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タイムマシーンに乗って(短編小説『ミスチルが聴こえる』)


 豪快なエンジン音と共に、僕は光の中を走っている。眩しくて裸眼では目が開けないから、分厚いゴーグルを装着している。
「まるで星になった気分だよ」
 隣に乗っているエイジは語尾を弾ませ、光の世界を楽しんでいるようだ。
「どういう仕組みなんだい?」
「それは俺にもわからない。ただ一つだけ言えることは、このマシーンに乗れば過去にも未来にも行けるってことくらいだ」
「もはや、現代科学では説明できない代物だね」
「そうだな。宇宙人ってのは、恐ろしい生き物だ」
 まもなく、俺たちが行きたい時代へ到着するらしい。音声案内装置が稼働して教えてくれる。
「もうすぐだね」
 エイジを見ると、覚悟を決めたようで真っ直ぐと前を見据えていた。
「ああ」
 行き先は、誰もが望む場所じゃない。だけど、俺とエイジには守りたかったものがある。
「1997年、5月21日。一度も姿を見たことがない、僕たちの姉を救うために」
 僕らは突然死んだ姉を蘇らせるために過去へ行く。たとえ、未来が変わって僕らがいなくなっても。

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