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アオマスの小説

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どんな一面にも些細な物語が存在する。それを上手に掬って、鮮明に描いていく。文士を目指す蒼日向真澄によって紡がれる短編集です。
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#短編小説

『骨』  (小説、約14000字)

『骨』 1  死因、骨。  節枝おばあちゃんは、マキオおじいちゃんの死をたった一文字で表し…

蒼乃真澄
8か月前
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そもそも

 真夏日のこと。偶然、一枚の馬券を拾った。大学生の頃は時々競馬をしていたが、今は節約して…

蒼乃真澄
10か月前
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新作のお知らせ

『不思議』 ・あらすじ  「私が放った光の矢が、あなたの心の的を射る」    日曜日、静希…

蒼乃真澄
1年前
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新作の知らせ。

新作のお知らせです。 タイトル 『雨になーれ!』 ・あらすじ     僕はプールが嫌いだっ…

蒼乃真澄
1年前
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ラストシュート(ショートショート)

 試合開始一分前。俺は乾いた喉を水で潤して、この緊張感を落ち着かせる。このサッカークラブ…

蒼乃真澄
1年前
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パチン!(小説)

 午後二時四十五分になると、地元の防災無線を通じて登下校する子供たちが安全に帰宅できるよ…

蒼乃真澄
1年前
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必要悪少年

 傘をささず、少年は一人路地裏でタバコを吸っている。 「非合法が俺のテーマだ」  少年は一斗缶にワンカップを置き、「これはスープだ」と言う。灰色の水たまりに沈んでいるオレンジジュースの空き缶は潰れている。野良猫が落ちている焼き鳥の缶詰を舐めていて、エロ本は破かれた状態で死んでいる。何もかもが無残で、しかし生き物の匂いがしている。 「どうだ、調子は?」  俺が訊くと、少年はつまらなそうに笑い、「まあまあだ」と答えた。 「良くも悪くもない、ってことか?」 「この情勢の中なら、よく

かき鳴らす六弦『Night Walker』

 私の歌が誰かを変える。はず。    一人のサラリーマンが立ち止まってくれた。私は一礼して…

蒼乃真澄
1年前
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俺の飯『Night Walker』

俺の飯  この街は飯屋で溢れている。ラーメン、焼肉、カレー、唐揚げ、居酒屋、カフェ。コン…

蒼乃真澄
1年前
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サヨナラ、日曜日 (過去作小説)

 僕は日曜日の午前中になると、決まって近所にあるカフェ、『ブルーノ』へ行く。シックで落ち…

蒼乃真澄
1年前
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ドッヂボールで逃げ回る天才(短編小説)

 ボール、来る。運動神経抜群の男子から、ボールが放出される。僕はそれを避ける。  ボール…

蒼乃真澄
1年前
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フットボール観戦の合間(短編小説)

「なあ、清水」  フットボール観戦の合間、中村は僕に声をかけてきた。神妙で、物憂げな雰囲…

蒼乃真澄
1年前
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短編小説 『沙代莉のラジオ』 9

「皆さんこんばんは! 今日も横浜の海風を浴びて元気に生きています、沙代莉です!  このラ…

蒼乃真澄
1年前
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短編小説 『沙代莉のラジオ』 8

 安藤光と小林沙代莉は、高校時代に運命的な出会いをした三ヶ月後に付き合い始めた。僕が知る限り二人の関係は良好で、仲睦まじいカップルとは二人のことをを指すのだと本気で感じ、多少羨望する気持ちさえあった。  しかし、二人の中はジェンガの如く突然、いや、もしかすると僕が知らないどこかで傾き、揺らいでいたかもしれないが、沙代莉が妊娠したことで終わりを告げた。  沙代莉は高校三年の夏に妊娠した。同じ学年の生徒は受験勉強に本腰を入れるタイミングで、青春真っ盛りだった子供から、大人の階