見出し画像

ミュシャの晩年の傑作を求めてプラハへ

 チェコを代表する画家、アルフォンス・マリア・ミュシャ(1860-1939)の晩年の傑作の1つを求めてプラハに行きました。

 目指すはプラハ城。

 ミュシャの最大傑作といえば、チェコの国宝ともいわれる超大作「スラブ叙事詩」壁画級の20枚からなる作品。

 2017年に世界で初めて全作品の展覧会が日本で開催されました。
 
 なんと65万人が観賞しました。

 僕はこの全20作品がチェコ国外に出るとはちょっと信じられませんでした。

 海外での展覧会は、1921年にニューヨークとシカゴで開催されたことがあようだけど5作品のみでしたから。

 財政的に厳しいチェコが仕方なく国外に出したような感じはあるんでしょうね。なんだかんだと日本の国力はすごいです。

 壁画級の巨大な作品でも、巨大な筒に丸めて入れて日本へ輸送する模様がテレビで放送されていました。

巨大な作品でも移動できるものは移動させて、違う国でも展覧会は可能なんです。

 ただ、僕が観たいミュシャの晩年の傑作は、移動不可能な作品です。

 プラハにいかなければ実物は観ることができないものです。

 もちろんネットで検索すれば、写真や動画を見ることはできるけれど、ほんとうの意味での素晴らしさは、現地でなければ観ることはできません。

 それは、光が関係しているからです。

 僕が求めてプラハに向かったミュシャ晩年の傑作は、

 ステンドグラスなんです。

 プラハの中心にあるプラハ城、聖ヴィタ大聖堂にあるステンドグラスのひとつにミュシャの作品があるのです。光の射す加減によって、色彩が変わるので本当の素晴らしさを体験するためには、現地に行くしかないのです。

 プラハの旧市街からヴルタヴァ川にかかるプラハ最古の石橋「カレル橋」を渡って坂を登り、プラハ城の正門を抜けると目の前にそびえ立つのは「聖ヴィート教会」です。

 荘厳な外観には圧倒させられます。

 この教会の中にミュシャのステンドグラスがあります。

 実際この作品を目の当たりにして、僕は、このステンドグラスの前からしばらく動けなくなるぐらい感動しました。豊かな色彩が見事に秩序づけられていて、ミュシャが優れた色彩画家であることがよくわかりました。

 観光客は、意外とサラッと見て通り過ぎていきます。

 ミュシャの作品だと知らないのかもしれません。

 他の国からはるばる来ている人もいるだろうから、「これはミュシャの作品だと」拡声器で宣伝したいくらいでした。

 ミュシャのステンドグラスは、10世紀ボヘミアの王でチェコの守護聖人である聖ヴァツラフ(907-935)の少年時代とその祖母 聖リュドミラを中心に描いています。

 聖ヴァツラフの少年時代のモデルはミュシャの息子イジーです。

 そのまわりには9世紀のスラヴ世界にキリスト教をもたらした聖ツィリルと聖メトディウス兄弟の生涯と事蹟を描いています。

 ヴァツラフ1世は、ツィリルとメトディウスが伝えたギリシャ正教からカトリックに転換してドイツに近づいたわけですが、それによってボヘミアはのちに神聖ローマ帝国内の重要な一翼となることにつながります。
 そのボヘミアの歴史をミュシャはステンドグラスで表しています。

 最上部にはキリストを描いています。

 場所を移動できない優れた芸術作品は、鑑賞する価値がとても大きいです。作品を調べて、旅行の計画を立てて現地までいくからこそ得られる感動は格別です。

 場所を移動できない芸術作品として忘れちゃいけないのは、聖ヴィタ大聖堂の建築も凄いです。14世紀から建築が始まって完成したのが20世紀ですから600年もかかっている芸術作品です。

 また、別の機会に紹介します。

 現在、日本でもミュシャの展覧会が二ヶ所で開催されています。
 ぜひ、この機会に、ミュシャの芸術を鑑賞してはいかがでしょうか。

①東京渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「みんなのミュシャ
ミュシャからマンガへ ― 線の魔術」

今回の特別展で展示されるのは、8歳のころに描いたキリストなど幼少期の作品から、ミュシャに影響を受けた現代のマンガ家作品まで。およそ250点の幅広い作品から、時代を超えて愛されるミュシャの魅力をひもといていくことができます。

みんなのミュシャ〜ミュシャからマンガへ 線の魔術〜
会期 2019年7月13日〜9月29日
会場 Bunkamura ザ・ミュージアム
開館時間 10:00〜18:00(入館は17:30まで)毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)閉館日 7/16(火)、7/30(火)、9/10(火)のみ休館

北海道函館で開催中のミュシャ展ー運命の女たちー
これは、全国をまわっている展覧会ですね。

ミュシャ展 ー運命の女たちー
北海道立函館美術館(函館市五稜郭町37-6 ℡0138-56-6311)

2019年6月29日(土)~8月25日(日)
午前9時30分~午後5時(入場は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(7/15、8/12を除く)、7/16(火)、8/13(火)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?