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この記事を書いたのが約1年前。その後、自社内で「組織開発」の取り組みを進めてきて、少しずつですが、その考え方や手法について理解も深まってきたような気がしています。なので、今回は「組織開発」で活用できる理論や手法等を少しですがご紹介します。すべてググればたくさん出てきますので、詳しくは引用したURL等も参考にして頂ければと思います。

「診断型」と「対話型」

日本での「組織開発」研究の第一人者である南山大学の中村和彦教授の著書「入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる 」によると、「組織開発」には大きく分けて「診断型」と「対話型」というアプローチ方法があります。

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前者は、インタビューやアセスメント等、様々なデータを収集して、主として組織の「外」の人間が、そのデータを「診断」して現状を把握し、アクションを決めていくことに重きを置く手法です。
一方、後者は「診断」はせずに、その組織のメンバー間の対話を通じて、現状を把握したり、アクションを決めていく手法で、「診断型」が伝統的な手法のようで、「対話型」は1990年代頃から出てきた比較的新しい手法です。
個人的には分類することにさほど意味があるとは思っておらず、また、どちらかが優れているといったことを示すものでもないと思っています。

一見すると、前者のほうが、組織開発を進めようとしている方にとっては、楽な方法のように見えて、魅力的に映るかもしれませんが、前者はどうしても外部の人間が主導する活動になるため「自分事」になりづらく、「やらされ感」が漂う活動になりがちです。皆さんも「理屈はわかるけど、イマイチ腹落ちしないなー」という経験をされた方も多いと思いますが、まさにあの感覚になりがちなのが、前者かなと思っています。
やはり、こうした何らかの「変化」を起こす取り組みは、企業風土やその時の環境にも大きく依存しているのではないかと思います。

ちなみに、両者とも、どちらかだけをやるということではなく、診断型でも対話はしますし、対話型でも診断まではいかないにせよ、対話の「ネタ」になるようなデータは収集していきますが、大きなポイントは、対話型では、収集したデータの「解釈」を大事にする、ということです。
また、実際に「組織開発」を進めていく場合、それにかかわっている人たちがワクワクできるか、そこまではいかなくても、少なくともシンプルに「楽しんで」取り組めるか、ということは人事としては最も重視したいと考えています。

ここまでが「組織開発」全体としての進め方ですが、もう少しリアルにイメージして頂くために、組織開発を進める上でのいろいろな考え方や手法についてもご紹介します。組織開発に限らず、活用できるシーンもあるかとも思います。

①組織の成功循環モデル

まず、ご紹介するのは、既にかなり有名になっていると思われる「組織の成功循環モデル」です。
MITのダニエル・キム元教授が提唱している理論で、組織が成果を上げ続け、成功に向かう過程やしくみを明らかにしたものです。成功や成果といった組織としての"結果の質"を高めるためには、一見遠回りに思えても、組織に所属するメンバー相互の"関係の質"をまず高めるべきだ、という考え方(下の図の「グッドサイクル」)です。
わかってはいるものの、なかなか実行できない難しさはありますが、今社内で進めている「組織開発」は、まさにこれを起点にチャレンジしています。

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出所:セールスフォース・ドットコムのサイトより
https://hodai.globis.co.jp/courses/9d179953

➁ポジティブアプローチ

「ポジティブアプローチ」とは、問題解決手法の一つで、組織や人の強みや価値に焦点を当てて、その強みの連携を生み出すことで、より高い成果を生み出したり、メンバーや組織のありたい姿を描くことから目的・目標・アクションプランを導き出すアプローチのことです。

我々は通常、問題を解決しようとする際には、AS-IS、TO-BEを確認し、そのギャップを認識して、課題化していく「ギャップアプローチ」と呼ばれている問題解決手法を用いることが一般的だと思いますが、組織開発のように、人の内面にアプローチしていくような「感情」を扱う活動の場合は、ポジティブアプローチの方がなんとなく心地よく、また効果的な活動になると考えられています。やはり、できてないことを指摘されたり、否定されるよりは、強みや特長にフォーカスして話をするほうが楽しいですよね。

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出所:ヒューマンバリュー社のサイトより

➂ジョハリの窓

これはご存じの方が多いと思いますが、自己分析に使用する心理学モデルの一つで、「自分自身が見た自己」と「他者から見た自己」の情報を分析することで下図の4象限に区分して自己を理解するというものです。組織開発では、「風通しのいい職場」というのは、下図でいうところの「開放」の領域が広いことなので、組織開発はこの「開放」領域を広げていく活動でもあります。

ジョハリの窓

出所:グロービスのサイトより
https://hodai.globis.co.jp/courses/9d179953

④タックマンモデル

これは手法というより、組織開発のような変革活動をしていく時の「あるある」のようなものです。(心理学者のタックマンが唱えたチームビルディング(組織進化)モデルです)

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出所:プロジェクトファシリテーターじゅんさんのブログサイトより
https://blog.office-root.com/facilitation/tackman-model/

このモデルのポイントは、いいチームを作り上げていく過程では「混乱期」が必ずある、そしてそれが実はとても大事、ということです。この混乱期に遠慮してしまったり、摩擦を避けて自分の言いたいことを我慢したりするのではなく、自分の意見はしっかり伝えつつも、お互いの違いは認識して議論、対話をすることがキモで、そうした「混乱」を乗り越えた先には、単なる仲良しチームではない本当の意味での「心理的安全性」のあるチームが築ける、という考え方です。
要は、チームビルディングはそんな簡単に進まないよ、途中で停滞したり、モヤモヤするフェーズがあるよ、ということです。
でもそれを乗り越えると、チームがいい感じになっていくよ、ということを示してくれています。「混乱期」で心が折れそうになっても、このモデルを認識していれば、少しは?気持ちが楽になるはずです。(と信じたい)

以上、組織開発に関連する手法のご紹介でした。

なお、私の知人のHRの専門家の方からは、「組織開発」を正しく理解するには、まずはこれを読みなさい、とお勧めされましたので、あわせてご紹介しておきます。

今、これを書いている時点では、かなりの企業で在宅勤務がベースになっていて、ここでご紹介したようなFace to Faceを前提にした複数メンバーでの「対話」は、当面難しい状況にあると思います。
おそらく、対話が気軽にできるような環境にすぐに戻ることは難しい状況だとも思います。でも、長期的に考えてみると、今回のような有事に限らず、平時であってもメンバーの働き方が益々多様化していくことを前提としたこれまでよりも進化した「組織開発」を探求するいいタイミングだとも思っています。

あー、早く外に出て、思いっきりサッカー楽しみたい・・・

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