言志四録』」
「M&Aに効く論語」

chat「変わらないよさは本当か?」

「変わらないね」とか「変わっていない!」と喜ぶ一方、「変わってる」とか「変わっちゃった」と悲しんだりもします。
 世の中は変化するものだとすれば、いい変化と悪い変化があるのかもしれないけれど、変わらないことにはそれほど利点はなさそう。
 ですが、私たちは「変わっていないね!」とうれしくなるのです。
 ChatGPTによれば、変わらないことの喜びは、安心感や信頼感。あるいは持続力への評価。ノスタルジア。愛着、といった要素からくるとのこと。
 自分との対比で、自分は変わってしまったので、世の中もすべて変わってしまったかと思ったら、「変わっていないものを見つけた」と喜んでしまうことがありそう。
 私はジャズが好きで、ビバップからモダンジャズの初期が特に好きですが同じぐらいフュージョンも好きです。ジャズに対する思いを述べた文章などを散見すると、ジャズは「進化する」らしいのですが、それは同時に「ジャズじゃない」へと変化する。ジャズにあるブルースの心は変えてはいけないが、かといってR&B(リズムアンドブルーズ)のようなポップなものもダメだと否定する声があったりして、私にはホントにこうした論考が無意味に感じられてなりません。
 進化してもいいけど、変化はダメだというのでしょうか?
 ChatGPTによれば、ジャズについて言うと、伝統と同時に今日性も求められ、アーティストの個性や商業的な成功によって、多種多様な変化が起きているために進化や変化について多種多様な意見・評論が出るのだそうです。
 つまり、ジャズに限らず、私たちは二つの路線によって意見を変化させていく傾向があることに気づきます。
 ひとつは伝統。変わらないことのよさです。もうひとつは、進化。これまでにない変化が常に求められています。そして、この二つの路線は、さらに二つの力によって日々ブレていきます。つまり自分の考え(エゴ)と大衆の考え(マス)です。
 現代は利益優先であることが多いため、商業的な成功は大衆の考えに基づいているとみなされます。成功しているんだから、正しいんだ、というわけです。
 変化や進化を求める自分がいる、あるいは否定する自分がいる。どっちでもいいのですが、それが世の中でどういうポジションになっているかと考えると、大雑把に言って、「多数派」と「少数派」です。
 多数派でいたいのなら、商業的に成功している考え方を支持した方がいい。多数派が伝統を重んじるなら、変化や進化はいらない。この場合は変化を求めたり進化を求める人は少数派となります。
 こうなると、「変わらないね」の変わらないよさは、商業的な成功(あるいは多数派の意見)に支えられていることになります。価値観ってやつですね。この価値観そのものが時代で変化します。というのは、声の大きい人たちの層(年齢層)は、年々スライドしていくからです。
 変化や進化を重視する世代が増えるか、伝統を重視する世代が増えるかは、おそらく教育を受けている間に醸成されると思うので、変化や進化であまりいい思いをしていない世代は、伝統や安心感を重視するかもしれない、といった仮説は思いつくでしょう。
 つまり、絶対的な価値観ではなく、ゆらいでいくのです。
 このゆらぎがどう変化するのかは予測しにくいところでしょう。でも価値観は変化するなら、いくら伝統を重視したところで、徐々に変化はしていくことになり、結果的に変化はしてしまうものだ、と言えなくもありません。
 だったら、あらゆるものはどうせ変化する。だからこそ、変化しないものは貴重だ、と考えることもできます。
 変化していないだけで喜ぶのは早い、という気がしてきますよね。貴重だけど、それは本当に喜んでいいことなのか。それを喜ぶ自分はいま、どういう価値化感なんだろう、と考えてみるのもいいかもしれません。