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若者がつまずく社会構造を考える~孤立・孤独に追い込む現代の3本の矢~(2本目)

若者の悩みを誘発し、深刻化させる社会構造
「孤立・孤独に追い込む3本の矢」

今日は2本目
「地域コミュニティ解体」
について話そうと思っていたことを書いていきたいと思います

若者を孤立・孤独に追い込む3本の矢

そもそも、この話について書こうと思った発端についてはこちら☟

矢の1本目の話(社会の流動化)の話はこちら☟

ということで、今日は若者を孤立・孤独に追い込む2本目の矢のはなし

地域コミュニティの範囲

そもそも”地域コミュニティ”って何か
という話なんですが
言葉自体が結構存在感があるので
具体的にはどういうコミュニティが地域コミュニティなのか?
と聞かれると答えに詰まりますよね

総務省によるとこういうことらしいです
(ヒットしたウェブサイトが「地域コミュニティの現状と問題(未定稿)」という名前なんだけど、未定稿をウェブ上に公開していいのか総務省…)

総務省 地域コミュニティの現状と問題(未定稿)から抜粋

この図を見ると、どうやら地域コミュニティというのは
✅地域性あり
✅「地域性あり×特定目的あり」と「地域性あり×特定目的なし」

という条件を満たすような集団ということらしい

ちなみに
「地域性なし×特定目的なし」に分類される活動の中でも
たとえば自治体が運営する/自治体から業務委託されているような活動(〇〇市の委託を受けた団体が運営する外国語サークルとか?)は地域コミュニティになるのか…?

という細かい議論は置いといて、まあとにかく国の定義としてはこうだと
で、そんな地域コミュニティの担う役割はというと、下のような3つの機能があるとのこと☟

(ⅰ)生活に関する相互扶助(冠婚葬祭、福祉、教育、防災等) 個人や家庭が直面するハプニングや課題に地域コミュニティ全体で対応し、困 難を緩和する。
(ⅱ)伝統文化等の維持(工芸、祭、遺跡等) 経済活動のみによっては維持できない特色・文化・景観などを地域コミュニテ ィの活動を通じて維持する。
(ⅲ)地域全体の課題に対する意見調整(まちづくり、治安維持、山林保全、防災等) 皆で協力しないと実施できないような取組や利害調整を図る必要がある課題 の意見調整を地域コミュニティの活動を通じて行う。

総務省 地域コミュニティの現状と問題(未定稿)から抜粋

コミュニティの最小単位としての家族

総務省(未定稿)を眺めていて、あれっ?って思ったんですが
「家族は?」
ってところ

なんとなく家族は”地域コミュニティの最小単位”だと思っていた節が自分にありまして
たぶん本か何かに書いてあった一節が頭のどっかに残ってたからだと思うんですが
とはいえ、上記のコミュニティの役割・機能でみると

(ⅰ)生活の扶助機能⇒ある
(ⅱ)伝統文化の維持機能⇒一族の掟、ならわし的なやつ、あるかなぁ
(ⅲ)意見調整⇒家族会議的な活動やるしな

って感じで、それっぽいものはあるよね
ということで、個人的には
「家族=地域コミュニティの最小単位」
で行きたいと思います

家族の機能を相互扶助、伝統維持、意見調整で語るとなんかギクシャクするのは
それ以外の何かを捨象してるからなんだろうな…

じゃあ学校と会社はどうか
となると、小学校から中学校は地域コミュニティっぽいけど
高校くらいになるとちょっと薄れていく感じするし

会社も中小企業は地域性帯びてる感じするけど
大規模化すると同様に希薄化していく印象

今回は、「まなぶ」「はたらく」という軸で考えているので
いったん地域コミュニティに包含されている部分はあるけど
違う”カタマリ”として位置づけておこうと思います

なので、図示するとこんな感じ☟

ざっくり地域コミュニティのイメージ

式っぽく書くと
地域コミュニティ=家族+(地域性あり×特定目的ありの集団)+(地域性あり×特定目的なしの集団)-学校ー会社
という風に、若者目線で見たときの地域コミュニティを捉えたい
というか、ここでは捉えます、はい

進行する核家族化、からの単独世帯化

地域コミュニティの最小単位の家族
という観点で見たときの特徴は
コミュニティの縮小化が止まらない
ってことだと思う

むかしうっすら社会の教科書とかで「核家族化」という言葉を見たり
たまにニュースなんかでこの言葉を聞くことがある人は多いと思うんですが
定義としては

一組の夫婦のみ
一組の夫婦とその子ども
父親または母親とその子ども(父子世帯や母子世帯)
(子供からみて)両親または父母のどちらか一方と未婚の兄弟姉妹

Wikipedia『核家族』より抜粋

というタイプの家族

なんかこれまで、印象として
「日本で一番多いのは核家族!」
という思い込みがあったんだけど、それは漠然と「一人だけの世帯」を核家族に含めていたからだと思う

でも、定義として「一人だけ世帯」は核家族ではなく「単独世帯」ということらしく
そして単独世帯が今は一番多い家族構成だということ
(単独世帯は家”族”じゃない気もする)

厚生労働省 令和2年版厚生労働白書より抜粋

厚生労働省のデータを見ていると
1990年くらいまで割合としては三世代世帯が家族タイプとして一番多かったのが驚き
というか、日本の家族構成、変わりすぎ・・・

ということは
家族が担ってきた機能・役割が急激なスピードで解体されているわけで
誰かがそれを担う必要があるわけだけど
全然おいついてなくて子ども・若者に関わる社会課題が噴出している構造があることも理解できます

とくに近年にフォーカスすると
単独世帯だけが割合伸ばしていることがわかり
急速に世帯構成が最小単位化していってることがわかります☟

内閣府 男女共同参画白書令和4年版より抜粋

地域との接点、必要?

地域コミュニティの最小単位の家族は縮小していて
じゃあ家族以外のコミュニティはどうか
という話でいうと、こちらもご多分に漏れずいろいろ課題がある様子

都市部、中間地域、過疎地それぞれの地域タイプで
地縁や共通の価値観の希薄化(都市部では”皆無”)
コミュニティの維持が困難
といった問題に直面しているのが実情

総務省 地域コミュニティの現状と問題(未定稿)から抜粋

地域に対する若者のスタンスでいうと
こんな感じ☟

日本財団 18歳意識調査より抜粋
日本財団 18歳意識調査より抜粋

社会の中で、自分が一個人として参画しているという意識は他の国と比べてなかなか持ちにくい状況なのかなと思います

都市部、中間地域ではコミュニティの存在感が希薄になってきているので
その役割に気づかなかったり、むしろわずらわしさを感じて距離をとっているという若者も多いと思う

若者と地域コミュニティが切り離されると起こること

地域コミュニティから若者が離れていくと
コミュニティの支え手がいなくなるわけで
早晩そのコミュニティが担ってきた以下のような役割も失われていく

1.個人や家庭の単位で解決できないような問題(家庭内暴力、虐待、非行、ひきこもり、 病気、障害、孤立、失業、貧困など)の深刻化を緩和する機能や、災害等の危機的状況 に対応する機能が失われる
2.地域アイデンティティの象徴であった地域の特色・文化・観光資源が失われる
3.水資源、自然環境、食料生産能力の維持機能が弱まり、農村部の自然環境の破壊が進 み、結果として都市部の環境基盤の脆弱化にもつながる
4.犯罪の発生などの治安悪化

総務省 地域コミュニティの現状と問題(未定稿)から抜粋

ただこれも、若者の立場で眺めてみると
彼らの生活にとってなかなか感じられにくいリスクだったり、現代のサービス社会の中で代替可能なものだったりするので
これらがリスクとしてあるからといって若者が再び地域コミュニティに再接続していくことにはならないだろう

一方で
あまり触れられないけれど
地域コミュニティとの分断によって若者が直面することとして
個人的には
「相談できる人が減る」
「大人との接点が減る」
というのがあって、これは結構大きな影響があると思う

まず、相談できる人が減るのはすでに如実にデータでも示されていて
既にこれまでも紹介してきた子供・若者白書の中で
家庭・学校・地域・職場・ネットに何でも相談できる人がいるかっていう質問に対する回答が掲載されているんだけど、それがこんな感じ☟

内閣府 令和4年度子供・若者白書より抜粋

目を引くのは一番下の
「どこにも相談できる人がいない」と回答している子ども・若者が20%以上いる」ってことなんですが
もう一つ、「地域」に相談できる人がいると答えている人は20%未満というところも気になる
さらには、家族も縮小してるし、学校に行かない子ども・若者が増えている現状も踏まえると
今後さらに「どこにも相談できる人がいない」と回答する人は増えていくと想像するのは難しい事じゃない気がする

家庭や学校で拾いきれなかった若者の悩みをカバーしていくのが
地域コミュニティ、社会の役割だと思うんだけど現状は厳しいよね、っていうのが一つ目の話

もう一つの大人との接点が減るって話
これは地域社会との接点が無くなると
若者が社会に出ていく時に参考にする(反面教師も含め)大人のセットが少なくなることのネガティブな影響があるだろうなってこと

考えてみると
子ども、若者にとっての「大人」って
家族の中では親とその兄弟、祖父母以上
学校では先生
会社では同僚、上司
は接点が多いトップ3に入る

この大人たちって
「はたらく」「まなぶ」という観点でいうと
そーとー少数かつ偏ったサンプル
だと思うんですよね

「まなぶ」という観点でいえば
「学んでる親」「自分も学んでる先生」
の姿を見ることってかなり限られた環境でしかないし

始めて就活する若者にとってみれば
働く大人のサンプルが親と先生しかいないって
キャリア選択上ミスマッチしか起こる気しかしない

本当は親と先生以外の大人はたくさんいて
その人達が自分の知らないいろんな仕事してる
んだけど
そういうのを知らないで「はたらく」フェーズに入っていくことは
若者にとっても社会にとっても機会損失が大きいのではないか

寄り道も大事だというのはわかるけど(私の人生はそんな感じだし)
でも
狭い視野で就職して失敗して心折れて次行くスタイルより
就職する前に物見遊山的にいろんな大人や仕事があることを知れるような
そんな寄り道の方が良いよね

なんとなく東海道中膝栗毛


大人のサンプルを増やす

地域コミュニティがこんな状態なので
一朝一夕に変わっていくのは難しいかもしれない

でも、自分の周りにいる若者にとって
何らかの形で大人のサンプルになることはできる気もする

集めるほど違いと共通点が見えてくる

別に立派な大人として振舞えってわけじゃなく
居酒屋で楽しそうにビール呷ってる姿でもいいし
ちょっと仕事の不満を吐いてる姿でもいい(飲み過ぎて嘔吐してる姿は勘弁)

「あ、大人って意外にテキトーなんだな」
とか
「大人って駄目な部分もあるよな」
と思われるような大人の存在は
若者にとって結構大事だと思うんですよね

それは、彼らが将来大人になった時に、いやいや、大人になる前であっても「人の前で弱みを見せてもいいんだ」
ってことを理解してくれるきっかけになるかもしれないから

ほら、親とか先生とか上司ってそういうの見せにくいとこあるじゃないすか
そういう役割を地域の他の大人が担ってあげるのって
実はかなり大事なんじゃないかと思ってる

あとは、いきなり「相談きくよ(キリっ)!」って
距離詰めていっても、等距離離れられるのがオチだけど
ある程度関係ができたら話を聴いてあげるのも大事だと思う

少なくとも今のまんまじゃ
これから社会に出ていく若者に対して
「働き方や大人のサンプルはあんまり提供できないし、相談も聞いてあげないけど頑張れ!」
みたいな社会になってて相当酷な仕様、大きな問題だと思うので、このあたりどうするか、ということについても考えていきたい

と思うんですが
やっぱり長くなったので、3本目の矢の話は次回とさせてくださいませ

最後までお読みいただいてありがとうございました
最後に「スキ」マークポチっとしていただけると、次回エントリーを打ち込む手先の動きが如実に早まるのでよろしくお願いします(笑)

引き続き一緒に子ども・若者支援について一緒に考えていければと思います!

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