ゆりかごのある丘から(短編小説『ミスチルが聴こえる』)
やっと、戦争が終わった。ああ、疲れた。
仲間が大勢死んで、敵も死んだ。勝ったけど、負けた気分だ。
早く帰ろう。これからは、幸子と一緒に平穏な毎日を過ごそう。
だけど、丘の上にある家に帰ると、幸子は別の男と寝ていた。
「あなた」
ショックを通り越して、笑いがこみ上げてきた。そうだよな。俺、随分と戦地に行っていたからな。
「そういうこともあるさ」
風の噂で、幸子は別の男と結婚したと聞いた。そして、子供もいるという。
一方で、俺は独り身のまま。ずっと幸子のことが好きだから、他の人を好きにはなれない。
「愛は、そう簡単に捨てられないな」
俺は笑った。そして、たらふく酒を飲んだ。悲しみすらも忘れるくらいに。
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