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AIとBIを広めるための権謀術数

近頃耳慣れた言葉に「AI(ロボットを含む)」と「BI(ベーシックインカム)」というものがある。おそらく大人であれば一応の意味くらいは知っているはずだ。AIは人工知能でいろんなことを自動化してくれる便利なプログラム、BIはベーシックインカムの英語の頭文字で、景気対策として、もしくは社会保障を簡素にし役所の水際作戦などでセーフティーネットなどから漏れてしまった人を救うため、毎月誰にでも定額のお金を配ろう、という制度、位の認識の人が多そうだ。確かに間違ってはいない。だがこのAIBIという2つのものは、既存の社会を破壊してしまうようなとても大きな力を秘めている、ということはそれほど語られない。AIとBIの本質は労働からの開放が成し遂げられるのではないか?という点にある。

AIとBIが導入された後の社会というのは、今までとは全く異なることが考えられる。働かなくて良い社会、あるいは労働時間がとても少なくて良い社会というのは、今の労働に朝から晩まで、新年から年の瀬まで一日中一年中支配されている体制の終焉ということになる。私たちは大多数の庶民が長いこと夢見てきた、賃金奴隷制度からの開放をついに達成できるかもしれない最初の世代になり得るということだ。これは「変化」ではなく「革命」と言ったほうが正確に物事をあらわわしているように見える。だがその「革命」の炎は未だに大きくない。せいぜいネットの一部で熱心な支持者たちが仲間内で熱く語っているくらいなものだ。世間との温度差はいかんともしがたい。

言っていることが現実離れしているからだろうか? たしかにそれもあるかもしれない。たとえばシンギュラリティー論というものがある。詳しい説明は省くが、早い話が、2040年代にも訪れると言われる、コンピューターの性能がものすごいことになる特異点のことだ。言葉だけなら知っている人も多いと思う。だが信じているだろうか?あと20年ちょっとでそんなSFみたいなことになるの? と首をかしげている人も多そうだ。

またBIの支給額などについても同類で、月10程度ならともかく中には「月30万円支給しろ」などという現実離れしたことを大真面目で主張する連中もいる。ちなみにそういう人間に「財源はどうすれば良いんですか?」と尋ねると、ほぼ確実に「日銀がすればいい」「日本はいくらお金を刷っても破産しない」という「反緊縮カルト」お決まりの文句が帰ってくることになる。

こういう人たちがAIBIの普及に対して懐疑的な見方を世の中に広めている可能性もある。カーツワイルのような前者ならまだともかく、後者はやたら攻撃的で不愉快になることが多い。

支持者が突飛なことばかりを言っているから信じられない。そういうこともそれなりにあるだろうと思われる。だが、一番の原因は別のところになると思っている。それは現代日本人が現行体制に対して「愛着」を持ちすぎているのだ。

ロシア革命の父レーニンは「革命を成功させるには、国民の祖国に対する希望を奪ってしまうことだ」と述べた。真っ当なAIBI支持派も同じことをするべきではないのか。どういうことかというと、日本人はなんだかんだで現在の社会体制にしがみついている人がおおいからだ。現行体制にしがみついている人が多いということは、それだけ積極的に世の中を壊そうとする人が少ないことを意味する。なので、今の日本がどれだけ腐りきっていて根の深い問題ばかりであり、抜本的な大改革を施さなければ将来に渡ってもこの苦しみから永遠に逃れることが出来ない、ゴミのような国家社会であるということを国民(特に年若い人や社会的立場のない人々)に吹き込んでしまうのである。無論あることないこと大げさにいいたてて。

無論当時のロシアと原題の日本では状況が異なるので、難易度については違いはあるだろう。当時のロシアは帝政の腐敗や対外戦争などで国民生活は疲れ切っていた。なので革命家たちがちょっと火をつけ煽ってやることで、比較的かんたんに火事を起こすことが出来た。振り返って現代日本はどうだろうか? 少なくとも表向きは平穏さを維持している。少なくとも帝政末期のロシアと同程度に腐敗していてお先真っ暗、というような状態には見えない。

だがちょっと蓋を開けてみると、いろいろ異臭の放つ存在はある。経済的不安を中心に不安の種となるべき事柄は無数にある。なので具体的な話を根拠にして、不安をあおり問題解決のためにはAIBIの存在が必要不可欠ですよー、みたいな方向に世論を誘導していくことができれば、と思う。

たとえば最近最低賃金がそれまでに比べると大幅に引き上げられた。最低賃金の引き上げは労働者の側からするといい話に聞こえるが、雇用者からすると人件費が上がることになるわけで当然嫌なわけである。あらゆる経費の中でも一番の金食い虫は人件費である。なので「最低賃金2000円にします」みたいなことを大々的にぶち上げて、もっと企業に負担をかけるように世論を誘導する。すると企業はとてもそんな給料は習えない(特に中小零細企業は)ので、人員をカットするか、新たに雇うのを止めるか、廃業するかいずれかを選択する可能性が高くなる。商品価格に添加するという方法もありえるが、そうなると売れなくなるし、そうなったらなったで消費者団体や主婦団体に「値上げ反対」の声を上げさせるよう工作する。

念の為、上の話をできるだけ簡素に言うと「弱者のために最低賃金を大幅にあげよう!」みたいな一件労働者に寄り添うような話を世の中に流布することによって、企業側の負担を大きくする圧力をかけ、雇用率を悪化させ、労働者が働きたくても働けない(正確にいえばカネがほしいけどカネを稼げる場所がない)という環境を作り出すのだ。失業者が増えれば増えるだけカネに困る人間が増えるのだから、BIを含む何らかの手をうつ必要が出る可能性が高くなるのではないか、ということである。

ただここで注意しなくてはならないことが一つある。それは移民(奴隷)の存在だ。日本はいまや世界で第4位の移民受け入れ大国に成っている。いくら日本人の労働者から職を奪い社会の不安定化に成功しても、よそから新しい奴隷を連れてこられては意味がない。なので彼・彼女らには「外国人労働者に対する人権侵害だー」などの世の中に受け入れられやすい理由を使って、できるだけ早くお帰りいただくよう訴えかける。もし来るにしても滞在期間が大幅に少なくなるよう様々な方面に働きかけ政策を転換させていくことが必要だろう。

また子供が増えすぎるのもまずい。いうまでもないが子供が大量に生まれてきてしまったら、それは将来の労働力と成ってしまう。もっともこれはあまり心配しなくて良いのかもしれない。人口のボリュームゾーンである団塊ジュニア世代がすでに40代と子供を設けられる対象から外れている。なので今更政府がどんな政策を取ろうとも、日本の人口が将来長期に渡って減っていくのはもはや確定事項である。それに今の若い人には結婚願望や子供を持つという、昭和的価値観のもとでは当然とされてきた欲求もなくなっているそうなので、ここは特にノーマークでも大丈夫だろう。

日本人の労働者の賃金が高くて雇えない。外国人の移民(奴隷)にもたよれない。後残された手段はAI・ロボットしかない。またAI・ロボットが広まるということは、人間の雇用を奪うという意味だけではく、AI・ロボットのような最新技術を導入できない遅れた生産性の低い企業(多くは中小零細企業)を市場から淘汰するという意味でも都合がいい。中小零細企業はブラック化しているところも多く、悪質な事業者を市場から排除できるというよい副作用も期待できる。

もう一つ大切なのは定年制の大幅前倒しである。このあいだ某企業の社長から「45歳定年制」というキーワードが飛び出て、一部を騒がせたことが合った。経営者の立場としては「給料が高いだけでろくに仕事をしないおっさん・おばさんを飼ってる余裕はもはやありませんよー」ということを言いたかったのだろうが、案の定ネット民の基本反応には批判的なものが多く「その年で切られたらどうやって年金まで食いつなぐんだ」という論調が大半だった。これはBI普及のためには都合がいいのではないか。早いことクビになっても食っていかなくてはならない以上、どうにかして収入を得る必要がある。しかし45歳定年制が実施された社会では、45歳以上の人間にそうそう仕事などなく、あっても安い給料のアルバイトくらい。そういう社会に成っていく可能性がある、と多くの日本人が本気で意識すればBI導入も早くなっていくのではないだろうか。

そしてもしBIやAIが導入され、それが幅広く世の中に普及すればすでに述べたとおり労働をしなくても良い「不労社会」が実現する。(現実的には全く労働がなくなるとは思えないので、多くの人は多少なりとも労働することにはなると思うのだが)もしそうなったらどんなによいだろう。別エントリーですでに同じようなことを言っているのでここではあえて詳しく語ることはしないが、恐らく奴隷を使い市民が暇を持て余すことで古代ギリシャ哲学が発展したように、BIで暮らす暇を持て余した人達の手で素晴らしい文化・芸術・学問などが大量に生産される世の中になるのではないだろうか。そうなればBIで暮らしが保証された状態で、ネットにあふれかえる無料の娯楽を消費し、毎日ストレスのスの字も感じることなく面白おかしく暮らせるような世の中に成っているかもしれない。しかも国民のほぼ全員が。これぞまさに昔の人が夢見た理想郷(ユートピア)の実現である。だがそういう理想社会を本当に実現できるのか、実現できたとしても比較的早い段階で掴み取れるかどうかは、我々の意識と行動にかかっている。できるだけ早期に地球をAIとBIによるユートピアとし、毎日やりたくもない仕事をし自由も気力も時間もない、死んだ魚の眼をして通退勤しているサラリーマンや、その他大勢の辛い境遇の人達をできる限り早く救わなくてはならない。そしてそういう人たちを一日でも一人でも多く救うには、我々の声いかんにかかっているのだ。

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