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帰郷、甲子園(夏のまにまに)




実家にて、甲子園を見る
そうめんすすりながら
爺ちゃんが応援するのは
地元の埼玉県代表
知りもしない選手の健闘を
かじりつくように見ている
俺は熱心なことだと他人事で
でもまあ 元気そうで何よりと
安堵した気持ちでいたら
九回裏二死満塁
代打で登場一年生
観衆はざわつく
実況も驚愕
解説は疑問視
しかし監督は自身ありげ
さて、どうなるかな?


結果 空振り三振
あっけなく試合終了
あーあとため息を吐く爺ちゃん
そんなもんだよと俺
でもまあ 負けた埼玉県代表は
泣きながらもしっかりと礼をした
いいよな 青春だな
爺ちゃんも満足げだった
なあ、母さん 青春っていいよな
俺たちにもそんな時間があったよな
そういえばあのときも
甲子園を一緒に見ていたな
埼玉県代表を一緒に応援したよな
あのときもあっけなく負けたよな
でも 楽しかったよな 
爺ちゃんはテレビに向かって話しかけている
まるでそこに婆ちゃんがいるみたいに


俺は一人婆ちゃんの遺影がある仏壇に行って
爺ちゃん 楽しかったんだって と呟いた

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