9日目 風と音楽、お世話になります一般病棟

朝7時頃、整形外科の先生が様子を見に来てくれた。言語聴覚士(ST)さんによる嚥下リハビリは、ぶどうゼリーを食べること。筆談しながらおいしくいただく。創洗浄では、ぐるぐる巻き包帯を外した左手、骨盤の創外固定ぼ金属の棒が体に刺さっている部分を泡で洗ってもらう。看護師さんはボディーソープと水を少しずつビニール袋に入れ、空気をためて袋の口をつかみ、上下に振る。できた泡をふわりと取り出し、傷の指の間で優しく転がして洗う。ドレッシングをいれるようなボトルで水をかけ、清潔なガーゼで水をふき取る。全てベッド上で行われる。ベッドが濡れないように、尿とりパッドみたいなものを身体の隙間に挟み込む。

左手はいつもより少し骨が痛い。皮膚の黄色は落ちてきた(たぶん消毒液の黄色だった)けれど、表面はガザガザで、青黒い。

さて、今日の14時で個室とお別れだ。一般病棟に移ることになった。「回復してる証拠だよ」「よかったですね」。今までの手厚い看護がどう変わるのか不安な気持ちも少しあったけれど、回復の証と言われると嬉しい。荷物をまとめて、いざ!引っ越し!ベッドに寝たまま院内を移動。なんてビップなんだ。

とても、きれいだ。きれいな部屋。大部屋で私の他に3人の患者さんが過ごす。到着するやいなや理学療法士(OT)さんがやってきて、「車いす、許可がでました!」。その手にはすでに車椅子。今朝の回診では可能性をほのめかす程度だったから、まだ先だと思っていた。「外にいってみませんか?」

なんて世界は鮮やかなのだろう!(感嘆)

なんて陽の光はああたたかいのだろう!(感嘆)

風が身体をさらっていくのはなんて気持ちがいいのだろう!(感嘆)

はじめて目が熱くなる。目の奥に苦いような埃っぽいような、雨の降りはじめのような感覚。久しぶりの外の世界をしっかり目に焼き付けて、部屋に帰る。

i-podを家から持ってきてもらった。私は音楽を聴くのが好きだ。入院してから、夜はなかなかまとめて寝ることができずにいたので、音楽でリラックスできたらよいのだけれど。

一般病棟に来て驚いたのは、配茶サービスがあるといこと。吸い飲みにとろみ剤でとろみをつけたあたたかいほうじ茶が用意された。顎の骨折で、噛み合わせがずれているので、コップではなく吸い飲みを使っている。といっても、口が閉じられないから、吸えないのだけれど。角度をつけて少しずつ流しいれるようにして、いただく。

明後日、頬と顎の骨折を整復する手術が決まった。ずれたりくぼんだりして変形した顔が、どこまで治るのか。自分の顔、見る機会がないからいまの顔がわからない。ただ顎の様子が変だということはわかるずれているから。

常にベッド上で過ごすことが、身体的にしんどいとは思わなかった。背を起こして座っていることが多いが、お尻が痛くなる。お腹に創外固定があるので、横にむけない。夕方、整形外科の先生に、あぐらをかいてもいいかきいてみた。座り方のバリエーションを模索しなければいけない。「…できるなら、あぐらでも(骨盤的には)大丈夫ですよ」

創外固定の金具が足にぶつかり、足の組み換えができなかった。残念!


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