LINE証券撤退について
LINEが証券から撤退するというニュースが少し前にあった。
LINEは証券から撤退するものの、金融資産は野村証券に移管がなされるようなので、すぐに資産が失われたり大損をしたりするようなことはないようだ。ただし、取引にかかるルールが野村証券のそれに変更となるため、LINE証券を使用している場合はよく確認をした方が良い。
私自身もLINE証券で株式投資を始め、今もずっとLINE証券で株式投資をしているので少しビックリした。これを証券会社を見直すいい機会だと捉えて、移管や出金など今後の手はずを考えたい。
LINEは若者層を投資に取り入れるようにしたが「収益をあげられなかった」のが撤退の理由だとしている。誰もが毎日必死にメッセージを送り合うアプリを運営している会社なので知名度が低く集客ができなかったということは考えにくい。また実際に、LINE証券は実際に史上最速での150万口座を達成している。
記事の中で要因として挙げられているのは「若者が十分な資金を持っていない」ということである。やはりこれに尽きるのだろう。証券会社は株式投資にかかる売買手数料で利益を出すが、その手数料は投資する金額に比べるとかなり小さい。
となると、顧客には多くの売買をしてもらわねばならないが、ターゲットとなる若年層は十分な資金を持っておらず、多数の売買を繰り返すのは難しい。株式投資はほとんどの場合、数万円、数十万円が元手として必要になるのでまずはその元手となる余剰資金を持っている若年層でなければいけない。
確かに、LINE証券には「いちかぶ」という株式投資において決められている数量を満たしていなくとも株式の購入ができるサービスがある。それを利用すれば数百円、数千円単位から株式を購入することができる。
だが、そのような少額の投資では利益をあげるのが難しいという現実がある。株式の取引に対して数十円、数百円の手数料がかかればそれを上回る利益を出さねばマイナスになってしまう。少額の元手ではなかなかまとまった利益をあげることができず、むしろマイナスになってしまうのが現実である。
また、いちかぶにおける手数料はスプレッドという形で時間帯によっての変動などがあった。そういった仕組みが理解されにくかったというのも要因としてあるかもしれない。
記事にはないが、そこにさらに、日本人の投資やお金に対するアレルギーや物を買わないとされる若者世代の価値観が加わり、よりいっそう投資や売買に対して慎重になっているというのも大きな要因であろう。株式を買ってもすぐに儲かるわけでも、ましてや確実に儲かるわけでもない。それなら積極的に投資が選ばれないというのも理解ができる。
国はNISA講座やiDeCoを用意し、投資に関係する環境を整えている。だが、それは老後資金を国が約束できず、自己責任で用意してくださいというメッセージでもあるのだ。「老後資金は2000万円必要」と言われるように今後は多くのお金が必要となってくる。それを用意するには、多くの人にとって堅実な投資しかないだろう。
若年層の収入が伸び悩み、物を買わない、子供を持たないなどという現実を目にするが、影響はそれだけではない。本件のように、投資をするほどの余剰資金が無いということや余剰資金を持ち合わせない若年層の影響もあり証券会社が一つ撤退を余儀なくされた。十分な資金がここに流れ込んでいればLINE証券や若年層の投資も盛り上がっていたかもしれない。
我々が失ったのは一社の証券会社だけだろうか。もっと大事なモノを失ってはいないだろうか。低収入や低賃金による影響は見た目以上の負のスパイラルを呼び込んでいるのではないか。