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若者がつまずく社会構造を考える~孤立・孤独に追い込む現代の3本の矢~

先日、NPO法人み・らいず2のフォーラムで
「若者を取り巻く現状と問題提起」
というタイトルで基調講演の機会をいただいたのですが
その時のプレゼン内容をもう少し詳しく聞きたい~というお声をいただいたので、伝えきれなかった部分も補いながら書いておこうと思います
(なんせ講演のみだと20分しかなかったからね・・・)

ちなみに、フォーラムの様子は期間限定でオンデマンド配信されてるらしいので、ご興味ある方はこちらから☟

個人的に第2部の高校と大学の教育の話が学びになったので、その部分だけ切り取った備忘録もよければ差し上げまする


深まる子ども・若者へのしわ寄せ

講演当日は、教育関係者や福祉関係者、子ども・若者に関わる支援者の方々が主な参加者だったので割愛しましたが
そもそも子ども・若者への支援が必要と言われるからには
その背景に子ども・若者の困難あるいは現状ではない状態に移りたいというニーズがあるわけです

そのあたりが
子ども家庭庁(旧内閣府)の「子供・若者白書」
にまとめられているので興味がある方はひも解いてみてもよいかもしれません☟

この白書の中でも特にオススメなのが、子ども若者に関わる各種データが見やすい形でまとまっているダッシュボード

例えば教育周りのデータで言うと

令和5年度子供・若者白書より抜粋

主要な指標を、前回調査時のデータとの比較で列挙して示してくれているので、テーマごとの概況を感覚的に理解しやすいのが気に入っています

教育関連でいうと、
✅児童生徒の自殺者数、いじめの重大事態、小中学校における不登校児童生徒数、学校内外の暴力行為(小学校)などが軒並み過去最多を記録
✅高校における不登校生徒数も過去最多ではないが横ばいに近い微増
✅中高の暴力件数、高校中退などは減少
あたりが傾向として抽出できる点です

ご存じ、日本は少子化が進んでいるので子ども若者人口は減少しています
にもかかわらず件数が増加しているということは
それぞれの視点で見たときの子ども若者にとっての環境悪化が深刻化していると考えることができそうです
※ただし、いじめの件数などは、これまで社会が看過されてきたのが、様々な取り組みの中で”いじめの検出能力”が上がり数値として現れてきた側面もあるので解釈には注意が必要

教育周りの次に注目したいのは「はたらく」関連の指標
同じく子供若者白書に掲載されているデータはこちら☟

令和5年度子供・若者白書より抜粋
楕円で囲まれた数値は前年度比

グラフの伸びが大きいのは「テレワークの実施率」
だけどこれはコロナの影響が大きいと考えるべきで、若者世代に限った話ではない

なので、経時的な変化は少ないけれど、ポイントとしては
✅20~24歳の完全失業率(求職活動している無職の人の割合)は約5%で、20人に1人が働きたいのに働けてない
4~5人に1人の若者が非正規雇用状態
✅若年無業者(仕事もしていないし、(今は)通学も家事もしていない若者)の割合は15~39歳で2.3%
あたり

なお、若年無業者に関しては割合的には横ばいだけど、実情としては悪化しているのではないか、という考察はこちらで詳しく☟
(こういう調査もちゃんとやるNPOっていいよね)

データ上に大きな変化は見られない
ただ、若者支援団体の方と話していると
若者の「はたらく」環境はコロナ禍で急激に悪化した
というのはほぼ確なので、この白書の指標のセットではそれがうまく表現されていないのではないかという気もする

コロナ禍の影響もようやく薄れてきたとはいえ
若者の就労環境がコロナ禍以前まで本回復していると言い切っていいかは疑問

今回は、基調講演のテーマが「はたらく」なので
若者の就労関連と「はたらく」フェーズの一つ前にある「学ぶ(学校)」フェーズのデータだけピックアップしていますが、白書には他のデータもあるので興味がある人はぜひどうぞ(国の白書だからもちろん無料)

若者を追い込む「社会の三本の矢」

ということで
子ども若者白書の「学ぶ」「はたらく」のデータでみると
「学ぶ」関連の指標は結構厳しい
「はたらく」関連の指標はデータ上は悪化してないように見えるけど、そもそもずっと前から厳しいちゃ厳しい(非正規雇用割合の高さ等)し、コロナ禍の影響がデータに反映されていないかもしれない

そんな状況がなぜ生まれてしまうのかを考えたときに
個々の子ども若者にその原因を収斂させてしまうのは無理がある
そこにはやはり社会構造に原因の一端(主観的には1.85端くらい。両端とまでは言わないけど)があると思う

メッシュを細かくすれば列挙に暇がないけれど
とくに義務教育が終了したフェーズの若者にとって向かい風になる社会構造トップ3は
✅社会の流動化
✅地域コミュニティの解体
✅自己責任論の風当たり
で、これが本当に若者を孤独に追いやっていくので、僕はこれを「若者を追い込む社会の三本の矢」と呼んでいます

若者を追い込む社会の三本の矢

毛利元就の三本の矢の逸話は兄弟の絆を太くする逸話だけど
若者を追い込む三本の矢は若者を社会から分断し、孤立させる方向に働きます

この三本の矢はほぼ全ての若者に放たれます
この矢嵐を回避できる若者はごくわずかであり
多くの若者は1本以上の矢が身体にヒット
子ども期から困難を抱えていた若者だけでなく、それまで困難を感じずに生活をしていた若者にも少なからぬ影響を及ぼします

困難に直面した若者に対しても、ひきつづき社会の三本の矢が降り注いでいく一方
支援は脆弱であるため、社会がそういった若者とつながる事が出来ず、若者の困難は深刻化していきます

情け容赦なく降り注ぐ矢の雨(イメージ)


困難に直面した若者の孤立が深刻化していった先にある「ひきこもり」

孤独・孤立が深刻化していったときの一つの状態が「ひきこもり」という状態でもあります
内閣府の「こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)」によれば
「普段は家にいるが、自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」という生活スタイルの人も含めたひきこもり状態にある人は、15~39歳の2.05%いると推計されています

内閣府こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)より抜粋

なお、この2.05%という値
10年ほど前に実施された同様の調査の際には1.57%だったので、0.5ポイント増加しています。

ひきこもり状態にあるひとと社会が改めてつながり、支えていくことは難しいことも多く、支援の現場では「早期発見・早期支援」の重要さを痛感しているわけですが

じゃあ「早期」とはいつなのか、と言われると
高校・大学から就職する時期にかけて、何かでつまずいた若者に
繋がる事ができていれば、話を聴けていれば、機会を提供できていれば、ということがとても多く聞かれます

義務教育が終わった後に若者が直面する社会の在り様を理解することが重要

社会の側から若者に関わっていく、支えていくためには
彼らが困難に直面するリスクが高まるライフステージをしっかり理解しておくことが重要です

世代が異なる支援者が、自分の”若かりし頃”を前提に言葉をかけても若者には伝わりません

時代をさかのぼって同じ時代に若者として生きることは不可能ですが
自身が若者であったときに自分を取り巻いていた環境との違いを認識していれば、関わり方や支援のあるべき姿いついての考え方も変わってくるはずです

ということで、一気に「社会の三本の矢」のディテールに踏み込んでいこうと思ったのですが、それは次のエントリに書いていきたいと思います

最後までお読みいただいてありがとうございました
引き続き一緒に子ども・若者支援について一緒に考えていければ幸いです

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