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僕らがMasstery部を立ち上げた理由 #2

皆さん、こんにちは。
高速検索の会社、フォルシア株式会社のMasstery(マスタリー)部でエンジニアをしている光山です。

同じくMasstery部に所属する六車さんの『僕らがMasstery部を立ち上げた理由 #1』に続く第二弾として、『僕らがMasstery部を立ち上げた理由 #2』を投稿させて頂きます。

Massteryは「誰でも簡単に操作できる、プログラミング不要のデータクレンジングツール」です。

今でこそ10名弱のメンバーで構成されているMasstery部ですが(人数が増えたことで加速度的に仕事が進むようになった感覚があります!)、Masstery部発足当初は六車さんと私の2名だけでした。六車さんがセールスや社内外の調整含めまさに「CEO = Chief “Everything” Officer」ばりの八面六臂の活躍をしてくれて、私がひたすら開発を進めるという役割分担でした。
第二弾はエンジニアならではの目線で
・なぜMasstery部を立ち上げたのか
・なぜ新規事業に挑戦したのか
をお話させて頂ければと思います。

六車さんの『僕らがMasstery部を立ち上げた理由 #1』の記事とは重複する内容もありますし、異なる視点の内容もあります。ぜひこちらとあわせてご覧頂けると嬉しいです。


商品データの質を高めることは、身体の体幹を鍛えるようなもの

Masstery部を立ち上げる直前、私は検索エンジニアとして(弊社は元々高速検索技術に強みのある会社です)、工具や消耗品などの間接材や研究機器を取り扱う商社様のECサイト開発プロジェクトに関わらせて頂いていました。
弊社では、より良い製品を開発するために、エンジニアも直接お客様と仕様についてディスカッションをすることがあります。このプロジェクトでも(当時はまだテレビ会議という選択肢がなかったこともあり、)私は毎週出張をしてお客様と議論を深めていました。

その際、特に力を入れて開発をしたのが「スペックでの絞り込み」です。「スペック」とは、例えばドライバーであれば「刃の形状」「刃のサイズ」「軸長」などの、その製品の仕様を指します。
これがファッションのECサイトであれば、画像を見て気に入るかどうか、すなわち主観での評価が重要になります。(もちろんサイズや価格など客観的指標も重要ですが。)
一方、業務で使用する間接資材については、所望の数値に完全一致する商品を購入する必要があります。「本当は1mmのネジを買いたいけど、無いから2mmでいっか」のような妥協は通用しません。雰囲気で選ぶことができない世界なのです。そこでECサイトにおいても、いかにスムーズに(少ない操作で)目的のスペックの商品にたどり着いてもらえるか、が重要になります。

そこでスペックの検索性を高めるため、スペックの種類によって以下の検索方法をご提案し、お客様に採用して頂きました。

「項目列挙型(文字列)」「項目列挙型(イラスト)」「範囲型」

「項目列挙型(イラスト)」は、例えば手袋の形状など、文字よりも図示した方が分かりやすいスペックを、イラストで検索できるようにする機能です。
「範囲型」は、料金や長さなど、数値型で特定の範囲で絞り込みたい要望があるスペックを、スライダー形式でドラッグするだけで簡単に範囲での絞り込みを可能にする機能(UI)です。

ーこれでこのお客様のECサイトに求められる「優れたスペック検索」を実現できる。
来るリリース日に胸を躍らせながら、開発を進めていきました。
しかしながら、現実はそう甘くはありませんでした。
確かにスペック検索の「機能」は提供することができました。しかしながら、その機能を実現するためのマスタの整備コストが膨大で、お客様がプロジェクトと並行して行うのは至難の業だったのです。
実際にプロジェクト開始当初のスペック検索用のマスタを見てみると、例えば「長さ」という数値型を期待するスペックに記号や漢字が混入していたり、単位の有無が統一されていなかったりなど、大いに改善の余地のある内容でした。
大変ありがたいことに、プロジェクト途中でデータ整備に注力して頂き、スペックマスタの整備が進みました。しかしながら、300万点以上の商品に各10種類以上のスペックがあるデータのため、人手でのメンテナンスにはやはり限界があり、結局、「優れたスペック検索」の完成形とは言えない状態でのリリースとなってしまいました。

そのような事実に直面して初めて私は
・検索性の向上とデータの質の向上は「車の両輪」であり、どちらか片方では片手落ちであること。
・多くの仕入先から商品データを受け取る商社では、必ずデータ整備のコストが発生すること。その仕入先数が増えるほど、また商品数が増えるほど、そのコストは増大していくこと。
を学びました。

商品データの質を高めることができれば、ECサイトの検索性も高まりますし、今回の記事では触れていませんが、購買データの分析なども容易になります。いわばビジネスの基盤を安定化させることであり、人間で言えば身体の体幹を鍛えることと同義であることを、身を持って体感したプロジェクトでした。

エンジニアが事業を立ち上げるメリット

このような場面に遭遇し、私は「チャンスだ」と思いました。
私は元々、自分で0から事業を立ち上げたいと考えていました。そして、エンジニアだからこそそれができるとも信じていました(※)。
もしエンジニアでなかった場合、事業立ち上げの際、社内の決裁者やお客様への説明は、基本的にはパワーポイント、よくてモックアップを用いて行うことになるでしょう。
しかしながらエンジニアであれば、実際にアプリのプロトタイプを開発し、「動くもの」を見せることができます。説得力に雲泥の差が生じるのは言うまでも無いはずです。

少なくとも目の前のお客様は困っている。それは事実であり、奇跡的に世界で唯一人このお客様のみが課題を抱えている確率はゼロと言ってよいだろう。そこには一定以上の普遍性があるはず。
ならばそこに賭けてみよう、と私は考えました。

幸運にも、社内の若手有望株だった六車さんと意気投合し、プロジェクトを開始することができました。(最初は裏プロジェクトでしたが…。)アポイントメント取り、事業計画作成、顧客へのプレゼンテーションなど、開発以外の全てを六車さんが巻き取ってくれたことで、高速でプロトタイプを開発することができました。
(余談ですが、今のMassteryのデザインは実は3代目です。プロトタイプである初代は、私が Semantic UI のReact Component をいじくり回して開発したなんちゃってUIでした。)

プレゼンテーションとプロトタイプによるデモンストレーションの合せ技が功を奏したのか、何社目かの営業でお客様に強い関心を持って頂き、トライアルという形での導入が決まりました。これがMassteryの第一歩です。

そこから紆余曲折を経て、Masstery部としては10名弱のメンバーを抱え、お客様にも「(最初は不安だったが)今ではMassteryの変換を大いに当てにしている」「20年に一度レベルの盛り上がりで、役員会議でMassteryが承認された(!)」などありがたいお声を、少しずつではありますが頂けるようになっています。
引き続き「煩わしいデータ作成、データ整備」でお困りの皆様のお役に立てるように頑張って参ります。Massteryを今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

執筆後記

※「エンジニアだからこそできる」

その考えは今でも変わっていませんが、一方で、エンジニアリング( = 開発)だけでは事業は成長しないことも日々学ばせて頂いています。良い製品を開発しても、お客様に知って頂かなければ存在しないも同然ですし、導入後もお客様の満足度を下げないためのフォローが必要になります。社内の新規事業であれば、現実問題として各種調整が必要にもなります。実に多くの仕事の上で、ようやく赤ん坊だった新規事業は幼稚園児くらいまで成長することができるのです。むしろ技術のコモディティ化が進み、簡単なアプリどころか、AmazonのようなECサイトやメルカリのようなCtoCの決済アプリでさえノーコードで開発できる時代になった今、新規事業の初期フェーズで一番不要なのはエンジニアかもしれません。そうならないように、エンジニアも研鑽を重ねていく必要があると痛感しています。このあたりはまた別で筆を取らせて頂ければと思います。

私達がご提供している製品「Masstery(マスタリー)」は、多くの人手が必要だったデータ整備を自動化する画期的なデータクレンジングツールです。フォーマットの統一、カテゴリーの自動分類、独自の変換、差分情報の取得等、データ整備に必要なあらゆる機能をご提供しています。
Masstery 製品サイト:https://mstr.forcia.com/ (データクレンジング)
フォルシア株式会社 企業サイト:https://www.forcia.com/ (高速検索)

よろしければ、こちらの記事もどうぞご覧ください。


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