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若者がつまずく社会構造を考える~孤立・孤独に追い込む現代の3本の矢~(1本目)

ひとつ前のエントリは
若者支援の必要性の前段として
若者がどんな悩みに直面しているのか
という話と
若者の悩みを誘発し、深刻化させる社会構造
「孤立・孤独に追い込む3本の矢」
がある、という話について書きました

この「若者を孤立・孤独に追い込む3本の矢」というのは具体的に言うと
✅社会の流動化
✅地域コミュニティの解体
✅自己責任論の風当たり

のことで、特に義務教育終了後の若者にとって大きなダメージを与えかねない事象です

このエントリでは(と言いつつ、ボリュームによっては、”今後のエントリでは”になる気もしますが)この3本の矢について、もう少し詳しく書き下していきたいと思います

流動的な社会の中で

3本の矢の最初の1本目は「社会の流動化」

”日本社会では、長らく「終身雇用」という概念が根強く存在していましたが、近年、雇用の流動化が進んでいます。”
のような教科書的な説明を見ること結構あると思うのですが
これは「はたらく」という局面で起こっている流動化を指しています

雇用の流動化の具体的な表れとして、よく引き合いに出されるのが
「非正規雇用」
こちらは1990年代後半あたりから増加傾向にあり、今は働いている人の約4割は非正規雇用で働いています
女性についていえば、2019年時点では56%が非正規雇用ということで、男性の2倍以上の割合となっています

厚生労働省 令和2年版厚生労働白書より抜粋

一方、正規雇用に目を移しても、「働き方の多様性」という形で流動性が高まっていると言えます
たとえば、新卒採用から中途・経験者採用への移行や、副業・複業という考え方の浸透、時間や場所のフレキシビリティ向上など
これまでよりも様々な働き方が許容されるようになってきました
これも流動化の一つの表れ

経済産業省 「変革の時代における人材競争力強化のための9つの提言~日本企業の経営競争力強化に向けて~」より抜粋

このような雇用の流動化
なぜ起こっているのか

これも教科書的に言えば
グローバル化や技術の進歩、経済変動など
そもそも社会がどんどん流動化しているので
企業や組織も対応するために自分の流動性を高めることで適応しているから
ということになります

長い目で見れば
ざっくり100年単位で産業革命という形で起こってきた変化が
なんと直近は50年で来てしまい
しかも
生成型AIの進化を見るにつけ
どうもこの流動化のペース、加速しそうじゃね?!
という雰囲気です

経済産業省 「変革の時代における人材競争力強化のための9つの提言~日本企業の経営競争力強化に向けて~」より抜粋


流動性の功罪

このように社会変革に伴い
働き方もどんどん流動化しているわけですが
当然ながらメリットもデメリットもあります

メリットとしては
✅個人のキャリアの自由度が増す
✅企業はニーズに応じ労働力を調整でき競争力を高められる
✅異なる知識・スキルが混ざってイノベーション促進

などが挙げられることが多いかな

ひるがえってデメリットとしては
☑雇用の不安定性が増加
☑個人と企業との関係性が希薄化
☑個人が成長しにくくなりスキルギャップが生じる

などは、わりかしよく目にする印象

えてしてニュースでは、社会/雇用の流動化の良い側面がクローズアップされがちですが
100%メリットしかないことなんてほとんど無いし
これから社会参画していく若者にとっては、メリットよりもデメリットの形で影響が出てくることの方が多い

社会の流動性と若者

というか
若者立場で見ると、上記のメリットは全然メリットじゃない
と思うんですよね・・・

キャリアの自由度は特定技能に習熟したベテランにとってプラス、って話なだけで
経験・スキルの蓄積もない若者にとってキャリアの自由度提示されても困惑するだろう

どうしろと?

企業が労働力調整できる下りは
そもそも雇用される側にとってのメリットではない

イノベーションの話もやっぱりノウハウ・スキル蓄積ありきの話で
蓄積が少ない若者にはハードルが高い話であることは明白

このように、雇用の流動化という事象を
雇用する側/される側、雇用される側でも若者に絞ってみると
ポジティブよりはむしろネガティブな影響の方が多く表れる
ことは容易に想像できるわけです

流動化する社会と希望

特に、個人的に流動化した社会が若者にとって厳しいと思うのは
流動的な社会だと若者は将来を描きづらい
という点です

正規雇用ルートで就労した人は
キャリアが終身雇用の形で保障されているわけではないですし
非正規雇用で就労した人はなおさら将来の視認性は低いでしょう

日本財団が行った調査の中に
日本・米国・英国・中国・韓国・インドの6カ国の18歳前後の若者を対象にした調査があるのですが

その中で
実現性を考えずになりたい職業を選ぶとしたら?
という質問への回答結果がこちら☟

日本財団 18歳意識調査より抜粋

日本の職業ランキングを上から見ていくと
 1位:芸能・音楽・映画
 2位:デザイン・美術・写真
 3位:医師・看護師
 4位:ソフトウェア技術・開発
 5位:公務員

ということで
「ふむふむ。まあ、そんなところかな・・・」
と流して見ていった先にある

「特にない   16.1%」

じつに芸能・音楽・映画(22.8%)に次ぐ多さで
他国と比べてかなり顕著に高い値になっている事がわかります

また、仕事も含め、より中長期的な将来の展望に関する質問についても
日本の若者の「将来描けていない感」は群を抜いています

日本財団 18歳意識調査より抜粋

インドのポジティブさがやたら目に付くのは脇に置いておいて
ほぼ全ての項目で他国にダブルスコアの差をつけて、ダントツの第6位となっているのがわかります

「あなたのやりたい事はなんですか?」って急に言うじゃん

この調査は18歳前後が回答者ですから
日本で言うと高校生から大学1年生くらい

まだ就職活動も手触り感をもって考えられているわけではない人が多分に含まれている年代だと思います
自分を振り返ってみても
18歳前後で「はたらく」ことをリアルに考えられていたかと言えば、たぶん全然でしたね

そんな若者たちにたいして
社会の側がいくら
「キャリアの選択は自由だよ!」
といったところで
多くの若者は
「そんなこと言われてもなぁ・・・」
と途方に暮れるんじゃないかと思うわけです

選択肢があることは一見よいことのようだけど…

なぜなら
自分がやりたいことがわかっていないと
そもそもたくさんある選択肢の中から一つを選ぶのが難しいから
です

雇用の流動化がプラスに働くのは
スキルや経験が蓄積されたベテランの人達は
「自分の得意なこと/すきなこと/やりたいこと」がわかっているから
選択肢がたくさんあっても、それらの選択肢に優劣をつけてより良いものを選べるから
なんですよね

しかも、この最初の職業選択を求められる時期は
ちょうど小学校・中学校という義務教育を終えた時期

「まずはこれやって、次はこれやって、その次はこれを勉強しましょう!」
と先生に言われて、他の人と同じことに取り組んできた若者に
中学校終わったあたりから手のひら返しで
「将来の事を考えて高校も学部も選ぶことが大事、他の人は関係ない!あなたがやりたいことはナニ!?」
という逆の価値観を持つことを求めてくる

素晴らしい逆サイドパスだけど、出すタイミング間違ってないすか

そんな状態の若者たちにたいして
流動性の高い社会が両手を広げて迎え入れようとおもったところで、やっぱり若者の表情にあらわれるのは「困惑」だと思うし
描き切れていない将来像はさらに霞がかって見えなくなるだろうと思うのです

若者にとっての「流動性の罠」

ここまで見てきたように
社会が流動化し、働き方が流動化しているのは実際に世の中で起こっているのは事実

ただ、それが若者にとっては必ずしも良い方向に働くわけではなく
むしろ若者を困惑させ、将来展望を見えにくくしてしまうというネガティブな方向に働く可能性が高いと思います

社会が流動化していくことは、経験を積んだ人にとってはよいかもしれない
社会はその側面を切り取って「良いこと」として扱うことが多いけれど
若者にとってはそうではない

柔軟性の高い働き方にあこがれてフリーターになって、賃金水準が上がらず生活が苦しい
むりくり「自分のやりたいこと」をひねくり出して就活乗り切っても、その後つまずいて「自分が本当にやりたい事って何なんだ・・・」と悩む

そういうケースを聞くにつけ
若者にとっては、社会の流動化は一種の罠ですらあると思います

流動性の罠」といえば経済学の言葉。言葉としては知っているけど、ちゃんとした意味まですぐに言えるかといえば怪しいので、ChatGPT先生に聞いてみますとこういうこと☟

「流動性の罠」とは、経済学の用語で、低いまたはゼロ近くの利息率でも、消費や投資を刺激することが難しい状況を指します。この状況では、人々や企業がお金を使うよりも、将来の不確実性から現金を保持することを選好するため、経済活動が停滞します。通常、中央銀行は利息率を下げることで経済を刺激しますが、利息率がすでに非常に低い場合、この政策手段は効果を失い、「流動性の罠」に陥ることになります。この状況は、デフレーションのリスクを高め、経済回復を困難にします。

ChatGPTの回答

脇にそれましたが、これとは違う意味で、社会の流動性が「誰にとって」好ましいことなのかはちゃんと考える必要があるよなと思います

少なくとも若者にとってはそうじゃない

とはいえ、流動化が進んでいく未来は否定することが難しい
今から終身雇用マストな、副業・複業もNG、リモートワークなくして毎日通勤!
って言ってももう無理だと思う

だとすれば
ネガティブな力学を是正する仕組みを世の中に差し込む事が重要だよね
という考え方に頭を切り替えたほうが良いと思う

そのあたりの話は、3本の矢の話が終わったあたりでできれば
と思うんですが
やっぱり長くなったので、2本目、3本目の矢の話は次回とさせてくださいませ

最後までお読みいただいてありがとうございました
最後に「スキ」マークポチっとしていただけると、次回エントリーを打ち込む手先の動きが如実に早まるのでよろしくお願いします(笑)

引き続き一緒に子ども・若者支援について一緒に考えていければ!

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