見出し画像

恋ってなんだろう。


 恋ってなんだろう。

 生まれてから二十五年。おいおい、今更そんな甘酸っぱい問いを考えるのか? と思う自分もいますが、私にはわからないのです。恋というものが。

 世の中、恋で溢れています。たとえば、なんでもいいです。電車で見る広告でも、大好きなアーティストの歌詞でも、たわいもない会話の中でも。一日一回は触れるんじゃないでしょうかね、恋ってものに。恋愛ドラマ、ラブソング、些細なデート。おそらく恋がない世界なんて存在しないでしょう。そして、誰だって恋をしたいと思う。多分、社会はそう考えているはずです。

 誰かを好きになる。昔は主に異性を好きになることを恋と呼びましたが、今は同性だって、いや、もはや性に囚われなくても、相手に対して好きという感情を抱けば、それは世間的には恋をしたことになります。好きな人を見るとドキドキする、とか、好きな人と一緒にいたい、とか。好きな人を守りたいと思えれば、そして家族になりたいと思れば、それは恋を超えて愛と呼ばれたりします。恋よりも深く、強い絆。人間はしばしば愛を求めて暴走したりしますが、その熱量もまた、愛おしいとさえ表現されたりします。恋愛とは人間にとって必要不可欠な感情かもしれません。

 だからこそ、私には恋がよくわからない。

 小さい頃、私には何人かの好きな女の子がいました。私よりも遥かに強く、頼もしかった女の子もいれば、私に優しくしてくれた幼馴染みもいました。
 ただ小さい頃に抱く「好き」なんて、恋と呼べるのだろうか。今から考えれば、あれは恋というよりも憧憬が混ざった信頼だったのだろうと思います。小さい頃の私は弱く、今よりも遥かに脆い存在でした。そんなときに守ってくれた彼女たちは、私の持っていないものを持っていました。私はそんな強くてたくましい存在を尊敬していたのだと思います。そして私を大事にしてくれた彼女たちに感謝しながら、信頼していたのだと思います。

 果たしてそれは、恋なのか?

 小さい頃の私の周りには、たまたま女子が多かったのですが、例えば彼女たちが男であったとしても、私は同じ感情を抱いたと思います。変な言い方かもしれませんが、私は彼女たちを女性として見ていなかった。だからこそ、そばにいることができたのかもしれません。

 今の私といえば、信頼できる友人が数人いて、彼らは私が持っていないものを持っています。私は彼らを大切な存在だと思っていて、彼らのことが好きです。だけど、この「好き」は信頼している友人に向ける「好き」であって、おそらく世間一般でいうところの「恋」ではありません。小さい頃に抱いた「好き」と、今抱く「好き」、その二つは、同じ色をしています。

 いやいや、蒼日向真澄はまだ本当の恋をしたことがないんじゃないの?

 そう思うこともありますが、二十五年も生きていれば、「この人好きだなあ」と思える存在と出会ったことは幾度かありました。ただ、その人は男性であったり、女性であったり、そのときによって変化するものでした。あるときは男性に対して、あるときは女性に対して、私は恋とも友情ともいえない、複雑な感情を抱きました。仲良くなるには踏み込みたい。だけど、仲良くなりすぎると感情がぐちゃぐちゃになってしまう。恋愛的な「好き」なのか、友情としての「好き」なのか、はっきりしなくなってしまう。そんな葛藤を繰り返しています。

 じゃああれは恋でもなく、友情でもないのか? 

とはいえ、たしかに相手に対して熱くなる気持ちがありました。それが恋ならばさぞかし素敵でしょう。あるいは友情ならば、心から繋がっていたいと思えるかもしれません。しかし、私の相手に抱く感情はそのどちらでもない。だから、自分の気持ちが理解できず、訳のわからないまま、また「恋とはなんだろう?」と解決しない問いを考えてしまうわけです。

 はっきりと「恋」とわかる気持ちを、私は味わったことがありません。飽きやすい性格も相まっているのかもしれませんが、男性に対しても、女性に対しても、抱く感情が変わらないのです。そしてその感情は世間一般的にいう「恋」とも、「友情」ともいえない、その間にあるのかもわからない、不思議な感情を抱くのです。

 言葉が上手くまとまりませんが、おそらく私が恋をすることはないと思っています。というよりも、気づかないまま終わるのかもしれません。誰かを好きになる感情はあるけど、そこに区別はない。カッコよくいえば、私にとって大切な存在は、みんな友達でもなく、恋人でもなく、信頼できる存在ってだけ。そこに境界線はなくて、明確な区分もない。だからこそ、苦悩も多いわけですが。曖昧なのは好きじゃないんですけどね。もっとわかりやすく、彼は友達で、彼女は恋人、みたいに区別がつけば楽なんですけどね。今までの経験からして、どうも分けることができないようです。

 この間、友人とその彼女とご飯に行ったとき、目の前にいた二人の関係性が不思議に思えてしまって。おそらく世間的には普通の関係性かもしれませんが、私にはひどく違和感が残り、もう一度自分を見つめ直すきっかけになりました。今、こうやって文章にしてみると、本当に理解できない性分だと思います。そんな自分を受け入れつつも、戸惑いも消えないのが現状ですね。

 恋をしてみたいか、と問われれば、一度はしてみたいですね。私の目の前いた二人のように、まるでラブソングに出てくる恋人同士みたいな温かい関係を。

 まあ、今の私は大切な人たちと少しでも一緒にいることを生きがいにしていこうと思います。こんな締め方でいいのか、よくわかりませんが。

 それでは、また。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?